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岩から現れた神々の彫刻!インドの世界遺産エローラ石窟群とは【記事を書かせていただきました!】【文化】

※本記事は、以前にオウンドメディア様に掲載いただいた記事です。ご許可をいただき、オウンドメディア様による編集前の原稿段階の内容を紹介するものです(図を補足しています)。

エローラ石窟群って何?

エローラ石窟でも最大の偉観、カイラーサナータ寺院
By Krishsa, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=123592088

世界でも比類なき美しさと壮大さを誇る石窟群、エローラ石窟群をご存じでしょうか?

エローラ石窟群とは、デカン高原の岸壁約2kmにわたり34もの石窟が削り出されているインドの世界遺産です。ムンバイの北東約380kmの場所にあり、地域の中心都市オーランガバードから約30km離れた村エローラにあります。

インドにおけるエローラの位置
古代にはエローラプラムとよばれていた
By Crop/edit: UploaderOriginal: File:WorldMap ja.pngOriginal data: UNEP GRID data GNV19, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=107374403

最大の見どころカイラーサナータ寺院をはじめ、おびただしい数の彫刻に彩られた石窟群は、まるで神々の宮殿

そして不思議なことに、ここには3つの宗教の寺院が共存しているのです。

インドで発展した石窟寺院とは

エローラ石窟群
断崖におびただしい数の石窟が穿たれている
By Vinayaraj, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=155442039

石窟とは、岩を削って掘られた人工の洞窟のこと。インドには特に多くの石窟があります。なぜでしょうか?

インド内陸部にはデカン高原が広がり、岩山が豊富にあるうえに、乾燥した気候も石窟の保存に適していたのです。

デカン高原は白亜紀末期(6600万年前)の火山噴火で流れ出た溶岩によってできた
By Nicholas (Nichalp) , https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1806702

さらに、インドではさまざまな宗教が花開き、社会で重要な存在となりました。もともと石窟は宗教と関わりが深く、自然の洞窟に住んでいた修行僧が代わりに石窟を掘るようになったのが始まりと考えられます。

インドの自然と文化。その両方が、石窟寺院を発展させたのです。

3つの宗教の寺院群が集まる遺跡

エローラ石窟群には、奇妙な特徴があります。なんと、異なる3つの宗教、仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教の寺院が共存しているのです! 

最初に、5世紀~7世紀にかけて仏教石窟が造られました。南東にある古い石窟から北西に向かって新しい石窟が築かれていったのです。

エローラ石窟群の地図
岩山(色が濃い部分)の壁面に34の石窟が彫られている
1~12が仏教、13~29がヒンドゥー教、30~34がジャイナ教
By Gatis Pāvils - http://www.wondermondo.com/Countries/As/India/Maharashtra/Ellora.htm, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=9796513

7世紀からはヒンドゥー教寺院の建設が始まり、位置も直前の仏教石窟に隣接しています。

最後に築かれたのが、8世紀~10世紀にかけてのジャイナ教石窟です。

信仰の異なる人々が同じ地域で活動し、時には同じ時代に文化や技術を共有し、引き継ぐ。こんな不思議なことが起きたのは、宗教に対する寛容性が高いインドならではのことと考えられます。

インド三大石窟の一つ

インド三大石窟とは、エローラ石窟群、アジャンター石窟群、エレファンタ石窟群の3つ。インドにある無数の石窟寺院でも、三大石窟は別格に重要とされているのです。

日本の仏教美術にとっても源流にあたるアジャンター石窟群
後期の石窟はエローラの仏教石窟とも建造年代が重なる
By Photo Dharma from Sadao, Thailand - 041 Cave 2, Main Shrine and Ceilin, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=58409514

アジャンター石窟群は仏教の石窟群で、エローラ石窟群から近いのでよくセットで観光されます。

エレファンタ石窟群はムンバイ沖のエレファンタ島にある、ヒンドゥー教の石窟群です。

エレファンタ石窟群の彫像
ヒンドゥー教の神シヴァと女神パールヴァティーが一体化した姿
By Ricardo Martins - originally posted to Flickr as Shiva @ Elephanta Caves, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=9377669

 三大石窟は、すべてユネスコ世界遺産に登録されています。

石窟群の中で最も古い「仏教石窟」

エローラに最初に石窟寺院を築いたのは、仏教徒たちです。石窟群の南東の端にある第1窟~第12窟は仏教石窟で、5~7世紀にかけて築かれました。

第1窟の周辺
By Anjan Kumar Kundu, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=165996106

日本人にもなじみの深い、仏教。インドで釈迦が始めたことは、皆さんご存じですね!

