花火と呪詛
オープニングテーマ
仕事帰り、花火が上がっていた。どこかで祭りをやっているらしい。イヤホンでノラ・ジョーンズを聴きながら眺めていると、何だかしんみりした。ひとしきりしんみりしてから、ノラ・ジョーンズがBGMなら大概何でもしんみりすると気が付いた。
花火にはあんまりいい思い出がない。
横浜でパスタ屋に勤めていた頃、ディナータイムのバイトがやたら休みたがる日があった。
休ませてください、僕もです、私もです、と云って来るのを、全部認めたら店が回らない。全体、こんなに休みたがるのは尋常ではない。その日に一体何があるかと調べてみたら、横浜港の花火大会なのである。休み希望のメンバーは、どうやら意中の男子もしくは女子と花火を眺めに行くつもりらしい。
自分は土日も盆も正月もずっと働いているのに、何が花火大会か、ふざけやがって、殺す、と随分腹が立って来た。
それで、「この日に休むやつは便所の刑に処す」と言ってやったが、みんな便所の刑を知らないものだから平気で休みを申し出る。こちらも便所の刑の恐ろしさを示してやろうにも、あれは一人で実行できないので、目を怒らせながら諦めた。
結局、各時間帯から時間の融通が利く者を集めて回した。いかにもなメンバーが勢揃いして、集まってくれた者には悪いけれど、何だか物悲しいような心持ちがした。
当日、花火が終わるまでは暇だったから、店の裏からみんなで花火を見た。その間もやっぱりどんよりしていた。花火が終わると急に忙しくなって、ますますどんよりした。
市内の別店舗に異動してからも、やっぱり花火の日にはバイトが休みたがる。果たして便所の刑は効かないから、目を怒らせながら、「云っておくが、その日は大雨が降るぜ」と出鱈目を言って送り出したら、花火の途中で本当に大雨が降り出した。この分では花火も中止だろう。自分はにやにや笑いながら店長室で喫煙した。
エンディングテーマ
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