レシートに シロクマ文芸部
レシートに記載されていた商品の金額は、12,000円だった。思ったよりかなり高額だがどうもおかしい。私の誕生日に夫がプレゼントしてくれたスカーフ。どう見ても1,000円程度だと思われる。
夫が昨日着ていたスーツのポケットを探った。
あった。レシート。金額は1,200円だ。商品名はスカーフ。夫からのプレゼントのレシートだ。
では12,000円のスカーフは誰にプレゼントしたのだろうか。私の知っている女なのか。それはどんなスカーフなのか。メラメラとした初めての感情が私を包み込む。
夜、夫が帰宅した。
私は夫の前に二枚のレシートと1,200円のスカーフを並べる。
夫は小さく「あ!」と声をたてた。
「このスカーフのレシートはどっちなの」
しばらくの間。
「すまん、気に入ったんだ。私が」
「え?」
「これは最初君のために買ったのだが、私が欲しくなった」
そう言ってコートを脱いだ。
夫の首元には12,000円のスカーフ。なかなかの絵柄。確かに素敵だ。
「だからって私へのプレゼントもスカーフにすることないと思う。否が応でも格差が目立つ」
「そう思ってね」
そう言いながらコートのポケットから差し出した小さな包み。
「これはオマケだ」
箱を開けてみると緑色の石のついた金のリングだった。
「石はイミテーションだけどね」
「嬉しいわ、あなたの気持ちが」
夫は安心したようにこう言った。
「レシートを見るかい?」
「もういいわよ。ごめんね無粋な事して」
「お互い様だ」
そのうち、12,000 円のスカーフは自分の持ち物になるはずだ。待っていようと私は思った。
夫は飽きっぽいのだ。私以外のものにはね。
あら、ノロケじゃないわよ。
了 684文字
小牧幸助さんの今週のお題、『レシートに』から始まる話です。フィクションです。よろしくお願いいたします。
#シロクマ文芸部
#レシートに
#スカーフ
#ショートストーリー
