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コウモリコモリとドラキューラ


カタ カタ カチカチ……とキーボードとマウスを動かしている。

「コヤツら!またワタシを侮辱しておる」

カチカチ ……ブルーライトを浴び

「本当救いようない愚民共めっ」

カチカチ カタ カタ カチカチ ……真っ暗な部屋の中で画面を凝視して、両手のヒトサシ指で彼は検索していた。

「命を持って償わせるか!?」


「あ〜また始まった。伯爵の深夜のパトロール…じゃなくて、エゴサーチ。」

「おい、コモリ!?何か言ったか?」

「いえいえ、伯爵。今宵も掲示板の巡回、ご苦労様です。それにしても何故そんなに毎晩、毎晩、エゴサ―してるの?この時期は特に……」

「何故って?コモリ!貴様ぁぁ」

「だって、気になりますやん!不死者の王たるこのワテが、何故(なにゆえ)こんなにも嫌われているの?先代の父上は、もっと畏怖されていたというのに………ウチが一体何をしたって言うの?」

「始まった…。伯爵って、見た目はあれなのに、メンタルはガラスの鎧やからなぁ。」


あ、俺はコウモリのコモリ。
伯爵に使えて、もう何百年になるだろう? 先代の伯爵も含めると……そうだな、かれこれ1000年くらいかな? 先代の伯爵は、そりゃもうカリスマの塊みたいな吸血鬼で、月夜に現れるだけで人々は震え上がったもんだ。 今の伯爵?うーん、まあ、優しい…と言えば聞こえはいいけど、ちょっと繊細すぎるんだよなぁ。

ヴァンパイア・・・

いや、

【吸血鬼】と言う方が馴染みがあるだろう?


【吸血鬼】

民話や伝説、漫画などに登場する存在で、
命の源とも言われる血を吸い栄養源とする
蘇った死人または不死の存在。

狼男、フランケンシュタインなどの怪物と並び、
世界中で知られている怪物のひとつ。

多くの作品において登場してきた。

生と死を超えた者。
または生と死の狭間に存在する者、不死者の王とされる。

また、現在では
凶悪な犯罪者の通称としても使われたりもする。

だから人々は吸血鬼・・・

いや、

ヴァンパイアにいい印象が無いのは当然の事だ。

だけど実際は・・・


伯爵はPCの画面を見ながら
「あぁぁ!!ウチって、ほんまイメージ悪いんですけどーっ!『時代遅れ』とか書かれてるし!ウチの事、カッコよく言ってくれるのんって、ほんま
ヴィジュアル系位なんですけどぉ〜。しかも、最近の子は【バンギャ】って言わへんのやろ?」

皆が思い描く、冷酷で恐ろしいヴァンパイアとは程遠い。

伯爵はPCの画面を横に向けて
「見てぇぇ〜これ酷くない?ちょっと見てくんないっ」

それを聞いたコモリ
(なぜ、ギャルのような話かたなの……)
「伯爵、何がですか?どれどれ……『ドラキュラおじさん、まだそんな格好してるの?』」

「これ、めっちゃ傷つくわ。お前らが生まれる百年も前に流行したマントやぞ!ファッションって一周まわるんちゃうん?……っ全くまわらんやんっ」

カチカチ カタ カタ カチカチ
とマウスをクリックしてはスクロールした。

どうやら、匿名掲示板という、人間界の闇(交流)を覗いているようだ。

【今年ハロウィン衣装どうする?】

【やっぱ、ゾンビ!?血糊ベタベタで!】

「何がゾンビやねん!?ベタやん!もっとこう、エレガントな恐怖はないんか!どんだけバイオハザードすんねん。ゾンビはもう、クリーチャーやん。てか、ハザードは車のカチっカッチだけでええって!」

