『好き化粧 〜彼女のアイメイク〜 』#毎週ショートショートnote
学校からの帰り道、クラスメイトの彼女は元気がない。大学受験も近いし、疲れてるのかな。「大丈夫?」と聞くと、「聞いてくれる?」と真顔で見てくる。
「今まで黙ってたんだけど……実はね、私ね、半魚人なんだ」
そうだったのか。知らなかったよ。今まで気づかずにゴメンね。あぁ、放課後に回転寿司に誘ったから気分を害したのかもしれない。
「ファミレスとかにする?」と聞くと、「それは関係ないよ」と笑った。今まで黙っていたことを気にしているらしい。
でも見た目は普通の女の子だ。彼女が言うには、見えている顔や手足は人間で、服の下の胴体だけが魚らしい。
「今は多様性の世の中だし、気にすることないよ」そう言うと、「ありがとう」と嬉しそう。そして彼女が「目、変じゃない?」と顔を近づけてくる。かわいいアイメイクをした、魅力的な目だ。
「この前、授業中に居眠りしてたら、死んだ魚の目みたいになってるぞって言われたんだ」と彼女。それがショックで、アイメイクをするようになったらしい。なるほど。彼女のアイメイクには、そんな理由があったんだ。
死んだ魚の目なんて、とんでもない。世界一素敵な、生きている半魚人の目だ。そのメイクも、その目も僕は大好きだよ。
(了)
※下記、毎週ショートショートnoteの企画に参加させて頂きました。
#毎週ショートショートnote
#雪和尚
#好き化粧