釈迦は紀元前6世紀前後の人物と考えられています。仏教は古代インドで支配的な宗教になりましたが、7世紀以降はヒンドゥー教やイスラム教が広まるにつれて徐々に衰退しました。

エローラ石窟群の仏教から他宗教への移り変わりは、仏教の盛衰を反映しているのです。

仏教石窟には、大きくヴィハーラ窟とチャイティヤ窟の2種類があります。

ヴィハーラ窟とは、僧侶が生活をする場所、つまり僧院で、修行や瞑想も行われました。

ヴィラーハ窟は礼拝堂を備えた僧院(僧侶の生活の場)
写真は第11窟のヴィラーハで、回廊の奥に仏像が見える
By © Vyacheslav Argenberg / http://www.vascoplanet.com/, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=97155498

チャイティヤ窟とは、ストゥーパつまり仏塔をまつる礼拝堂です。

仏教石窟の変遷が刻まれたヴィシュヴァカルマ窟

エローラの仏教石窟の白眉、第10窟(ヴィシュヴァカルマ窟)
By Pramod Karale, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=49277836

仏教石窟で特に見どころなのが、第10窟のヴィシュヴァカルマ窟。エローラの仏教寺院の中でも後期の石窟で、奥に巨大なストゥーパが据えられたチャイティヤ窟です。

ストゥーパの前には仏像が鎮座しています。この仏像の配置には、実は仏教寺院の変遷を表す重要な情報が隠されているのです。

第10窟(ヴィシュヴァカルマ窟)の内部
仏像の背後に巨大なストゥーパが建っている
By Anjan Kumar Kundu, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=166083638

初期の仏教石窟では、仏像は石窟の奥に置かれていました。時代が進むにつれて仏像の存在感が増し、ストゥーパを背にして中央に近いホールに置かれるようになったのです。

また、ヴィシュヴァカルマ窟は大工の石窟とも呼ばれ、木造建築を模した天井や装飾の豪華さが際立っています。

第10窟(ヴィシュヴァカルマ窟)入り口のファサード部分
By Benjamín Preciado, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=20829970

エローラの仏教石窟では、時代が進むにつれて仏像や装飾の重要性が増していった変遷を見ることができるのです。

石窟群の中で最大「ヒンドゥー教石窟」

第13窟~第29窟は、7世紀~9世紀のヒンドゥー教寺院です。

第13窟と第14窟
By Vinayaraj, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=155427816

ヒンドゥー教は4世紀頃にバラモン教から発展する形で確立し、急速にインドに広まりました。現在でもインドの人口の80%以上がヒンドゥー教徒です。

日本でも、インド料理店などでシヴァやガネーシャといった神々に触れる機会も多いのではないでしょうか?実は多くのヒンドゥー教の神々は、仏教を通じて日本人にもなじみ深い存在なのです。

例えばヒンドゥー教の最高神の一柱であるシヴァ神は、密教の守護神マハーカーラ(大黒天)となり、さらに日本では七福神の大黒様として大人気の神様になりました。

(左上)悪魔を踏みつけるシヴァ神
(右上)チベット仏教の織物に描かれたマハーカーラ
(左下)真言密教における大黒天 (摩訶迦羅)
(右下)川鍋暁斎(幕末~明治に活躍した絵師)が描いた大黒天

他にも、弁財天、吉祥天といった女神や十二神将など、多くの仏法の守護神が、もとはヒンドゥー教の神々です。日本人は、ずっと昔からヒンドゥー教の神々に親しんでいたのですね!