【パーティー!ハロウィンパーティー!狼男でご来店の方ドリンク半額!!】

「あっか~んっ。世も末やな……。あんな満月見て吠えるしか能のない奴の恰好でなんで半額なるねん!?知能指数低すぎるやろ!」

それを聞いたコモリは
「伯爵、人と狼の半分半分だからじゃない?絶対そうだ!半分だから半額」

伯爵は言った。
「はぁ〜?何それ?しょうもな!てか、そもそもハロウィンパーティーって
なんやねん!?ハロウィンにパーティーが付くのかがわからん!盆と正月にパーティーって付かんやろ!」

(伯爵……クリスマスはパーティーって言うよ……)

「てか、ハロウィーンやしなっ!!」

伯爵は他の書き込みもコモリに見せた。

【やっぱりコスプレはフランケンっしょ!】
【フランケン!?うけるぅ】

「うっざっ!あんなもん、ネジつっこんでるだけやんけ」
「てか、あのネジなんなん?ホームセンターで売っんの?頭蓋骨貫通してへんのやろか?あいつ、頭にネジつっこんでる割には、頭のネジぶっ飛んでる位のアホやからな」

「伯爵!ダメだよ、フランケンの事悪く言っちゃ……」

「コモリ!オマエまさか!?アイツの…ファンなのか?」

「おっ!伯爵、これ伯爵の事じゃない?」

「え!?どれ?どれ?」

伯爵は画面を覗きこんだ。
そこにはこんな書き込みがあった。

【ドラキュラのコスプレする人ってハロウィン初心者過ぎて 草。】

【ドラキュラって、もはや絶滅危惧種でしょw】

「……コモリ……」

(……まずい)
コモリは焦った。
「は、は、は、く、しゃ、く」

「コイツなんやねん!?絶滅危惧種って、ワシ、まだ生きてるわ!」
「てか、ドラキュラってなんや!?草ってなんや??正式名称はドラキューラやからな!ドラキュラやて『#ドラキュラ』で検索してみっちゅうねんっ!コイツの方が初心者で 草。」

「えっ!?ドラキュラでしょ??ドラキューラって何?ってか誰?完全にハロウィーンに引っ張られてない?」

他にも書き込みが

【ドラキュラって血吸うんだっけ?蚊みたい】

【てか、朝日だめなんでしょ?引きこもり確定w】
【夜勤オンリー】
【夜勤あけとともに 氏。】

「いやいやいや、ワテ毎朝5:00に起きて朝活してるっちゅーに」
「誰や…『氏(うじ)』って?新しいネットスラングか?」

コモリは
「いやいや、実際朝日ダメっしょ」
「てか、早起きって言っても部屋真っ暗じゃん」
「朝活って・・朝ご飯食べるだけじゃんっ」

「それ、氏じゃなくて……」

【にんにくが弱点ってダサない?】

「はい、でたー。。ブーブー✖️にんにくめっちゃ好きぃ〜」
「はいっ!先生、はいっ!はい、はい!」
「僕、いつも増し増しです!!」

【いや十字架でしょ、今どき十字架て】

【チャペル婚無理】

「はい、漫画の見過ぎぃ〜。てか、ワテ西洋人ですねん。
十字架があかん訳ないやん!逆に、仏壇の方があかんわ!!」

伯爵はそう言いながら時計を見た。
「あっ、もう22時か。(十字架)……って言うてる場合か!」

「カッチーン、ゴッさ腹立ってきた」

「コモリっ!今夜はコイツらに決定!!」
「支度しろ!」

「あ、はいっ(汗)」

「てか、バっチボコいったんねん」


伯爵とコモリは、大量のコウモリたちが作り出す、生きているブランコのようなものに乗りながら夜空を駆ける。

(……ほんとだっ!ドラキューラだっ)

