コンテンツにスキップ

チョウセンゴミシ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
(五味子から転送)
チョウセンゴミシ

1. チョウセンゴミシの花 (上) と果実 (下)
分類
界 : 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
目 : アウストロバイレヤ目 Austrobaileyales
科 : マツブサ科 Schisandraceae
属 : マツブサ属 Schisandra
種 : チョウセンゴミシ S. chinensis
学名
Schisandra chinensis (Turcz.) Baill., 1868[1][2]
シノニム

チョウセンゴミシ(朝鮮五味子、学名: Schisandra chinensis)は、マツブサ科のマツブサ属に属する植物の1種である。落葉性のつる性木本であり、雌雄異株、5–7月頃に黄白色の花をつける(図1上)。果実は赤い液果で房状につき(図1下)、五味子(ごみし)[注 1]とよばれて薬用 (滋養、強壮、鎮咳) に用いられる。日本を含むアジア北東部に分布する。

名称

[編集]

ゴミシ(五味子)の名は、果実が甘味、酸味、辛み、苦味、鹹(かん)(塩味)をもつことから名付けられた[3][4][5]。江戸時代に生薬として朝鮮半島から輸入されていたため、チョウセンゴミシとよばれるようになった[5]。日本には産しない植物であると考えられていたが、輸入された五味子から得られた種子を平賀源内がお薬園で栽培し、これと同じ植物が日本にも自生していることが明らかとなった[3][5]。陶穀の『清異録』には「六亭劑」の別名がある[6]。

特徴

[編集]

落葉性のつる性木本であり、つるは左巻き[7][4][8]。葉は互生し、長枝には互いに離れてつき、短枝にはまとまってつく[4][8] (下図2a, b)。葉身は倒卵形から楕円形、4–10 x 2–6 cm、先端は鋭尖頭、基部は広いくさび形、葉縁には5–16個の波状鋸歯がある[1][7][4][8]。葉脈の側脈は3–7対[1][8]。葉の表面は黄緑色で無毛、葉脈の部分がくぼんでおり、裏面は淡緑色で葉脈上に毛がある[7][4][8] (下図2c)。葉柄は長さ 1–4 cm (葉身の長さの半分以下) であり、平滑[7][4][8][9]。冬芽は長卵形、長さ 3–6 mm、葉痕は円形から半円形[4]。

2a. 長枝と葉
2b. 短枝にまとまってついた葉 (つぼみをつけた花柄が伸びている)
2c. 葉: 表面 (左) と裏面 (右)

雌雄異株[注 2] (雄花と雌花が別の個体につく)[4]。花期は5–7月、花は短枝から生じた長さ 1–3 cm の花柄 (雌花の花柄の方が長い) の先につき、直径約 1 cm、芳香がある[1][7][4][9] (上図2b, 下図3a, b)。花被片は5–9枚、長楕円形 (4.5–10 x 1.1–4.2 mm)、黄白色[1][7][4]。雄花は4–7個の雄しべをもち、花糸が太く、葯は外向する[1][4][9] (下図3a)。花粉は6溝粒[9]。雌花は、丸い花托上についた14–40個の離生した雌しべをもつ (下図3b)。花柱は白色、子房は淡緑色で2個の胚珠を含む[1][7][4]。訪花者は多様であり、甲虫、ハナバチ、ガなどが報告されている[10]。花托が花後に伸長するため、個々の果実は離れてブドウの房状の集合果になる[7][4] (上図1下)。果実は液果、8–9月頃に赤熟し、大きさは不揃いであり (5–7.5 x 4–5 mm)、それぞれ1–2個の腎臓形の種子を含む[1][7][4] (下図32c)。種子の表面は平滑[7][4]。染色体数は 2n = 24, 28[1][7][9]。

3a. 雄花
3b. 雌花
3c. 種子

分布・生態

[編集]

日本を含むアジア北東部に分布する[3]。北海道、本州 (中部地方以北)、朝鮮半島、中国北部、シベリア東部、沿海州、アムール、ウスリー、サハリンに見られる[2][7]。

冷温帯に自生し[3]、落葉広葉樹林の林縁に生育する[4][8]。

人間との関わり

[編集]
4a. 市場の五味子 (韓国)
4b. 五味子茶

果実は五味子 (ゴミシ、朝鮮語:オミジャ、満州語:misu hūsiha) とよばれ[注 1]、生食用やジュース、五味子茶、五味子酒として利用される[12] (図4a, b)。

五味子は日本薬局方に生薬として収録され、鎮咳去痰作用、強壮作用などがあるとされる[12][13]。精油成分としてシトラール、セスキテルペン類としてα-chamigreneなど、リグナン類としてschizandrinやgomisin A(英語版)などを含み[14]、小青竜湯、清肺湯、人参養栄湯、苓甘姜味辛夏仁湯、杏蘇散などの漢方方剤に配合される[12][13]。

長野県阿智村や喬木村では、健康増進のためにチョウセンゴミシのつるを風呂に入れ、入浴する伝統の民間療法がある[15]。

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. 1 2 チョウセンゴミシのものを北五味子、近縁のサネカズラのものを南五味子とよぶこともある[11]。
  2. ↑ 本来は雌雄同株であるが、雌雄異株のように見えるとの記述もある[1]。

出典

[編集]
  1. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 Saunders, R. M. (2000). Systematic Botany Monographs vol. 58. Monograph of Schisandra (Schisandraceae). The American Society of Plant Taxonomists. pp. 94–99. ISBN 0-912861-58-4
  2. 1 2 3 4 5 “Schisandra chinensis”. Plants of the World online. Kew Botanical Garden. 2021年6月24日閲覧。
  3. 1 2 3 4 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 242.
  4. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 勝山輝男 (2000). “チョウセンゴミシ”. 樹に咲く花 離弁花1. 山と渓谷社. p. 389. ISBN 4-635-07003-4
  5. 1 2 3 磯田進・鳥居塚和生. “チョウセンゴミシ”. 公益社団法人日本薬学会. 2023年2月3日閲覧。
  6. ↑ 『清異録 江淮異人録』上海古籍出版社、2012年。
  7. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 大橋広好 (2015). “マツブサ属”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 1. 平凡社. pp. 50–51. ISBN 978-4582535310
  8. 1 2 3 4 5 6 7 馬場多久男 (1999). “チョウセンゴミシ”. 葉でわかる樹木 625種の検索. 信濃毎日新聞社. p. 172. ISBN 978-4784098507
  9. 1 2 3 4 5 Flora of China Editorial Committee (2008年). “Schisandra chinensis”. Flora of China. Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2021年7月16日閲覧。
  10. ↑ Saunders, R. M. (2000). Systematic Botany Monographs vol. 58. Monograph of Schisandra (Schisandraceae). The American Society of Plant Taxonomists. pp. 30–32. ISBN 0-912861-58-4
  11. ↑ 「五味子」『精選版 日本国語大辞典』。コトバンクより2021年7月16日閲覧。
  12. 1 2 3 “チョウセンゴミシ”. 熊本大学薬学部 薬草園 植物データベース. 2021年7月16日閲覧。
  13. 1 2 “ゴミシ”. 新常用和漢薬集. 公益社団法人東京生薬協会 (2017年3月1日). 2021年7月16日閲覧。
  14. ↑ 竹谷孝一・木内文之・小松かつ子 (2017). パートナー生薬学 (改訂第3版). 南江堂. ISBN 978-4-524-40342-4
  15. ↑ 『信州の民間薬』全212頁中83頁医療タイムス社昭和46年12月10日発行信濃生薬研究会林兼道編集

参考文献

[編集]

外部リンク

[編集]