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言論統制 増補版-情報官・鈴木庫三と教育の国防国家 (中公新書 2806)
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- 本の長さ592ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2024/5/22
- 寸法1.5 x 10.9 x 17.3 cm
- ISBN-104121028066
- ISBN-13978-4121028068
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商品の説明
著者について
1960年、広島県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学。東京大学新聞研究所助手、同志社大学文学部助教授、国際日本文化研究センター助教授、京都大学大学院教育学研究科教授などを経て、現在、上智大学文学部新聞学科教授、京都大学名誉教授。専攻はメディア文化学。2020年にメディア史研究者として紫綬褒章を受章。 著書に『大衆宣伝の神話』(ちくま学芸文庫)、『現代メディア史 新版』(岩波テキストブックス)、『『キング』の時代』、(岩波現代文庫、日本出版学会賞・サントリー学芸賞受賞)、『言論統制』(中公新書、吉田茂賞受賞)、『八月十五日の神話』(ちくま学芸文庫)、『テレビ的教養』(岩波現代文庫)、『輿論と世論』(新潮選書)、『ファシスト的公共性』(岩波書店、毎日出版文化賞受賞)、『負け組のメディア史』(岩波現代文庫)、『池崎忠孝の明暗』(創元社) など多数
登録情報
- 出版社 : 中央公論新社
- 発売日 : 2024/5/22
- 言語 : 日本語
- 本の長さ : 592ページ
- ISBN-10 : 4121028066
- ISBN-13 : 978-4121028068
- 商品の重量 : 1 g
- 寸法 : 1.5 x 10.9 x 17.3 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: 本 - 165,394位 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について

1960年、広島市生まれ。1984年 、京都大学文学部史学科卒業。1986年、同大学院修士課程修了。ミュンヘン大学近代史研究所留学後、1989年京都大学大学院博士課程単位取得退学。東京大学新聞研究所助手、同志社大学文学部助教授、国際日本文化研究センター助教授などを経て、現在は京都大学大学院教育学研究科教授。
『「キング」の時代―国民大衆雑誌の公共性』(岩波書店2002年)で第24回日本出版学会学会賞、第25回サントリー学芸賞を、『言論統制―情報官・鈴木庫三と教育の国防国家』(中公新書2004年)で第34回吉田茂賞を、『ファシスト的公共性―総力戦体制のメディア学』(岩波書店2018年)で第72回毎日出版文化賞を受賞。

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鈴木庫三に見る国内思想戦と国防国家論
2024年5月28日に日本でレビュー済み戦前日本の「失敗」が何だったのかという問題については、敗戦直後から現在に至るまで延々と語られてきた。その中で、失敗の正しい姿(というのも妙な言い方だが)は何だったのか、歴史研究者に限らず多くの人々によって常に問い直されてきた。少なくとも今日の研究において、「ファナティックな軍閥が穏健な政治家と無辜の民衆を戦争に引きずり込んだ」というような、ある種牧歌的な歴史像ーそれは当時の駐日大使ジョセフ・グルーの見解に従えば「極端派」と「穏健派」の対立において前者が勝ちを占めた、という形になるーは完全に過去のものになったと言えるだろう。
前置きが長くなったが、個人的には本書も上述のような「失敗の見直し」というパラダイムの中に位置づけられるものとして興味深く読んだ。「あとがき」まで合わせて約550頁という、新書としては規格外に分厚い本だが、良い意味で分かりやすく書かれているので読み進むのは難しくない、と思う。
本書の「主人公」である鈴木庫三(すずき・くらぞう)は、戦中の「言論弾圧」のいわば親玉的存在としてすこぶる「悪名高い」人物であるという、のだが、恥ずかしながら自分はまったく知らなかった。著者も述べているが、陸大出身でなく(いわゆる「無天組」)、陸軍自動車学校教官から陸軍省新聞班(のち情報部に改組)を経て輜重兵連隊長の大佐として終戦を迎えるという経歴は、昭和陸軍を扱う書籍に登場するには非常に地味である。かような経歴の持ち主である鈴木が、どのようにして「言論弾圧」の主犯に仕立て上げられることとなったのであろうか。
