日本と呼ばれる私の独り言
「日本を守る」のその先、列島の独り言
序文
「日本を守る」しかしその声が守ろうとしている「日本」とは、何を指している?
遠い昔、人間は私に名前を付けた。
名前は幾つもあったし何度も変わった。
無数にあった私の名を今の人間が知る術は無い。
aiでさえ検索出来ない、文字も無いのだから記録は無い。
しかし名前など私にとって、どうでも良い物だ。
今は「日本」とか「JAPAN」と呼ばれたりしているのは知っている。
名前は人間の都合で勝手に付けた物に過ぎないし、人間にしか通用しないではないか。
それにしても私に暮らす人々は随分と入れ変わり、混ざり合い、そして増えた。
初めに現れた人々は、私の恵みに感謝し、畏れ、この恵みを壊さないと誓った。
しばらくして、別の人々が海を越えてやって来た。
彼等は木を倒し、川の流れを変え、畑を作った。それはやがて大きな集落になった。
私に感謝する人間は殆ど見当たらなくなった。
初めにやって来た人々の子孫でさえ、私を「先祖の物」だと考えるようになった。
後からやって来た人々との争いは度々起こった。
やがて後からやって来た人々は圧倒的な勢力となり、古くからの人々を覆い尽くした。
「神が土地を与えた」
「私の祖先がこの土地と人々を作ったのだ」
……そう語る者まで現れた。
ちょっと待て!
お前等が生まれるより遥か昔から、私はずっとここに在る。
人間同士の争いは激しくなり、私の存在など、眼中から消えてしまった様だった。
もはや彼等にとって私は「資源」でしか無かったのだ。
私を所有しようとする争いは何度も起きたが、時が過ぎれば、人間達は何事も無かったかのように同化し「日本人」と名乗る様になった。
かくして私は彼等の所有物になった。
山は削られ海は埋められ、世界中から見た事もない物が集められ、そこいら中を覆い尽くした。
私の美しい姿はツギハギだらけになり大きく変わった。
近頃は再び、遠い所から別の人間がやって来るようになったらしい。
私の一部を「金」で買った者もあるという。
私に暮らす誰かが、私を売り渡したのだろう。
なぜ人間に、私を売買する権利があると言うのだろう。
最近は、月の土地を売り買いする人間まで居るという。
一体、何の根拠、権利があって、手の届かない月さえも所有できるというのだろう。
「日本」は奴等が私を所有する為の記号だった。
「日本の文化を守る」は人間の快適さを守る為だけの記号、標語に過ぎないのだ。
私にとって、人々が、古くから居たかどうか、伝統文化など、どうでも良いことなのだ。それは日本という名前同様、人間にしか通用しない記 記号に過ぎないのだから。
どこからやって来たのかも、大した問題ではない。誰であれ、人間は私よりずっと後からやって来たのだから。
私を人間の所有物では無いことを理解し、自然のままに振る舞うことを望み、感謝していた遠い昔の人間達を、懐かしく愛おしく思い出す。
あとがき
チーフシアトルの話が本当なのか?私には分からない。
土地、地球が人間の所有物であると信じられて久しいが、人間の方が土地、地球に属していると感じている人々も少なからず居と信じたい。