エローラのヒンドゥー教寺院は、神々を描いた彫刻に彩られています。ヒンドゥー教の神話が壁に刻まれ、あたかも天上の世界に迷い込んだかのよう。シヴァ神がそこかしこに恐ろしい姿や踊る姿でダイナミックに描かれ、その妻の女神パールヴァティも優美な姿を披露します。

ヒンドゥーの神々(第21窟)
By Vinayaraj, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=155435171

そしてこれらのヒンドゥー教石窟のうちの一つが、エローラ石窟群で最大の寺院にしてクライマックス、カイラーサナータ寺院です。

エローラ石窟群のハイライト!神の山カイラーサナータ寺院

第16窟(カイラーサナータ寺院)
CC BY-SA 4.0, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=62729461

カイラーサナータ寺院とは、第16窟にあたるヒンドゥー教寺院で、その存在感はエローラ石窟群でも別格です。 

幅約45m、奥行き約85m、高さ約32mにも及ぶ巨大寺院は、まさに圧巻!

実際にカイラーサナータ寺院の前に立てば、圧倒的な質量感と建物を埋め尽くす彫刻の神々しさに、言葉を失うことになるでしょう。 

画面に収まりきらない、カイラーサナータ寺院の地上からの眺め
外壁も内部も彫刻で埋め尽くされている
By Torchtelangana, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=137782316

しかしその威容も、カイラーサナータ寺院のすごさの表面にすぎません。この巨大寺院はなんと、すべて人の手によって岩山から削り出されたのです。

カイラーサナータ寺院は、8世紀にラーシュトラクータ朝のクリシュナ1世により、シヴァ神が住むカイラス山を模して建造されました。100年以上かけて削り取られた岩山は、実に300万立方mに及びます。

削られた岩石の質量に戦慄する、カイラーサナータ寺院背後からの眺め
By Torchtelangana, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=137782426

岩を穿ちこれほどの荘厳な神殿を造りあげた人々の情熱に、胸を打たれずにはいられません。

緻密な彫刻が光る「ジャイナ教石窟」

石窟群の北西の端に、比較的新しい第30窟~第34窟があります。9~10世紀にかけて造られたジャイナ教の寺院です。 

第30窟
By Pratyk321, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=131881243

ジャイナ教については、よく知らない方が多いのではないでしょうか?

ジャイナ教とは、釈迦と同時代のマハーヴィーラによって始められ、徹底した苦行によって悟りに至ろうとする宗教です。インドで主流の宗教になったことはありませんが、現在でもインドの人口の0.4%はジャイナ教信者です。

ジャイナ教石窟の彫刻(第33窟)
By Pratyk321, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=131881466

ジャイナ教石窟では、緻密な彫刻に目を見張ることになるでしょう。柱は優美な女神が、天井は見事な蓮の花が彩り、彫刻の美しさはヒンドゥー教石窟を凌駕するとされます。

特に第32窟はチョーターカイラーサ(小カイラーサ)とも呼ばれ、ヒンドゥー教のカイラーサナータ寺院と同じように一枚岩から削り出された見事な建造物です。

第32窟(チョーターカイラーサ)
By Vengolis, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=73146226

ジャイナ教石窟でまつられている人物像の多くは、全裸で動きのない姿をしています。建物の装飾は豪勢なのに、なぜ人物は質素なのでしょうか?

これは、ジャイナ教の開祖や聖者たちが物を持たないことを理想としたためです。

周囲の装飾の豪華さに比べて人物は質素に表現されている(第34窟)
By Ronakshah1990, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=51925360

豪華な彫刻と簡素な人物像の共鳴が、石窟に満ちる精神の静寂を際立たせます。 

エローラ石窟群が世界遺産に選ばれた理由

第16窟(カイラーサナータ寺院)を中庭から見上げる
By Rohit14400, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=153390308

1983年に世界遺産に登録された、エローラ石窟群。 

ユネスコでは世界遺産の登録条件として10項目の登録基準を定めています。世界遺産に登録されるには、少なくとも1つ以上の基準を満たさなくてはなりません。そしてエローラ石窟群は、基準を3つも満たしているのです!

