【経費】
【経費】
三題噺:シュレッダー/領収書/無表情
「社内規程未達、こればダメです、認められません。社内規程未達、コチラも認められません。業務に関係ないモノは必要経費として認められません」
無表情で淡々と未達認定の書類をシュレッダーに入れていく経理の鮫島さん。可愛らしいその外見とは裏腹にバンバンシュレッダーで切り刻むその姿に、ついたあだ名は『切り裂きシャーク』。
誰が上手いことを言えと。
そんな中、口だけは達者な営業の桐崎が書類を持って鮫島さんの所へ。
「サメちゃん、これ。経費でよろしく~」
チラリと書類を見て、鮫島さんは口を開く。
「申し訳ありません。コチラ、詳しく説明を求めます。……まず、このハンコ代は?」
「ハンコなんてよく使うんだからそれは経費っしょ」
「はい。わかりました。経費です。……ではこちらのお花代、というのは?」
「相手さんに手渡しするんだよ。心を開く手段として有効だし。交際費として落ちるよね?」
「あ、はい。そうですね。経費です。ではこちらの………式場とゆうのは?…………教会、となってますが?」
無表情で有名な鮫島さんの目が、泳ぎ始めた。
…………誰が上手いことを言えと。
「きちんとした会場で話を進めないと、今後の展開にも響いてくるからね。リサーチ済みでね。今回のクライアントの宗教的な意向に大きく配慮しているよ。コレは必ず経費として通してくれないと困るよ」
「はい。はい。通ります。コレは確実に経費です。……それとこの、衣装代、とゆうのは?」
「正装をすべきだし、相手にも正装をしてもらう必要があるから。そこはもう当たり前のことだと思うよ。そうだよね?」
「あ………はい。はい。わかりました。私が絶対に経費として落とします。何がなんでも、通しますね。あと……この、指輪代、とは?」
「モニターとして指輪を渡して、アンケートを取ろうと思ってるんだよ。次の商品企画としても有効だと考えてる。企画用の必要経費として通るよね?」
「はい。はい。私もそう思います。桐崎さんが言うんだもの。全部全部、経費です。会社にお金を出させます」
「んじゃ、はい。コレは、サメちゃんに」
「…………あ………」
鮫島さんは、最後に渡された書類を見た、
チラリと、シュレッダーを見る。クビを振る。
そして…………泣き出した。
桐崎のサインが記入済みの婚姻届だった。
2ヶ月後。あだ名は『切り裂き桐崎』になった。