「コモリ、特定できたか?」

「あっ、はい、IPアドレスから住所を特定したよ」

「さすがコモリ!早速行くぞ!愚民どもに、真の恐怖を教えてくれるわ!」

どうやら、今宵のターゲットはこのアパートらしい。


ここはとあるネット民宅。
明かりの灯る窓から、楽しそうな笑い声が漏れてくる。

「ハロウィンはやっぱりゾンビっしょ!可愛いなぁ血糊もっと盛ろうぜ!」

「いやいや、このアニメのコスプレも捨てがたいな〜。#推ししか勝たん」

カラカラカラと窓を開ける

ヒュー

とあるネット民の部屋に、夜風が吹き込んだ。

「なんだ?俺、窓開けてたっけ?ん?閉めたはずじゃ…」

すると、中へ

パサパサ

「うわー、コウモリだ!マジキモい!」

パサパサ パサパサ

「うわ、何匹いるんだ?」
「えい、えい」
と近くにあった棒のようなもので追い払おうとする。

コウモリたちは窓の外へ飛び去った。

「ふぅー、なんだったんだ?まーいっか、てかこの事、書き込みしよ」

男は再びパソコンへ向かった。

その時

「おい、愚民」

背後から聞こえた、冷たい声に、とあるネット民の背筋が凍りついた。

「ゆっくり、振り向け」

声の主の威圧感に、とあるネット民は直感的にいや、本能的に危険を察知した。

これはヤバいと・・・

頭では絶対に振り向いてはいけないと理解しているのに、体はまるで操り人形のように、ゆっくりと声のする方へ向き始める。

とあるネット民は恐怖のあまり目をギュッと閉じたまま、振り返った。

伯爵は、漆黒のマントを翻しながら言った。
「目を開けて、我を見よ」

すると
震える瞼がゆっくりと上がり、焦点の合わない瞳が、逆光の中に立つ人影を捉えた。

「ぎゃああああ」

とあるネット民は叫んで助けを呼ぶが声が出ない
いや、確かに叫んでいる。
今まで味わった事のない恐怖が声量を消している
のだ。

伯爵はさらに言葉を発した。
「頭が高いぞ。我を誰と心得る」

その言葉に
とあるネット民は一瞬でひざまづいた。

いや、これは土下座だ。
それも、おでこを床へ……いや、更に下へ……下へ……と擦りつけ、土下座よりも深い、絶対服従の姿勢。

あまりの恐怖の圧力に、涙腺は崩壊し、膀胱は悲鳴を上げ、体は震えが止まらない。 命乞いをしたのだ。

これは当然の行為。

恥ではない。

自らの命を捧げる事は簡単。

だが、

目の前の伯爵いやヴァンパイアは
そうではなかった。

この後、自分の身にどんな残酷な仕打ちが待っているのか、想像するだけで意識が遠のきそうだった。命が絶えるまでにどんなに残虐な事が起こるの
かと人間は怪物を目の前にしてそう思ったのだ。