一枚岩から造られた石窟寺院の集合体であるエローラ石窟群は精緻な彫刻が施され、特にカイラーサナータ寺院は単一の岩盤から造られた世界最大級の石窟寺院です。このことが「人間の創造的才能を表す傑作である」という基準を満たします。

カイラーサナータ寺院内部の一室
この空間も人の手により岩盤をくり抜いてつくられた
By Vinayaraj, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=155479638

3つの宗教が共存したエローラ石窟群は、各宗教の信仰や様式を伝え、宗教に対する寛容の精神を示す、世界でも希少な遺跡です。このことが「現存するか消滅しているかにかかわらず、ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である」という基準を満たします。

エローラ石窟群は、単なる遺跡ではありません。古代から各時代の信仰や宗教文化が受け継がれ、今なお多くのヒンドゥー教徒にとって巡礼地となっています。このことが「歴史上の重要な段階を物語る建築物、その集合体、科学技術の集合体、あるいは景観を代表する顕著な見本である」という基準を満たします。

カイラーサナータ寺院の外壁
ヒンドゥー教の聖典ラーマーヤナの物語が刻まれている
By Vinayaraj, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=155455656

3つの基準を満たすエローラ石窟群は、世界遺産のなかでも高い評価なのです。

アクセスには空港からタクシーの利用がおすすめ

エローラ石窟群へは、ムンバイの東約350kmにあるオーランガバードからアクセスします。

オーランガバード空港
小さな地方空港だが重要な観光拠点となっている
By Vmahendra, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=47536149

オーランガバード空港は日本からの直行便はなく、ムンバイやデリーで国内線に乗り換えなければなりません。国内線の本数は各社1日1~2便しかないので、待ち時間には要注意です。

エローラは空港から約40kmの場所にあり、途中、空港から約10kmの場所にオーランガバードの中心街があります。

オーランガバード中心部
Kounosu, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5932213による

オーランガバードはアジャンター石窟群の観光拠点でもあり、観光客が多く訪れる街です。大都市と比べると、外国人がトラブルに巻き込まれにくいことで知られます。とはいえ、スリや置き引きに注意するなど、最低限の安全対策は必要です。

タクシーやオートリキシャーの料金も、外国人が割高な請求されることが少なくありません。これらの料金はそもそも交渉で決まることが多く、割高なのか見分けにくい面もあります。メーター付きのタクシーでも、実際には多くの場合で交渉をもちかけられるでしょう。

インドで便利なオートリキシャー
By Muhammad Mahdi Karim, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=9757100

料金の相場を知っておくことと、乗る前に料金を決めておくことが重要です。ただ、インドではインフレが進行しており、適正相場も変化する可能性があります。できれば料金交渉の前に現地の人から適正相場の情報を得ておくと、交渉で有利でしょう。

オーランガバードからエローラまでローカルバスも運行していますが、多くの場合、地元の乗客で非常に混み合います。インド特有の豪華な装飾のバスは一見の価値がありますが、よほど現地慣れした方でなければ乗るのは避ける方がよいでしょう。

近年、都市部では減少している装飾バス
(写真は別地域ですが、筆者がオーランガバードに行った際もこんな感じの派手なバスに屋根まですし詰めで地元の人たちが乗ってました)
By John Hill, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=175004

オーランガバードに寄る必要がなければ、タクシーで直接空港からエローラ石窟群に向かうのがおすすめです。交渉などの手間を省きたい場合は、あらかじめチャータータクシーを手配しておく選択肢もあります。

ツアーに参加するのもよいでしょう。世界遺産のエローラ石窟群は各旅行社のプランも充実しており、移動はお任せの場合も少なくありません。

情熱と歴史が交錯する、石窟寺院の最高峰

インドの世界遺産、エローラ石窟群は、仏教・ヒンドゥー教・ジャイナ教の寺院が共存する壮大な遺跡です。

人々の情熱は岩山を削り、無数の彫刻を刻み、天上の世界を地上に現出させました。それ以上に、異なる宗教が同じ場所・技術を共有し継承した石窟群のあり方こそが、独特の文化が築き上げた奇跡といえます。

エローラ石窟群を訪れ、悠久の歴史と豊潤な精神が織りなす美の神髄に浸ってはいかがでしょうか。 

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