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駄菓子屋とエレキング

 大学に入ってしばらくは学内に友達があまりいなかったが、寮の方で上手くやっていたので別段不自由はなかった。
 ところが夏に入って、寮の交友関係に軋みが出て来た。その辺りのことは前にも書いたので、ここでは繰り返さない。

 夏休み明けに、中国語の授業の後で安田君が「学祭の準備をやるから手伝える人はよろしく!」と大きな声をした。
 自分は通常こういうことには首を突っ込まないのだけれど、安田君は自分の前の席である。目の前でそう云うのを無視して去るのは、幾分悪いように思われる。じゃぁ、手伝おうかと名乗り出た。
 安田君は「おお、ありがとう」と大いに感謝の様子で、自分を早速アジトへ案内した。

 案内された先は、学生控室の片隅だった。そこが国文学科の学祭実行委員アジトなのである。
「百君が来てくれたよ」と安田君が言い、
「おお、百君、よく来てくれた」とダニエルがニヤニヤした。「俺らは今度の学祭で、昔懐かしい駄菓子屋をやろうと思っているのだよ」
 その日はそのままダニエルとイワノフと大野と一緒に電車に乗り、どこかの市場へ買い出しに行った。
 自分は大阪の菓子問屋の場所なんて知らないので、彼らに云われる通りに切符を買って同じ駅で降りた。どこへ行ったか一向覚えがないが、南の方へ行ったのは間違いない。恐らく松屋町筋あたりへ行ったものだろう。
 駄菓子の他、何か懐かしい物も買って飾っておくと云うので、自分はエレキングのソフビ人形を選んで籠に入れた。このエレキングは学祭の後で貰い受け、今でも机に飾ってある。
 その日は現地で解散し、自分は阪急電車で寮まで帰った。

 学園祭の当日は、メンバーの宮田が高校時代の短ランを着て来た。その意図は一向判然しなかったが、恐らく当人が着たかっただけだろう。
 それからイワノフが素肌に革ジャンを羽織り、ピアスを着けて現れた。
「何だい、その格好は?」と問うてやると、
「何ね、ハードゲイのコスプレをしてみたのだよ」と事もなげな顔をした。



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