とあるネット民がとった行動は……

「すみません、すみません。なんでもしますから助けてください」

そう、ただ謝ると言う行為だった。

それしか出来なかった。

伯爵は笑みを浮かべながら言った。
「ほー、何でもするか?」

「はい!何でも、何でもしますから!どうか、お許しください!」
必死に命乞いをする男に、伯爵は顎に手を当てて言った。

「そうだな……では今から、ワタシが言うことを掲示板に書き込め。」
とあるネット民は、考えるよりも先に、言われた通りにキーボードを叩き始めた。

【ヴァンパイア様、マジかっこいいっす!永遠に崇拝します!】
【ハロウィンはヴァンパイアコス一択!】

「こ、これでよろしいでしょうか…?」

「待て、ちょっと貸せ」
伯爵はヒトサシ指でキーボードで打った。

【フランケン、きもー】
【フランケン、マジ無理。あんなのコスプレする奴、センスなさすぎw】
【草。草。】

とあるネット民は、床に額を擦り付けながら
「も、申し訳ございませんでした!」

「わかればよい。だが、このままでは面白くない。最後に、貴様に真の恐怖を教えてやろう。」

「うわああああああ!」

とあるネット民は想像を絶する恐怖に意識を失った。

「ははは、コモリ、見ろ、この顔!あースッキリした!次行こーぜぃ」

コモリは
「伯爵、ダメだよ。最後にアレしなきゃ」

「あっ、せやな。忘れるとこやった。」

ガブっ チュー
伯爵は、気絶した男の首筋に牙を突き立て、血を吸った。

「これで、記憶は消え、そして…洗脳完了。明日からヴァンパイア推しになるはずだ!さあ、コモリ、次だ!」

コモリは、タブレットの地図アプリを見ながら
「伯爵、次はちょっと遠いよ」

「朝までに終わるやろ?夜はまだ始まったばかりや!ほな、いこか!」

伯爵とコモリは、次のターゲットの元へと飛び立った。


そう、
このヴァンパイア伯爵は、毎晩のようにエゴサーチを行い、自分を侮辱する人間を見つけては、恐怖のどん底に突き落とし、血を吸って記憶を操作し、ヴァンパイア信者に変えるという、迷惑極まりない活動を夜な夜な繰り返していたのだ。

