オアシスとクイーン
「オアシスのCDを持っていませんか?」
パスタ屋の店長になって間もない頃、バイトの甘木さんが問うて来た。ちょうど、ロックバンドのオアシスが流行り出した時期である。
「オアシス?」
「店でも最近よく流れてますよねぇ」
「知らんなぁ」
「え?」
「知らんよ」
「だって、店長、パンクだったんですよね?」
「パンクじゃない。ヘビメタだ」
「どう違うんですか?」
「ヘビメタの方が頭がいいんだよ。それよりオアシスって何だね?」
甘木さんは天井のスピーカーを指して、これですと言った。ちょうどそのオアシスが有線で流れていたのである。
「あぁ、これか。持ってるかも知れない」
「かも知れない?」
「何、俺ぐらいになると、CDは店で目に付いたのをフィーリングで買うんだよ。これもその中にあったような気がする」
これは嘘だった。そういう買い方をしていたのは事実だが、オアシスは持っていない。しかしここで持っていないと云うのは、何だか負けたみたいでつまらない。
「じゃぁ、あったら貸してくださいよ」
「ん、あぁ、いいだろう」
帰りにすみやへ寄って、オアシスのアルバムを買った。聴いてみると、果たしてあんまり好きな感じではない。段々退屈して来て、途中からとばしとばしに聴いて終わりにした。
翌日、そのアルバムと一緒にクイーンも一枚貸してやった。
「あったよ」
「ありがとうございます。こっちは何ですか?」
「そっちの方がおすすめだ」
「オアシスだけでいいんですが……」
「そう言わずに聴いてみろ」
数日後、やっぱりオアシスの方が良かったと云って返して来た。何だか面白くない感想である。やっぱりとばしとばしに聴いたのだろう。
それからじきに、甘木さんに彼氏ができた。相手はオアシスファンらしい。それを聞くと、いよいよ面白くない気持ちが、腹の中をのたくった。
オアシスはその面白くない気持ちと一緒にずっと放っていたけれど、最近になって改めて聴いたら普通に良かった。
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