教室の住人たち|文房具だけは高い子たち
気づくと、筆箱が変わっています。
「あれ? 筆箱変えたの?」
「はい、変えました。」
そう言いながら見せてくれます。
よく見ると、シャーペンも変わっています。
持たせてもらうと、ずっしり重い。
文房具屋で見かけるものとは少し違います。
「いくらしたの?」
「一万円です。」
は?一万円?
なんでそんなにするの?
「製図用なんですよ。」
すると説明が始まります。
重心がどうとか。
書き心地がどうとか。
金属製でどうとか。
そういう話になると、みんなよく喋ります。
「なんでそんなにこだわるの?」
と聞くと、
「こだわりたいんですよ。好きなんですよ、文房具。」
と返ってきます。
こんなやり取りを、私は毎年している気がします。
しかも決まって、受験が本格的に始まる頃です。
あるとき、その理由を聞いてみました。
すると、
「新しいのを買うと使いたくなるんですよね。使える場所って勉強しかないじゃないですか。」
と言います。
なるほど、と思いました。
不思議なことに、そういう子たちは友達の話もします。
「友達の方がすごいですよ。」
と言うのです。
「三万円くらいするのを使っています。」
「は?三万円?そのお金は、どっから出てくるんだよ。」
と思わず聞きました。
すると、
「お年玉とかじゃないですか。」
と返ってきます。
ああ、なるほど。納得するのだけど、知らない世界だなと思う。
ただ、こどもたちが使う文房具を見ていると面白いのです。
シャーペンにはこだわる。
使い終わると丁寧にしまう。
傷が付かないように扱う。
なんだか満足そうに勉強しています。
高級そうなシャーペンを見ると、今では反射的に
「いくらしたの?」
と聞いてしまいます。