だが、ネットの書き込みは後を絶たない。

それでも、何十年、何百年とこの活動を続けているうちに、じわじわとヴァンパイア推しのフォロワーも増えつつあった。

今では、SNSのフォロワーも1500人を超え、あと500人で収益化が見えてきたところだった。

しかし、決定的な欠点があった。

それは、「いいね」の数が少ないということだ。

やはり、自らが操作している事により、意思がついてこないのであった。

だけど伯爵は今日もまた、ディスる書き込みを探しては特定し噛みつき、操作する。


時は流れ、10月末。
街はハロウィンの喧騒に包まれていた。
今年もやはり、鉄板のゾンビのコスプレが圧倒的に多い。

この日、伯爵は過去最高に機嫌が悪かった。

「なんでやー!コイツらほんまアホちゃうか!毎年毎年ゾンビって!」

「伯爵、やっぱりハザードの新台のせいだよ」

「やっぱりか…。ああ、ワシの美意識が全く理解されてへん!バズるには、なんか世にでやんとな」

コモリは、しょんぼりしている伯爵を見て
「大丈夫だよ!伯爵は絶対バズります!!」

「コモリ……お前ってやつは……」

「よっしゃ!ほな今日も、愚民どもに恐怖の再教育に行ってくるか!ビビらしに行こけ」

2人はいつも通りターゲットの元へ向かった。


「伯爵、ここっスよ」

「コモリ、ほんまかぁ~?結構綺麗な家やな。だいたい、ネット民はアパートが多いけど……」

「あっ伯爵、このあたり最近新しい家がたって街の雰囲気が変わってるんだよ。でも、GPSはこの家をさしてるよ」

「まーとりあえず行こか」

2人はGPSが指す家へ向かった。


カラカラ

伯爵とコモリは窓を開けて中に入る。

部屋の中はカーテンが閉め切られ電気も消えて真っ暗だ。

伯爵は、得意げに指を鳴らした。

パチ

すると、伯爵の周囲に、まるで魔法のようにロウソクが現れ、小さな炎が灯った。

伯爵とコモリは驚いた。

「伯爵、、!!あぁ……これは、子供部屋だよ。しかも女の子だね。間違えたかな?」

「コモリ、1つ、いいことを教えといてやろう。例え子供と言っても甘くみるな!むしろ、子供の方が残酷だかんな」

その時だった。

「しーっ、誰かくる」

伯爵はロウソクを消して姿を隠した。

ガチャ

扉が開き、中に人が入ってきた。だが、部屋に灯はつかず真っ暗なままだ。

「コモリ、子供か?何故灯をつけない」

暗闇に目が慣れない伯爵とコモリは、息を潜めて様子をうかがう。

コモリは、小さく首を横に振った。わからない、というジェスチャーだ。

徐々に目が慣れてきた二人。薄暗い中でよく見ると、確かに部屋には小さな子供がいた。 子供は電気をつけず、机の上に置かれた小さなラジオのスイッチを入れた。

部屋にラジオの音が響く。

子供は、そのまま椅子に座り、なにやら絵本のようなものを開き始めた。

「コモリ、あいつ真っ暗の中、何してんだ?そんな年頃?
てか、真っ暗が流行ってんの?」

すると

「誰かいるの?」
と子供が話した。

伯爵は、思わず返事をしかけた。
「伯爵、しーっ!」 コモリが慌てて伯爵の口を塞いだ。

