『魔女の野望』 #せりふ三題噺
魔法使いの彼女が、なんだか緊張気味だ。いつもは僕の前を元気に歩いたり、空を飛んだりしているのに、今日は僕のシャツの肘あたりを摘んでついてくる。
「そんなに緊張する事ないのに」と言うと、人間の僕には分からないのだと不満気だ。
目的地に着く。
店内は、読書してる人、仕事してる人、勉強してる人、それに昼寝してる人もいる。
「ほら、こんな感じだよ」と言っても、カウンターを凝視する彼女に僕の言葉は届かない。
……何やらメモを見ている。
『・・をソイミルクに変更・・エスプレッソを2ショット追加・・モカシロップ少なめ……』
程よく、カウンターの客がいなくなった。
「やるなら今だよ」
声をかけると、こちらを見て口をギュッと閉じて頷いた。
カウンターの前に立ち、彼女が小さく口を開く。
「………アイスコーヒーを、一番小さいサイズで」
―――
桜並木の下、二人でアイスコーヒーを飲む。人混みが苦手な彼女との花見は、葉桜の季節になった。
彼女が「あーあ、もう」とか言いながら魔法で僕らの周りだけ満開の桜に変えていく。
人間の呪文より、ずっと素敵な魔法だ。
(了)
※下記、はらとけい様の企画に参加させて頂きました。
#せりふ三題噺
#アイスコーヒー葉桜昼寝
■セリフ
「やるなら今だよ」
■三題
・アイスコーヒー
・葉桜
・昼