著者は鈴木庫三が残した日記等の記録を主要なソースとして、情報官・鈴木少佐(のち中佐)が誕生するまでの軌跡を丹念に追っている。経済的理由から陸軍幼年学校に入れなかった鈴木は、下士から苦労して陸軍士官学校に入学を果たすも、年齢と配属先(輜重兵)の制約から陸大を諦めざるを得なかった。しかし驚嘆すべき克巳精励によって砲工学校と並行して日大にも通って主席で卒業し、東京帝大文学部への派遣を勝ち取った。著者によれば鈴木は「攻撃し、支配する軍人」ではなく「学習し、計画する軍人」であり「知識人と呼ぶべき軍人」であるという。貧農から将校となり、苦学の末に帝大で倫理学と教育学を修めた鈴木の中には、陸大出身者(天保銭組)への強い反感と貧しい農民への同情があり、それは軍隊教育改革論から始まり、徹底した反資本主義・反自由主義・反個人主義に裏打ちされた全体主義的な国防国家論となっていく。
こうした鈴木がいわば表舞台に登場するのは、1938(昭和13)年、陸軍省新聞班員・大本営報道部付(雑誌担当)となってからである。40年には情報局第二部第二課所属の情報官となり、言論統制への関与が本格的となる。以降、1942(昭和17)年4月に転出するまで、その活動は膨大な著述(雑誌記事や論文)、座談会や講演を含み、著者が言うように国防国家論のイデオローグと言うにふさわしい。
この期間の活動が、戦後に「言論弾圧」の悪しき代表選手としての鈴木庫三の「伝説」を形作るもととなるが、本書によるとその実態は「紙の戦争」と「趣味の戦争」、つまり用紙配分をめぐる各出版社の争奪戦(ある意味足の引っ張り合い)であると同時に、農村的なハビトゥスと都会的(鈴木にとっては個人主義的・自由主義的)なそれの衝突であった。いっぽうで、当事者たる鈴木にとってはその教育学にもとづいた国内思想戦としての意味を持つものであった。それは戦後に「被害者」たちが訴えたような、粗暴で無教養な軍人が反戦・自由を求める出版人たちを威圧する、といったものとは少なくともかなり異なるものだったことになる。戦後に「言論弾圧」を告発することができた人々は、著者の検証に従えばむしろ言論統制の中での受益者といったほうがふさわしいことになる。
いっぽうで、本書によって克明に示された鈴木の思想は、当時の日本を覆った「革新」への志向について考えるうえでたいへん興味深い。教育の機会均等を主張する一方で、富の再分配により日本人の生活水準を計画的に抑制し、国内にとどまらず「日満支ブロックの平準化」を目指す鈴木の言説は、著者が「これほど「近衛上奏文」の軍部赤色革命論を具現した軍人の思想もめずらしい」と述べるとおりである。「国家総力戦の戦士に告ぐ」など鈴木の主導によるパンフレットの表紙イラストや、座談会における発言からうかがえる彼の文化・芸術論は、「国体」あるいは「皇国」といった観念を除けばソ連の「社会主義リアリズム」とほどんど同じ、というかそのものと言ってもよい。鈴木は戦後「小ヒムラー」なる別称が奉られたそうだが、そのようなレッテル貼りが無意味かつ不適当であることを承知のうえで、私ならむしろ「小ジダーノフ」と呼ぶだろう。
念のため言っておくが、ここで私は鈴木庫三が共産主義者だったなどと言いたいのではない。また、その国防国家論が仮に鈴木の理想どおりに実現していたら、おそらくそれはソヴィエト的なディストピアに近いものになっただろうが、今日的観点から見てそれが「正しい」ものだったかどうか判定することにも、大した意味はないだろう(もっとも、鈴木が求めた教育の機会均等は戦争末期から戦後にかけてある程度実現した)。重要なのは、鈴木の思想あるいは言説が、当時のさまざまな国家革新の潮流の中で相応の影響力を持ち、少なからぬ人々の支持を受け、あるいは受け皿となったことである(彼の周辺には転向左翼やプロレタリア文学者も少なくなかったという)。
著者はメディア史の研究において顕著な業績をあげているようだが、本書において、メディア論の観点から現在もなおアクチュアルで重要な視点を数多く提示している。今後、言論統制の実態をより明らかにしていくことはもちろん望まれるところであるが、それだけでなく、鈴木庫三という特異な人物の思想を、昭和の人々が求めた「革新」という巨大な流れの中に位置づけて見ることもまた必要ではないかと思われる。
最後に蛇足ではあるが、p.185に『赤い恋』の作者として言及されているアレクサンドラ・コロンタイは「ソヴィエト女流作家」とのみ紹介されているが、レーニン政権の閣僚(保険人民委員)であると同時に特異なフェミニストとしても知られ、レニングラード・フィルハーモニーを率いた大指揮者エフゲニー・ムラヴィンスキーのおばにあたる人物である(グレゴール・タシー『ムラヴィンスキー 高貴なる指揮者』)。