「ね?いるんでしょ?大丈夫だから、出ておいでよ」

「伯爵、どうする?」

「いっそう、出て書き込みしたか聞いてやろう」

「あっ、そこにいたんだ!絵本よんであげるね」
と子供は上を見上げた。

伯爵とコモリは姿を現した。

「おい、貴様…いや、お嬢ちゃん。頭が高いぞ。」
と伯爵は子供の顔みた。

伯爵は、子供の顔を覗き込んだ。 そこにいたのは、想像していたよりもずっと幼い、可愛らしい女の子だった。 伯爵は、思わず声のトーンを落とした。
「あっ…子供や。」

すると女の子の子供は
「……誰なの?妖精さん?どこから来たの?」

伯爵は
「えっ?なんて?妖精?ワシが、こんな恐ろしいヴァンパイアが、か?」 「んなアホな、ヴァンパイア、ヴァンパイア!」

女の子は
「バンバ?」

コモリは
「まだ小さいからわからないんだよ」
と言ってその女の子に近づいた。

「俺はコウモリのコモリ、そしてコレはヴァンパイア、あっ、ドラキュラ」

女の子は、コモリの言葉を一生懸命理解しようとしているようだった。
そして、パッと笑顔になった。
「コモリと…ドラちゃん!」

「コモリ、お前今、コレ言うたな?ドラちゃんって…てか誰がドラちゃんやねん!?ワシ、ポケットから何もでーへんぞ」

女の子は、指をさしながら言った。
「ドラちゃん、コモリ」

「コイツ…俺らの事、全然怖がってへんのか?」

「あー…苦しい…てか、痛い痛い!」
と、伯爵は突然、脇腹を押さえだした。

「……痛い、めっちゃ痛いし」

「伯爵、大丈夫?」

女の子は、その痛がる伯爵の様子を見て、ケラケラと笑っていた。

コモリは、女の子の手に握られているものに気づいた。
「ダメだよ、その鉛筆はなして」

女の子は、手に持った鉛筆で、伯爵の方向に✖️印を描いていた。

そう、ヴァンパイアは実は、 十字架は平気なのだが、「✖️」印には弱いという、弱点を持っていたのだ。

女の子は、言われた通りに鉛筆を離した。 伯爵は、床にうずくまりながら
「はー……痛かった……。てか久々にヤバかったわ。おい!子供、我にむけた態度、どう償う?」

女の子は、不思議そうに首を傾げた。
「ドラちゃん、積み木したいの?」
「ごめんね、積み木ないの。だから、絵本読んで。」
伯爵は、半ば呆れながら言った。
「おい、子供!我が怖くないのか?」

「うん。怖くないよ」

そんなはずはない。不死者の王であるこのワシを!
「我の恐ろしい姿を見ても、何も感じないのか?では、この鋭い牙を見ればどうだ!」

伯爵は、自慢の牙をニッと見せつけた。しかし、女の子は全く動じない。

「このキバが怖くないのか?」

すると女の子は伯爵とコモリにこう言った。

「実はわたし、生まれつき目が見えないの。だから、ドラちゃんもコモリも見えないの」

伯爵とコモリは、言葉を失い、顔を見合わせた。 女の子は、二人の沈黙を感じ取ったのか、クスッと笑った。
「今、まずい事聞いたって顔したでしょ?大丈夫だよ!目は見えてなくてもこうしてお話はできるし、聞こえるから」
「あと、美味しいものも食べれるからね。……でもピーマンは苦手だけど……」
「あと、絵も描ける!!」

