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タオルじいさん

 小学校で二度ばかり学級委員をやった。四年生と六年生で、どちらも三学期である。
 もうあんまり判然しないが、四年生の時は立候補者が誰もなく、「まだやったことのない人、誰か」と高橋先生が呼びかける中で、ふっとそういう気になったのではなかったかと思う。
 学級委員になるとバッジがもらえる。桜花の形で、紺色にキラキラ光る。表に「学級委員」と書いてある。
 このバッジは、くれるばかりで着け方や着ける位置の指定はない。本当は指定したくても、しようがなかったのではないかと思う。バッジは裏から小さな円盤状のパーツをくるくる回して留めるタイプで、小学校の基準服にはそういうのを着けられるようなバッジ穴がなかった。
 自分がどうやって着けたかは一向覚えないが、毎日松岡や中田と揉みくちゃになって遊んでいて、任期が終わる頃にはバッジもぼろぼろになった。

 六年生の時は、三学期に最後の学級委員をやると何だか記念品をもらえるらしいと吉田が云うので立候補した。
 他の時には何もないのに、六年の三学期だけがそんなではどうも不公平なようだから、本当にもらえるのか試してやろうと思った。
 もっともそれは表向きの理由で、本当は先に決まった女子学級委員が当時自分の好きな子だったせいである。
 この時も他に立候補がなかったが、信任投票に入る直前、林田が「やっぱり俺も」と手を挙げた。余計なことをするやつだと、じりじりしたが、結局自分が大差で勝った。

 近頃、交差点で手を振るおじさんがある。名前を染め抜いた幟を立て、満面の笑みである。道行く人、通りかかる車、全部に手を振っている。
 どうも気持ちが悪いと思ったら、市議会議員選挙に立候補している人らしい。演説をするでもなく、ただにやにやしながら手を振るだけで、全体何になるかは甚だ疑問だが、ことによるとただ名前と顔を知っているだけで投票するような人もあるのだろう。
 手を振られると、振り返さなければ悪いような気がする。しかしこんなニヤけたおじさんに振り返すのは業腹だから、いつも無視をする。もっとも、いくらにやけたおじさんでも、目が合って無視をするのは気分が悪い。だから目が合わないよう視線を躱して無視をする。このように余計な手間をかけさせる者には、票など到底やれるものではない。
 そう思ったところへ、白いタオルを口から垂らしたじいさんが現れた。じいさんはタオルをぶらぶらさせながら、ニヤけおじさんの後ろを歩いて通り過ぎた。


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