暗闘倉庫
大学生の頃は、金がなくなると日雇バイトをやった。最初は川沿いの硝子工場へ行ったけれど、遠い上に給料もあんまり良くなかった。
それで他を探し、今度は隣町の衣料倉庫に行った。伝票の束を渡されて、その商品をトラックに積む仕事である。
積み終えると、次のトラックが来るまでテレビを見たりマンガを読んだりして過ごす。この時間が結構長く、八時間のうち実働は四時間もなかったように思う。
楽で給料もいいからその後も何度か行った。一度行ったら募集の度に案内葉書が来るようになったのである。
一度、このバイトの前夜に全く眠れなかったことがある。照明を消して目を瞑っていても、一向眠気がやって来ない。明日はバイトなのだから寝なければまずいのだけれど、そう思うほどいよいよ眠れない。結局一睡もできないまま朝になった。今考えると、バイトが随分久し振りだったから、別段楽しみでもないのに遠足前夜みたいに気が高ぶったのだろう。
仕方がないのでそのまま出勤したら、案の定つらかった。トラック待ちの間はほとんどずっと机に突っ伏して寝ていたように思う。
「ジブン、きつそうやな」と社員のおじさんがにやにやしながら声をかけて来た。「昨夜寝てないんです」と言ったら、おじさんは笑うのを止して、「大学生も大変やなぁ」と感心した。
別段大変でもないが「そうなんですよ」と言って、そのままにしておいた。
最後のトラック分で渡された伝票の所番地を辿っていると、段々大きな荷物エリアに入って行った。嫌な予感がしながら見つけた商品は、果たして自分の背丈よりも大きな、敷布団の包みである。
床にあるのを持ち上げて台車に乗せるのは大変だから、隣に積んであるのを上から落とすつもりで台車を移動させた。そうして「えいっ」と引っ張ってやったが、大きくて重いから狙った通りにストンとは落とせず、斜めにズルズル落ちながら、台車を他所へ押しやった。
「しまった!」と思ったが、もう間に合わない。巨大包みは結局床へと落ちた。
「まじかこいつ……」
こうなってはしようがない。落ちた分は知らないことにして、もう一度別のを上から落とした。今度は事前に台車を固定しておいたから上手くいった。
その日は残業を断って、「お疲れ様でした」と現場を出たら、不思議にすっきり目が冴えた。それでコンビニに寄って缶ビールを買い、飲みながらバスで帰った。
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