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看板に偽りなし。満足です
2025年1月30日に日本でレビュー済み満足です。内容が良い本ですし状態も良く、配達も早かったです。ありがたいことです。
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戦後言論人の嘘八百
2025年7月8日に日本でレビュー済み本書は「増補版あとがき—言論弾圧史から言論統制史へ」(pp535-552)を先に読まれると理解が一層深まると思います。
歴史学は史実の追究を第一義にする学問ですが、近現代史分野では史実そちのけで執筆者の政治的スタンスが前面に出る書が多く辟易します。そうした書は、「歴史は過去に押し倒された政治」(ポクロフスキー)をもじっていえば「過去に押し倒された政治パンフレット」。
この点、著者は歴史家として史料批判に徹しています。「『鈴木(庫三=引用者)がどこにいたかは別にして』と強弁する空想家に、歴史家である私は何もいうべきことはない」(p541)。
それにしても本書が描いた状況は、ナチスドイツ、ヴィシーフランスの戦後にも起こりましたから、敗戦後の責任のなすり合いは人間共通の性なのでしょうか。
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皮肉にも著者の目的は達成されている
2024年8月18日に日本でレビュー済み夏休みの読書の素材を探しに図書館に行ったら新刊コーナーに面陳されていたものをそのまま借りてきて読了
失礼ながら私は本書を読むまで鈴木庫三なる軍人がいたことを知らなかったのだが、それはそれとしてこの本はなかなかすごい本である
鈴木庫三の受けた「いわれなき被害」を回復し彼の「実像」を明らかにするというのが本書の主目的のようなのだが、そうであればそもそも鈴木庫三が言論統制にどう関与していたかなどもはや副次的な話題となるはずである
また、彼の「実像」に興味があるからこそなのだろうが基本的に鈴木庫三の日記を正としたうえでそれと矛盾する証言や文書は「自称言論統制被害者のメディアの記憶違いであろう」と言って採用しないという方針で書かれているため途中からいくらなんでもバイアスが入り過ぎでは? となってしまう
特におかしいのは朝日新聞が実際には鈴木庫三から被害を受けたわけではないと叙述しているくだりで、朝日新聞関係者の発言は確かに軍の転籍命令とも矛盾しているとはいえ「記憶違い」の一言でほとんど全く採用されていない。それなのに鈴木庫三の発言は無批判にすべて採用されている。鈴木庫三は一切記憶違いを起こさない超人なのだろうか
確かに今日ではむしろメディア側から軍部の言論統制に併合していったことは明らかになっているとはいえだからといって「つまり鈴木庫三は言論統制を自分からは行っていない。そんなのは全部戦後のでっちあげだ」という話にはならないであろう。確かに本文を読む限り相当な努力家で下層出身でボトムアップ的な鈴木庫三の日記はそれなりに信頼できる情報源だとは思うのだが、それと矛盾する史料が出てきたらきちんと検討するべきであり、少なくとも「記憶違い」の一言でキックしていいものではない
最後にレビュータイトルに戻るが、確かに本書は「戦後に作られた言論統制する横暴な軍人鈴木庫三」のイメージを「生真面目な努力家」に塗り替えることには成功している。だが言ってしまえば努力家などただの努力家に過ぎず、真面目で努力家だから横暴な面などなかったと言いたいのなら控えめに言ってそれでは別種のステレオタイプに陥っているだけであろう
バイアス込みで読む分にはかなり勉強になる本だが、読む前に入手可能な他の史料で事前知識を得ておいたほうがいいと思う
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軍国主義の思想弾圧!
2024年6月7日に日本でレビュー済み①鈴木庫三を通して日本の軍国主義体制の実体を具体的に描写した好著である。軍人としての生き方を貫いた生涯は見事である。教育者として、思想統制として最適な人材であったことは間違いない。この軍国主義「教育」において鈴木の才能が開花した。軍人としての実戦経験ではない。
②軍国主義国家への貢献度は極めて高い。実務と学問を両立させた軍人は聞いたことがない。しかし、同時に国家を批判する視点、政治体制への哲学的考察はなかったのであろうか?例えば、国家学、国際政治学的な視点はあまり感じられない。軍事技術としての兵学には優れていたが、そこを越えられなかったのは限界ではないか?
しかし、ここまで一人の軍人の評伝を日記を手がかりに完成させた著者の力量に感服するばかりである。
お勧めの一冊だ。
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