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教室の住人たち|リスみたいな子

その子は優しい子でした。

修正テープを貸してくれたりする、気の利く子でした。

勉強も頑張っていましたし、英語は特に成果が出るのが早かったです。

高校の合格発表の日には塾に顔を出してくれて、

「英語、分かりやすかったです」

と言ってくれたこともありました。

その子を知っている保護者の方からは、高校で勉強に目覚めて頑張っているらしいと聞きました。

そんな子でした。

でも、私がその子を思い出すとき、なぜか最初に浮かぶのは別の姿です。

少し肌寒くなってきた頃、その子はよくパーカーを着ていました。

ある授業のとき、なんだか口をもぐもぐしています。

気のせいでしょうか。

目を離していると、パーカーのポケットに手を入れます。

そして口元へ運びます。

またポケットに手を入れます。

そして口元へ運びます。

最初は見間違いかと思いました。

しかし、何度見ても同じ動きをしています。

私の様子を気にしながらも、何事もないような顔で勉強を続けていました。

なんでしょう。

どうやらグミらしいのです。

私は半信半疑だったので、

「授業中にお菓子食べるなよー」

と全体に向けて言いました。

すると、その子は何事もなかったような顔で勉強を続けていました。

あまりにも自然だったので、

私も

「あれ? 違ったか?」

となりました。

今思えば、その頃はいつもパーカーを着ていた気がします。

たぶん、あのポケットにはグミが入っていたのだと思います。

優しい子でした。

勉強も頑張っていました。

それでも。

私の記憶の中のその子は、パーカーのポケットからグミを取り出しています。

まるでリスみたいに。

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