日当たりの好い部屋
ある時、母方の祖父母の家へ行った。
当時自分は三歳だった。広間で父と決闘ごっこをするつもりでいたら、そこへお客がやって来た。
お客は知らないおじさんである。祖父母でなく、父と母を訪ねて来たらしい。父と母は広間で応対した。
自分の決闘ごっこはお預けを食った形だが、こちらはお客がいたって構わない。そのつもりで広間へ入ろうとすると、祖母に「裕ちゃん、今お父さんは大事なお話をしてるんだから待ちなさい」と止められた。
「裕ちゃんのおうちを、建てるのだからねぇ」
そんなことを云われたけれど、こちらはそれより決闘ごっこをしたいばかりである。
広間に入ると、父と母とおじさんが座卓の上に紙を広げて何やら話している。
自分は父にじゃれついたが、父は「あっちへ行ってなさい」と云ったきり、紙を見ながらおじさんと話している。
きっとこの紙があるからいけないのだろう。自分は手を伸ばして、それをぐしゃりと丸めた。
「あ!」
「あ!」
「こら!」
自分は母に部屋から連れ出された。
「駄目よ。裕ちゃんのおうちを作るお話なんだからねぇ」と祖母がまた云った。
自分が握り潰したのは家の図面だった。父方の祖父母の家へ二階を増築し、そこへ自分たちが住むことになっていたのである。既に着工した後で何だかトラブルがあり、それで建築業者が出先までわざわざ訪れて来たのだろう。
出来上がった家は狭かったが、日当たりは好かった。南向きの部屋に寝転がり、ぽかぽかしながら外から聞こえる子供の声を聞いていると、随分平和な心持ちがした。
窓の向かいには、ヨシコさんが住んでいた。
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