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彼女の想い

三題噺:記念日/涙/ダンス:ヒューマンドラマ

「何度やっても慣れねえな」
「そうだな、まぁでも、やりがいはあるよな!」
「お前は3番目、くらいだっけ?まぁまぁな出番だよな」
「そそそそそ。あの、『あ、え?え?なになに?』ってなり始める、なんなら一番美味しいとこかもな」
「いーよなー。俺はもうみんなと一緒に~♪みたいなところだもん」
「まぁ、バイト代としてはそんなに貰える訳でも無いけど。何よりもその『特別の手助け』してる感覚が病みつきになるんだよ」
「それな!」
「お?ぼちぼちかな?」

オシャレな屋外の席が多く用意されたカフェだ。
近くの席にカップルが座る。店員に注文をする。何気ない話をしているようだが、周りから見ても明らかに男性はソワソワしている。そんな男性を見ながら俺たちは心の中で頑張れ!と応援する。

店員がお盆の上にドーム型のカバーを乗せてカップルの所に来る。カバーは鉄製だから何が入ってるか分からない。店員が二人に向かって大きくお辞儀をする。ものすごくもったいぶってカバーをパカッと開ける。
お盆の上には大きな花束と小さな箱。素早く店員はその箱をテーブルの上に。花束は男性に手渡して、軽やかな足取りで『では、お楽しみください』なんて言いながら厨房の方へ引っ込む。
男性は席を立ち、彼女の横に移動してひざまづいた。花束を彼女に手渡して大きな声で叫んだ。

「愛してる!僕と結婚してください!!」

それを合図に辺りには愛をテーマにした曲が流れ出す。少しぎこちないダンスを踊り出す。向こうの席から、ただの客だった女性が近づいて一緒に踊り出す。俺の目の前のツレもニコニコ笑いながら立ち上がり、近づいて踊り出す。
ひとり、また1人と、そこいらにいた客がどんどん集まってくる。
カップルの方を見ると彼女さんは目に涙を浮かべて花束に顔をうずめている。
よし、そろそろ俺の番だ。俺も近づいてって、みんなで踊り出す。
カップルの男性はダンスは慣れてないのだろう、なんかバタバタした感じのダンスだが、懸命に練習したことは誰が見てもわかる。

曲が終わる。本日のメインダンサーは、花束を持ったまま涙を流す彼女の前に戻ってきて、テーブルの上の小箱を開ける。中から指輪を取り出してまたひざまつく。そしてその指輪を持った手を彼女さんに向けて伸ばす。

「よろしくお願いします!」

よく通る大きな声で、彼女に言う。
周りのみんなもダンスを終え、この幸せな空気を楽しみながらワクワクしながら彼女の返事を待つ。

「…………ねえ、なんでこんなことするの……?あたし、言ったよね?そーゆーフラッシュモブだかなんだかのお祭り騒ぎみたいなの、絶対ヤダって。それなのにこんなことするの?……無理だよ……そんな人と結婚して、これからずーっと暮らすの?……絶対、無理!!」

彼女は泣きながら、手に持った花束を男性に突き返して、走り去っていった…………

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