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解剖おばさん

 墓参りの帰り、昼を回ったのでファミリーレストランに寄った。
 店内へ入るとレジ前に随分な人だかりができている。みんなどうやら席が空くのを待っているのである。
 並んで待つのは面倒だけれど、他の店を探すのはもっと面倒だ。しようがないから丹田に力を入れて我慢しながら待っていると、存外スルスル案内され、すぐに順番が回って来た。

 通された席は窓際の奥だった。隣の席から年配女性二人の賑やかな会話が聞こえて来る。
「そうなのよ。それでねぇ、あたしもそれは困るって云ったんよ」
「云ったんね?」
「そうなんよ」
「そうしたら、ヨシオさんは何て?」
「それはどうしようもないから我慢してください、って」
「うそぉ? そんなこと云ったんね?」
 甚だ大きな声である。母が呆れたような顔をして、「……大きな声で喋るわねぇ」 と小声で言った。
「そうなんよ」
「それでどうしたん?」
「殺したわ」
「そりゃぁそうじゃろうねぇ」
 随分物騒な話になった。振り返っても、高い衝立で隣の様子は見えない。ただ声が聞こえるばかりである。
「麻酔で動けんようにしといてねぇ、ピンで留めてお腹開いて、そのまんまにしとったら死んだわ」
「そりゃぁ死ぬじゃろう」
「ほいでもう一人、ヤスオさんの方はねぇ……」
 本当の話だろうか。気になっていけないから、ドリンクバーへ行くついでに隣の席をチラ見したら、どういうわけかそこには誰もいない。ただ汚れた食器が残っているばかりなのである。
 自分はそういうことかと得心した。そうして、待ち客はまだ大勢いるのだから、早く片付けたらいいと思った。

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百裕(ひゃく・ひろし) よかったらコーヒーを奢ってください。ブレンドでいいです。