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価値観の違い

三題噺:逆ドッキリ/選ばれた友人/怒鳴り声:コメディ

ボクの好きな人は少し変わっている。なんて言うか、ボクとは完全に感性がズレているんだろうな、とは思う。
今日はそんな彼女とデートだ。まぁ向こうはデートとは思ってないんだろうな。いや、まだまだ、ここから、ここからだ。
彼女から誘われて買い物に付き合うものだったのだが、買い物も終わり少し遅めのランチでも?となった。
少しオシャレなカフェテラス。屋外の特等席に座る。もちろん、ボクは彼女をエスコートしようとしたが少し睨まれた。彼女を座らせて自分の席へ。すると彼女が口を開いた。

「全ての女性が今のようなエスコートを喜ぶとは思わない事ね」
「え?」
「エスコート、と言えば聞こえは良いかもしれないけれど。私は私のタイミング、距離感、位置取りで座りたいの。あなたにサポートしてもらう必要なんてないわ、ただ座るだけなんだもの」
「ご、ゴメン……」

思わずシュンとなるボクに間髪入れずに彼女は続ける。

「違うわよ。私に対しては不必要であると伝えただけよ。一般的な女性なら喜ばれる可能性が高いと思うわ?彼女たちは『まるでお姫様のように』扱われたいみたいだし。私には自立出来ないのかしら?とか思うけれど。自立出来ないから座るのかしら?そもそも王族では無いのに、ね」

彼女は少しだけふふ、と不敵に笑う。……可愛い❤

「キミは、少し変わってるね」

思わずそう言ってしまったが、彼女は機嫌を損ねる訳でもなく答える。

「親の血筋が、そうさせるのかも知れないわね。そうね、少しだけ面白い話だから、教えてあげるわ。私の両親のプロポーズのエピソードよ」

メガネのフチをくいっと、上げながら、彼女は話をしてくれる。

ある晴れた日、ここと同じようなオシャレなカフェに父と母は来たわ。もちろんその時はまだ私は生まれていないから、厳密に言えば父でも母でも無いわよ?でも私からしたら父と母だから、呼び方はそうさせてもらうわね。
父は人を驚かせたい気質なの。そしてあろうことか『フラッシュモブ』なんてもので母にプロポーズしようとしたのよ。あんな非効率な方法を選ぶなんて我が父親ながら驚くわね。父親だから許容するけど。
父は知人に頼んで20人規模のものを準備したらしいわ。ちなみに内訳はプロダンサー4、知り合い友人16人。父はダンスもものすごく練習したんだとか。そんな暇があるなら本の一冊でも読めばいいのにね?

え?ステキなお父さんだね?何言ってるの?頭に虫でも飼ってるの?それはおすすめしないわ。

話を戻すわよ?フラッシュモブは進んで行くわ。ひとり、また一人と、増えていくやつね。そうしたらそこに異物が混ざりこんだの。一人の酔っ払いのおじさんが急に怒鳴り始めたのよ。そこに流れる音楽よりも大きな声だったらしいわ。
ガシャーン!お皿や食器が割れる音。
「うるせえ!うるせえ!何だこの変なのは!こっちは客だぞ!静かにコーヒーひとつ、飲むことも出来ねえのか!」
そう怒鳴りながら、踊ってるそれこそ『モブ』の人達に絡み始めたの。すごいわよね。あんまり聞いたことないんだもの。
結局、踊ってた人達は踊りを続けることが困難になり、やむなくフラッシュモブは中断されたわ。雰囲気は最悪よ。父は人目もはばからずに、泣き出したの。わんわんと。
「ゴメンね、こんな事になるなんて、ゴメン、ホントにゴメンね」って。
すると母が、その父を見て。指さしながら手をバンバン叩いて、大笑いしたの。
「泣いた!泣いた!あはははは」だって。
父はそんな母をキョトンと見たわ。そしたらモブたちが全員でちっちゃなプレートを掲げて
『ドッキリ!だーいせーいこーう!!』
あたりは拍手と笑いに包まれたわ。

そう、母は知ってたの。父が最初にフラッシュモブを相談したのは、母の知人でもあり、母との繋がりの方が強い知り合いだったの。そして母は『イニシアチブを相手に渡すわけにはいかない』と判断したわ。それで逆ドッキリよ。
父は怒り出したけど『あなたも私にドッキリを仕掛けたわけよね?』の一言でもう何も言えなくなったわ。

私はフラッシュモブはあんまり好きではないけど。フラッシュモブ返しはやってみたいわね。

ふう、と一息。コーヒーを飲もうとしたらメガネが曇って、あら見えないわねなんて言いながらメガネを外して、コシコシとメガネを拭く。凛々しい顔立ちがチラリと見える。

メガネをかけ、とにかくとことん真面目。全く融通が効かないその性格から、周りのみんなからは『ロッテンマイヤーさん』と呼ばれている彼女の、可愛らしいステキな一面が知れて、ボクはとてもとても満足した。

彼女寄りの共通の友人を持とう。そう決めた。

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