伯爵は聞いた。
「娘、今いくつだ?」

「6歳、小学1年だよ」

「名は?」

「あさひ!朝に、日に書くんだよ!」

「…嫌な名だな。」

「あっ、もうこんな時間だ!帰って寝ないと」
「なぁ?コモリ」

それを聞いた朝日は、不満そうに言った。
「えーもう帰るの?私まだ眠たくない。もう少し遊ぼうよ」

「伯爵?どうします?」

「あ~……めっちゃ眠たくなった。だから帰るわ!またな!!……いや、2度会う事ないけど」

伯爵とコモリは、そっと窓の方へ移動しようとした。

「いやだ!もう少し遊ぼう!」

伯爵とコモリは朝日の目が見えない事を逆手にそっと窓から帰ろとした。

「うー…痛い、痛い!」

「伯爵?」

「痛っ…めっちゃ痛い!また、あの鉛筆か!」

再び、脇腹に鋭い痛みが走った。

「ハハハハ!」
無邪気な笑い声が響く。朝日だ。 また、手に持った鉛筆を✖️の形にしているのだ。

伯爵は
「やめろ…その凶器を!」

朝日は、楽しそうに言った。
「じゃあ、もう少し遊んでくれる?」

伯爵は
「い……いやだね」

朝日は✖️にした鉛筆を伯爵に近づけた。

「うわぁ〜ヤバっ!これは、過去イチのピンチかもしれん!」

コモリは、伯爵に耳打ちした。

「伯爵、ここはちょっと遊んで寝かせて帰りましょうよ。子供だからすぐ寝ますって」

伯爵は、少し考え頷いた。
「…わかった。だから、その鉛筆をしまえ。」

朝日は、パッと笑顔になり、鉛筆を机の上に置いた。
「やったー!ありがとう、コモリ!ドラちゃん!」

そんなわけで、伯爵とコモリは朝日が寝るまで遊ぶことになったのだ。


絵本を読み、ゲームをしたりあんなに嫌がっていた伯爵も結構楽しんでいた。

そして、夜が更けていくにつれて、とうとう朝日の小さな瞼が重くなってきた。

「ドラちゃん、コモリ?」

「なんだ?」

「私が寝るまで居てね」

「わかった。わかった。もう鉛筆は嫌だからな」

朝日は、自分の布団にもぐり込み、二人に言った。
「ねぇ、みんなで布団に入ろうよ!」

伯爵とコモリは朝日が寝るのも時間の問題だと思い、言われたとおりに布団に入った。

右に伯爵

左にコモリ

真ん中に朝日

すると、朝日は眠たそうな声で話し始めた。
「わたし、夢を見たいな〜…目が見えないから、どんな夢を見るのか、想像もできないの。ねーコモリ、夢って楽しい?」

「ああ、最高だよ。空を自由に飛び回ったり、美味しいものをたくさん食べたり…」

「おい、コモリ!そんなこと言うなよ!この子は見えないんだぞ!」

「あっ…そっか。」

朝日は、クスッと笑った。
「いいの、いいの。ドラちゃんの楽しい夢の話を聞くと、想像の中で形になって、私も夢が見れそうだから。だから、詳しく教えて」

そんな朝日を見て、伯爵とコモリは、それぞれの楽しい夢の話を語って聞かせた。

朝日は、二人の話に耳を傾けながら、だんだんと眠りにつこうとしていた。
まどろみの中で、朝日は小さな声で言った。

「コモリ…ドラちゃん…今日は、ありがとう…」

それを聞いた伯爵は、突然ガバッと起き上がり、眠りかけていた朝日を揺り起こした。

「おい!まだ寝るな!!」

「んー…もう眠いよ…」

「もう少しだけ頑張れ!コモリ、いいな?」

コモリはうなずいた。

「よし!最後に少し夜空を散歩しよう!」

「えー!?そんなこと出来るの?」

「当たり前だ!ワタシはヴァンパイアだぞ!空を飛ぶくらい、朝飯前だ!」

伯爵はそう言うと、どこからともなくたくさんのコウモリたちを呼び寄せ、朝日を優しく抱き上げ、窓から夜の空へと連れ出した。

「どうだ?楽しいか?」

「うん。風が気持ちいい。お月様の光が、私のまぶたに当たる…温かい」

「あー…お星様、見たいな。いや、違う違う!大丈夫!ありがとう。」

そんな朝日の姿を見た伯爵は、自らの指先をそっと噛み、滲み出た血を小さなグラスに注ぎ、朝日に差し出した。

「のど渇いただろ?ほれ、飲め」

「ありがとう」

朝日は、差し出されたグラスを受け取り、ゴクゴクと飲み干した。
「あー…美味しかった。ごちそうさまでした」

「今、飲んだのはワタシの血だ」

朝日はびっくりした。

「びっくりしたろ?でも大丈夫!病気になったりしないから」

「でだ、朝日!今日、朝日がワタシの血を飲んだ事で明日から
今まで見えなかったことが見えるようになる」

「えっ!?ほんと!?」

「ああ、本当だ。だが、その見えるもの全てが良いものとは限らない。きっと、悪いものや、悲しいものも見るだろう」

「怖いことも…?」

「あぁ、もちろん。でも、それはほんの一瞬だ!」
「朝日が、その名前のように、朝の光のように、強く、優しく育っていけば、きっと良いものだけが見えるようになるさ!」
「とは言え、ワタシは朝日を見た事はないからな」

「ドラちゃんは朝日を見た事ないの?」

「ああ、生まれた時から夜の世界に生きてるからな…見た時ねぇよな!?コモリ!?」

「うん」
(どうして……横浜弁なの?)

