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風呂と、こだわりカレー

 学生寮では休日に風呂を沸かしてくれなかったから、日曜祝日は夕方になると銭湯へ行った。
 日曜の夕方はちびまる子ちゃんとサザエさんを観ながらのんびりしたかったが、この時間に風呂へ行っておかなければ、後になると億劫だし風呂屋もスーパー銭湯ではなく普通の風呂屋なのでそう遅くまでやっていない。だからいつも心を鬼にして、夕方に銭湯へ行った。
 大体、早めに行って帰った後でサザエさんを観るか、あるいはちびまる子ちゃんを観てから行くかのどちらかで、自分はあんまり早く風呂に入ると落ち着かないから後のパターンが多かった。

 寮を出て独り暮らしを始めると、ちびまる子ちゃんとサザエさんをどちらも観られることにまず感心した。こんなことがあっていいのかと、随分幸せな心持ちがした。
 そうしてサザエさんを見た後で、誰も食事の用意をしてくれないことに気が付いて、近くのコンビニで鍋焼きうどんを買って来た。アルミホイルの器に入っている、自分で加熱調理するものだった。
 弁当を買って温めてもらう方がよほど早いのに、わざわざ鍋焼きうどんを選んだ理由は何だったろうかと考えたけれど、今となってはもうわからない。
 それをワンルームアパートのクッキングヒーターで作って食べたのが、本当の意味で独り暮らしの初めである。うどんは不味くはないかったけれど、特に美味くもないようだった。

 それから段々自分で米を炊き、たまごを焼いたり肉を炒めたりするようになった。
 一度、インスタントラーメンを二袋用意して、替玉をやるつもりでスープに新しい麺を入れて煮てみたら、随分どろどろのスープになった。
 まるで天一みたいだと思って食べたけれど、あんまり美味くはなかったと思う。さすがに身体に悪そうだからそれぎりよした。
 カレーもよく作った。最初は箱に書いてある通りにやっていたのが、その内につまらなく感じられて来たので、何かを加えてアレンジしようと考えた。
 もっとも、何かと云ったってキッチンには醤油があるばかりである。カレーに醤油を入れてどうなるものかはわからない。ウスターソースをカレーにかける人はあるけれど、醤油をかける人は見たことがない。それなら自分で試してみればいい。それも単にかけるのでなく、作る段階で混ぜてしまうのだからプロっぽい。
 美味くできたら学校で佐藤らに自慢してやるつもりで、ルーを溶かす前に醤油をおたま一杯分入れてやった。
 それで出来上がったのをわくわくしながら食べてみたら、どうも甚だ普通である。どこにも変わった様子はなく、醤油の存在は一向感じない。
 これでは自慢ができないので、何だかじりじりした。

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