シャボン玉 シロクマ文芸部
シャボン玉のような丸い透明な球体が空中で浮いている。シャボン玉にしてはかなり、かなり大きい。
しかし、それはやはりジャンボなシャボン玉だった。
私の近くに来た時に、その球体に直接尋ねたのだ。
すると
「シャボン玉以外に私は何に見えますかしら?」
と、逆に訊かれた。
私は気持ちを立て直し
「そうよね、そうだよね」そう返した。
「じゃ、急ぎますので」と彼女は、また空高く上り始めた。
「あのー、どこに行くのですかー」
「ちょっとー、そこまでー」
遠ざかるシャボン玉を見上げていると、風船に結ばれた何かが落ちてきた。
急いで拾い上げる。
それはシャボン玉セットだった。
ワンカップほどのプラスチックの容器に入れられたシャボン液と数本の形も色も違うストローが透明な袋に入っていた。
大声で「ありがとう」と叫んだけれど彼女に聞こえたかどうかは不明。そのまま、大きなシャボン玉は少しずつ遠ざかって行く。
新手の飛行船広告だろうか、全国周遊広告だとしても商品がシャボン玉セットというのでは不思議すぎる。いや、在り得ない。
最近、シャボン玉をして遊んでいる子供達を見かけることはない。きっとシャボン玉は寂しいのだと思った。もっともっとシャボン玉遊びを子供たちにしてもらいたいのだと思う。何となく間違っていない気がした。
私は、大きなシャボン玉にもらったシャボン玉セットの袋を開けて、シャボン液と一番大きなストローでシャボン玉を飛ばした。
小さなシャボン玉がたくさん一度に飛び出してきた。
小さなシャボン玉たちは軽々と空高く舞い広がり、まるで大きなシャボン玉を追っていくようにも見えた。
小さなシャボン玉も大きなシャボン玉も太陽の光を反射して煌めいている。
やがて何事もなかったかのように青い空と私だけがポツンと残された。
私はシャボン玉にはなれないけれど、空に舞い上がれるような身軽さで生きていきたい。シャボン玉セットを握り締め、ふと、そう思ったのだった。
了 798文字
小牧幸助部長の今週のお題『シャボン玉』から始まる話です。
よろしくお願いいたします。
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