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【ニホンザル】 双子もどき

こんにちは、kiyoです。
1頭のメスが2頭の赤ちゃんを連れています。
ニホンザルはほぼ双子を産まないこと、この赤ちゃんもそれぞれ身体の大きさが違うことから、双子ではないことは確かです。

ニホンザルの世界ではこういうことはときどきあります。
育児放棄された赤ちゃんを他のメスが拾って自分の子と共に育て始めるのです。
出産直後で強い母性本能があることによる行動で、出産していないメスにはあまり見られないことです。
また、赤ちゃんがまだ自分の母親を認識できず、間違えて他のメスのところに行くこともあります。
この場合は、実の母親がすぐに取り返しますが、母親も我が子のことを忘れてしまうケースもあります。

いずれにしても、我が子以外にもうひとりの赤ちゃんを自分の子として育て始めるわけです。
このとき、おそらくはふたりの赤ちゃんとも自分の実の子だと思い込んでいると思われます。
よって、まったく分け隔てなく平等に育てていきます。

こういった「双子もどき」の子育ては、動物園や野猿公苑でも見られ、その多くは、両方の赤ちゃんがひとりで採食できるまで無事育て上げることに成功しています。

しかしそれはあくまで動物園や野猿公苑における話で、今、私の目の前にいる「双子もどき」は、人間の干渉や介助を一切受けない、自然の野生のニホンザルなのです。

これは生息環境がまったく違います。

自然の野生群において、ひとりのメスがふたりの赤ちゃんを育て上げた例はほとんどありません。

動物園、もしくは野猿公苑で餌付けされている群れと、自然の野生群との決定的な違いはわかりますか?

遊動するか、しないかです。

動物園のサルも野猿公苑のサルも遊動をしません。
野猿公苑のサルは朝夕のみ多少の遊動はしますが、自然の野生群の遊動とは比較になりません。
日中は公苑の餌場に定着しています。
自然の野生群は1日中、山の中を遊動し続けているのです。

ふたりの赤ちゃんを抱えて険しい山岳地帯の群れの遊動について行くのは大変な負担になります。

これが原因で、ふたりの子育てはうまくいかないわけです。
近隣に長居できるような農作地などがある里山の群れは遊動も多少は楽でしょうが、高地に生息する群れではかなり厳しいでしょう。

このメスが、私が気づいた時点で何日間ふたりの赤ちゃんをつれていたのかはわかりません。
しかし、この3日後、私が再びこの群れに合流したとき、ふたりの赤ちゃんを抱えたメスは群れにはいませんでした。

おそらくは既にかなり弱っていて、手で支える必要があったお腹側の赤ちゃんを、群れの遊動中に手放したと推測します。
この動画を撮った朝はまだ元気そうでしたが、夕方には母ザルの支えがないと自分で掴まる力がときどき抜けて落ちてしまう状態になっていました。
死んだ可能性もありますが、赤ちゃんが死んだ場合、母ザルは一定期間遺体を抱き続けます。
なので、おそらくは母ザルが自ら手放したと私は推測するのです。

母ザルが自らの赤ちゃんを(育児放棄ではなく)手放すことは実はちょくちょくあるのです。
様々な要因がありますが、一番多いのは、オスからの攻撃やケンカに巻き込まれて、必死に逃げる際に、赤ちゃんを落としてしまうケースです。
まして、自力でお腹に掴まっていることが困難なこの赤ちゃんの場合、この可能性が高いだろうと思います。

険しい山岳地帯における毎日の遊動で疲労してしまい、力が抜けて落ちてしまう赤ちゃんを支えきれなくなって置き去りにしたのかもしれません。

これは昨今注目を浴びている、市川動植物園のパンチくんとは対極の環境に生きる野生の世界の現実です。

赤ちゃんが弱っているなら何故保護しないんだ!と言う人もいるでしょう。

私は保護も介助もしません。
野生動物の世界に私たちは干渉すべきではない、というのは、野生ニホンザルに15年関わってきた私の信念です。

生きるも死ぬも、それが彼らの生態系の在り様。

何も手助けしないことが、私の彼らに対するリスペクトです。

* ヘッダー画像、及び本文中の画像、動画は、注釈が無い限りは私本人の撮影 によるものです。

* 各野生動物ごとの記事をマガジンにまとめてあります。
過去ログもぜひお読みください。


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