食堂aca 2026.01
はじめに
東京神谷町にあるスペイン料理店、食堂acaに参りました。(前回の投稿はこちらから↓)
実際に食べたもの
おまかせコース(税込16,500円 )を頂きました。
なお、以下写真は増量いただいたものです。

河豚の白子とハモンセラーノ(白豚の生ハム)で作ったスープを、中華麺と合わせて頂きます。
仕上げに生姜の搾り汁、青ネギに胡椒を合わせて。
とろみ掛かった滑らかな口当たりと共に、白子による緩やかな旨味と甘みがゆったり運ばれる。そして、その中にハモンセラーノの存在を確かに感じる。
動物性のまっすぐな旨味に、透明感や穏やかさを相持つハモンセラーノは、別ベクトルの印象を加え、旨味の要素単体においても、決して単調となることがない。
中華麺は茹でた後に、スープと絡める(?)一手順を汲んでいるためか、ふっと鼻を通る香り高さとコシはスープの流れに寄り添っています。
続いて、生姜の爽やかなインパクトがすっと浸透し、胡椒のエッジによって、丸みに輪郭を生む。
最初は「広がり」によって、味わいの全体感が掴まれ、そこから味わいの移ろいと収束に向かう。その流れは非常に滑らかでした。

鰤の腹身を、近火の火入れと休ませる工程を短い間隔で繰り返す。
それによって、皮目はパリッと鮮やか、身は的確に熱が通ることで活き活きとした筋膜を感じつつ蕩ける。
ふくよかな脂からは、ピュアな甘みと潤沢なミネラルが鮮明。咀嚼と共に、炭火の香りに野菜のシェリーワインビネガーマリネが入ってくることで、その身質の厚みと存在感に反して清々しい印象を受けました。

サロマ湖は海水と淡水の混じり合う水質のため、ミネラルが豊富。そこで育つ牡蠣は、ただ旨味が濃厚なだけでなく、複雑性と奥深さを感じます。
衣は少し粗さを残した粒度であり、咀嚼の前後で小刻みに香りと食感のアクセントが加わります。
タルタルソースは卵のコクによるぽってり感。
一方で、ピクルスとディルによって、酸と清涼感の要素が強く感じられ、バランサー役を担っています。

ちなみに、こちらが11月に頂いたボカディージョ。
仕立ては同じですが、今回よりもピクルスの割合は少なく、小さく刻んでいたため、清涼感よりもニンニクによるパンチがアクセントとしてより働いていた印象を受けました。

アホ・ブランコは、ニンニクとアーモンドで作るスープ。今回は、ペースト状にして、柔らかく煮た蕪に乗せて。
口に含んだ時にぽてっとした質感と球体を帯びた重量。しかし直後に、ふっと浮かぶように軽くなり、まるでヴェールのようにシルキーに伸びていく。
ニンニクの旨味とアーモンドの香りに、瑞々しい蕪のジュースが流れ込んでくる。
レモンの皮は爽やかさだけでなく甘みもあり、心地良い余韻を形成します。

鶏の手羽先を薄衣で唐揚げとし、スパイスを纏わせます。
衣は辛味ではなく、旨味や甘みが複合的に絡み合う。そのインパクトはただ放たれるのではなく、後へとバトンを繋ぎます。
続けて現れる鶏は保水性が高く、純粋なエキスが淀みなく運ばれます。

酵母作りから始まる自家製パンは、葡萄の木で燻製させたバターを塗って供されます。
高加水パンのようなもっちりとおおらかな弾力と、小麦の豊かな香りと甘み。
燻製バターによる、ワインを彷彿とさせる樽っぽい香りと奥深さが浸透します。

通常、エスカベッシェは魚を揚げた後に、マリネ液に浸け込む工程を挟みますが、こちらは揚げたてに仕上げとしてマリネ液と合わせてのご提供。
サクッと空気を含んだ衣は、細やかながらも「一太刀を入れる」ような存在感を放つ。
対照的に、かますはふわっふわっと、まるで上昇気流に乗るよう。細く繊維が解れ舞う様子が窺えますが、同時に保水性があり繊維の存在感自体は控えめ。
林檎と蕪(?)のマリネも作りたて。
シャリシャリとした食感とまっすぐな瑞々しさが、心地良いアクセントです。

イチボは火力や木材を変えながら、ゆっくりと火入れ。
最初は遠火でゆっくりと中心部まで温度を戻していき、近火で炭火焼き、仕上げに木材を葡萄の木に変えていました。
第一印象として活きの良い弾みを感じながらも、抵抗なく自然と歯が入っていく。
そこからじゅんわりと現れるエキスと脂は、肥育日数が多いためか、穏やかであり、互いに溶け合い一つとして感じられます。
そこへ少し雄々しさを残した炭火、葡萄の奥ゆかしい鮮やかさがアクセントとなり、咀嚼を繰り返しながら豊かな味わいを生みます。
付け合わせとして供された天恵菇(てんけいこ)は、徳島県産のブランド椎茸です。
その肉厚な食感は、茸固有の繊維感はほとんど感じられず、まるでお肉のような解れ。
そして、香り高く滋味濃さが鮮明な一方、野暮ったさがなくて透き通っている。
イチボと天恵菇、それぞれ固有の色を放ちつつ、決してバッティングすることなく、一皿としてのバランスが取れていたことも印象的でした。

京都産の松葉蟹は、漁場で茹でていただいてから直接仕入れられています。(豊洲で仕入れる場合はお店で茹でる等、分けていらっしゃるそう)
その身は水分量が多く、ピュアで淑やかな甘みはするするとせせらぎのように入ってきます。
パエリアには、蟹丸ごと濃縮した旨味と甘みが染もる一方、決して雑味はなく朗らかな印象。

鴨肉と5種類の茸を使用したパエリア。
鴨肉には、食感と味わいの両観点で活きの良さ、雄々しさを感じられる。
キノコの芳醇な香りと旨味、さらには胡椒のアクセントを受け、野性味の観点からリンクした複合的で果敢な味わいを出している印象を受けました。

ヤギのミルクで作ったアイスは、滑らかな口当たりは勿論、何よりも印象的だったのは、そのミルク感。
純粋に濃厚な乳感ではなく、爽やかな草原の面影をの伴ったミルク感で、ふっと風が吹くように消えてしまう。
紅はるかは火入れの後に、皮を剥いてから揚げ焼きに。
低温と高温の2度火入れし、一度冷凍することで繊維を分解させる。当日に冷凍した芋を半日かけてゆっくり解凍することで、しっとり滑らかな質感とふわっとした解れを併せ持つ。
仕上げの揚げ焼きでは、皮を外した深部に対してキャラメリゼされることで、黒糖を彷彿とさせるミネラル感のあるほろ苦さが生まれる。
お値段
コース(2人前)、少なめのワインペアリング、食後酒×1で、計47, 410円/1名でした。
まとめ
スペイン料理という源流を汲みながらも、食材視点を伴った技法・料理の仕立てを終始一貫感じられました。
それ故、単なる滋味深さ・豊かさを越えて、季節感と土地柄を映し出した味わいが形成されていました。
タケノコや鮎や秋刀魚を始め、これから来る日本の旬の表現方法に胸が弾みます。
また季節を変えて訪問したいです。