「コモリもなんだ。どうして見ないの?見えるのに」

「見えても、見れないこともあるんだよっ!…色々とな。」
「てか、見ると俺たち、消える…みたいなっ!」

「みたいな?見たいの?見える?何それ?」

「まだ、わかんねーなっ!よし、帰ろっか?きっと朝日には素晴らしい世界が見えるさ」

「……すー…すー……」

「って、寝てんのかい!?」

見ると、朝日は伯爵の腕の中で、すっかり眠ってしまっていた。 少しずつ夜が明け始める頃、伯爵とコモリは、眠る朝日をそっと布団の中に送り届けた。


その日の朝。
朝日が目を覚ますと、部屋は明るくなっていた。

「あれ?夢なのかな?いや、違う…昨日のことは、夢じゃない。」

「おーいっ、コモリ?ドラちゃん?あっ、鉛筆、鉛筆」

「ほれ、ドラちゃん!どうだ痛い?」
「おーいっ おーいっ」

朝日は伯爵とコモリの事を大声で叫んでいた。

その声は1階まで響いた。
朝日の叫び声を聞いた、お父さんとお母さんは
びっくりし慌てて2階の朝日の部屋へ向かった。

「朝日、どうしたの?」

すると朝日は扉の方を見てこう言った。

「お母さん、お父さんおはよう」

「朝日、びっくりしたじゃないの」
とお母さんは朝日に近づいた。

すると
「あっ、お母さん口にジャムついてるよ。もー、お父さん、頭ボサボサ」

お母さんの口にはパンのジャムが付いておりお父さんは確かに寝ぐせでボサボサだ。

お母さんは朝日に
「朝日、あなた見えてるの?」

朝日は元気な声で言った。
「うん。見えてるよ!お母さんもお父さんの顔も!!
そして外の朝日も!全部見えてる」

お母さんとお父さんは朝日を抱きしめた。

「お母さんとお父さん泣いてる。悲しいの?」

「悲しくないよ。嬉しいの」

「良かった。ドラちゃんの言う通りだ」

「……ド、ドラちゃん?」

「ううん。なんでもない」

そう、朝日は伯爵の血を飲み目が見えるようになったのだった。


それから半年。

目が見えるようになった朝日は天性の絵心をいかして、絵本を書いた。

【コウモリコモリとドラキューラ】

これは、目の見えない女の子の前に突然現れたコウモリのコモリとドラキューラと朝まで過ごすと言うお話。

小学生が描くにはもの凄くリアリティのある話だったようで、すぐにバズった。

その結果、この絵本は、見事な賞を獲り朝日とドラちゃんとコモリは時の人となった。

それは、伯爵とコモリの耳にも入っていた。


「伯爵、伯爵」

「あの子、やりましたよ」

「やな」

「すごいなぁ〜」

「やな」

「まさか絵心まであるなんて!ね、ね、凄いね?」

「やな」

「伯爵、テンション低いね?嬉しくないの?」

「おい、コモリ……」

「嬉しいわけあるかー!!てか、なんでお前が主役やねん、コラぁぁ!全部やったん、ワシやろがい!」

「黙っといたろ思たけど絵心もワシやからな!あいつは、恩をあだで返す奴や!知らんけど……アイツほんま血吸ったろか!?」

「まぁまぁ、伯爵、落ち着いてって……」

「まぁ、千歩譲って、ドラキューラ言うたとこは認めたるけどな」

コモリはその絵本見て思った。
(うわぁ!ほんとだドラキューラ言うてる……朝日はやっぱり子供だな)

「おいっ、なんか言うたか?」

「……いや、何にも……に、しても伯爵は主人公ですよ」

「これのどこがやねん!いらん慰めはやめてくれ」

「慰めなんかじゃないよ。この間観た怪盗とバナナのお化け
みたいなもんだよ!伯爵がその怪盗で僕はそのバナナ」

「ほ~……それもそうやな」

「……そ、そーだよ」

「……ってか、バナナの方がバズっとるやんけ!」

「あー……なんか腹立ってきた!今日はコイツら片っ端からやったるぞ!コモリ、こいつら、はよ特定せぇ」


この年のハロウィンパーティーはドラキュラとコウモリの仮装が物凄く多く、メディアで取り上げられ

『#ドラキュラちゃうでドラキューラ』

がトレンド入りすることを伯爵とコモリはまだ知る由もなかった。

おわり


あとがき

まさか、人生でヴァンパイアの事を考えるとは
思ってもいなかった。なんだかんだで1.1万文字くらい書いてた。

この物語はドラキュラ伯爵もこんな感じならおもろいかな?と勝手な解釈だ。そう、強面の人みたいだろ?見た目は怖いけど、話すとめっちゃ優しいみたいな……

ネットが普及し、姿形を隠して投稿する。
それを見て傷つく人も少なからずいるのではないか?
伯爵とコモリはそれをターゲットに心ない書き込み者を成敗すると言った、世直しダークヒーローと言う設定にした。

そして、偶然に知り合った1人の少女、朝日。

目の見えない朝日は伯爵の雰囲気で悪い人ではないと本能で感じたのだ。

朝日と遊ぶところ位から正直、ハンターハンター的に囲碁みたいなゲームでもさせようかと思ったが、僕はそれを我慢した。

何が言いたいかと言うと、

『姿、形は見えていても中まで見てますか?いいねだけが欲しいって思ってませんか??』

って事を言いたい。

今、書き込みしてるあなた!されてる側の気持ち見てますか?

心ない書き込み、ドラキュラあっ、違う!ドラキューラが来ますよ。

追伸
ディズニーピクサーお待ちしてます

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