『こふんしょう、ふふんしょう、花粉症』 #毎週ショートショートnote
花粉症の人には悪いけれど、この季節はありがたい。花粉症じゃない僕も、何でも花粉症の“せい”にできるのだ。
朝、ひげ剃りが面倒。昨夜の飲み過ぎの息も気になる。でもマスク着用、モゴモゴ喋りで全部解決だ。
昼食後の眠気や、会議中ぼーっとしてしまった時も、こめかみを押さえてマスク越しに深刻な顔をすればいい。
「花粉症ですか? 辛いですよね」
と声をかけられれば、これで完璧だ。
そんな調子でダラダラ仕事をしたせいで、帰りが遅くなった。でも彼女との約束に遅れても、これで大丈夫なはず。
「おぐれでごべん」
言った瞬間、彼女はいきなりマスクを剥ぎ取り、僕の頬を片手でむにっと挟む。
「どうしたの?」
「……ふふんしょう」
今度は両手で両頬をぐいっと引っ張られる
「なんだって?」
「……こふんしょう」
手を離し腕組みする彼女。
「違うでしょ」
……「遅れてごめんなさい」
彼女には通じない。
一足早く、僕の花粉症の季節が終わった。
(了)
※下記、毎週ショートショートnoteの企画に参加させて頂きました。
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