「なぜ効くのか」が5年間説明できなかったんだけど最近、やっとわかってきた話
「今井さんのプログラム、なぜ子どもたちに効く(届く)んですか?」
この質問に、私は5年間明確に
答えられなかった。
子どもは、教えられたことより、
自分で見つけたことを忘れない。
これは体感として知っていた。
理屈ではなく、現場で繰り返し目撃してきた事実として。
ただ—それを「なぜ」と問われると、
「主体性が育つんですよ」という、
どこかで聞いたような、体のいい言葉しか出てこなかった。
感覚はある。確信もある。
でも、言語がない。
でも最近、やっとわかった。
というより、AI(最近はClaude)と
対話をし続け、
必要な文献を読み、
これまでの活動のどの部分と
接続しているのかを考えて考えて。
「現場が先に知っていた—子ども×地域の設計思想」と題して、全5回で書いていこうと思います。
今日はその第1回。
理想論が理論と結びついた時
2021年の夏、麻生区で子どもたちと
地域の活動を始めたとき、
私には理論なんてなかった。
あったのは、当時小学5年生だった娘の一言だけ。
「学校のストロー、使わなくてもいい人は使わなくてもいい、そんな社会を作りたい。」
この言葉から始まって、気がつけば
小中学生23人が集まり、自分たちのまちを歩き、企業やお店、人に話を聞き、
「ここにこんなすごい人がいた」
「この場所にはこんな仕組みがあった」と発見を地図に落としていく活動になっていた。
私がやったことといえば、子どもたちが動ける「場」を用意しただけ。
何を見つけようとも、
何を学ぼうとも言っていない。
それなのに子どもたちは
勝手に動き出した。
大人が用意した「正解」を当てにいくのではなく、自分の足で歩いて、
自分の目で見つけて、
自分の言葉でまとめる。
そのプロセスの中で、子どもたちの目の色が変わる瞬間を、私は何度も見てきた。
なぜこれが「効く」のか。
正直、ずっとうまく説明できなかった。
「子どもがやる気になるんですよ」
「主体性が育っていってて」
……と言ってはみるものの、
「それ、うちの学校でもできますか?」
「なぜ年間10回に満たない活動で、
子どもたちの変化がここまですごいのでしょう」
そう聞かれたとき、感覚以上のものを返せないもどかしさがあった。
最近、ある本が置いてあって、タイトルが目に入ってきたので読んでみた。
ポール・タフという教育ジャーナリストが書いた
『Helping Children Succeed』
(私たちは子どもに何ができるのか)
本の核心は、こうだ。
「非認知能力(やり抜く力や好奇心)は、
"教える"ものではない。
子どもを取り巻く"環境"を整えることで、自然に育まれるものだ。」
これを読んで、ああ、と思った。
私がやってきたことは、
まさにこれだったんだと。
アカデミックとグローカル
そしてさらに調べていくと、
世界中の研究者たちが、
まったく別々の学問領域から、
驚くほど似た結論にたどり着いている
ことがわかった。
発達心理学の研究者は
「自律性・有能感・関係性の3つが満たされる環境をつくれ」と言っている。
(デシ&ライアンの自己決定理論)
生態学的発達論の大家は
「子どもは家庭・学校・地域・社会という入れ子の環境の中で育つ。
その"つなぎ目"が重要だ」
と言っている。
(ブロンフェンブレナー)
UNICEFの研究者は
「子どもの参画には8段階ある。お飾りの参加と、本物の参画はまったく違う」と言っている。
(ロジャー・ハートの参画の梯子)
アメリカの地域開発の研究者は
「地域に"何が足りないか"ではなく
"何があるか"から始めろ」と言っている
(クレッツマン&マクナイトABCD)
ノーベル経済学賞の受賞者は
「大事なのは何を"持っている"か
ではなく、何が"できる"かだ。
選択肢を手渡せ」と言っている。
(アマルティア・センのケイパビリティ・アプローチ)
教育学の研究者は
「学びはその子が暮らす"場所"に根ざすべきだ」と言っている。
(デイヴィッド・ソーベルのプレイスベースド教育)
6つの学問。
6つの分野。
6人の研究者。
全員が、同じ方向を指していた。
共通項は
「子どもを"教える対象"ではなく、
"地域を読み解く主体"として信頼する。」だってこと。
文字通りであれば
信じ、頼る、頼られる関係性。
あれ、これうち(サステナブルマップ)でやってきてんじゃん、と。
理論が先じゃない。現場が先だった。
上述の通り、私はこれらの理論を知って
活動を始めたわけではない。
ブロンフェンブレナーの名前すら、
つい最近まで知らなかった(笑)。
早口言葉で言ったら噛みそう名前。
(怒られるやつねw)
ハートの参画の梯子も、ABCDも、
ケイパビリティも。全部、あとから
「あ、これ名前ついてたんだ」と
知ったもの。
じゃあ何を頼りにやってきたのかというと、目の前の子どもたちの反応だ。
「こうやったら目の色が変わった」
「こう言ったらつまらなそうにした」
「大人が口を出さなかったら、
想像もしなかったものが出てきた」
その繰り返しの中で、身体に染み込んできた感覚。
それが、結果的に世界の研究者たちの
結論と重なっていた。
けして自慢したいわけではない。
むしろ逆。
私に理論があったら、もっと早く、
もっと多くの人に説明できていた。
「なんかいい活動ですね」で終わらず、
学校の先生にも、企画会社にも、自治体にも、
「だからこう設計すれば再現できるんです」と言えていたはずだ。
だから今、このシリーズを
書くことにした。
サステナブルマップの「設計思想」を言語化する
これから全5回で、サステナブルマップの活動の裏側にある「設計思想」を、
6つの理論と対応させながら言語化していく。
次回からの予告を簡単に。
第2回「教えない」から子どもが動く では、自己決定理論を手がかりに、
「なぜ指示しないほうが子どもが動くのか」のメカニズムを解きほぐす。
アカデミックよりも現場目線での話として。
学校の先生が「総合的な学習の時間」の設計で使える視点になると思う。
(毎年この時期になるとお問い合わせ頂くので)
第3回「まちの"あるもの"を数える」 では、ABCD(資産に基づく地域開発)と
プレイスベースド教育の観点から、
「欠損モデル(何が足りないか)」ではなく「資産モデル(何があるか)」で
地域を見る子どもたちのまなざしに
ついて書く。
第4回「お飾りの参加から、本物の参画へ」 では、
子どもたちが「意思決定を共有する」
段階に至ったプロセスを、ハートの参画の梯子に沿って振り返る。
第5回「この枠組みは、あなたのまちでも使える」 では、
ここまでの議論を統合して、サステナブルマップの枠組みが「再現可能」であること。
つまり、麻生区以外の地域、他の学校、他のイベントでも使えることを示したいと思い、一気に書き上げた。
最後に
このシリーズを、2つの立場の方に
読んでほしいと思っている。
公立小学校の先生へ。
「地域連携」「総合的な学習の時間」の中で、子どもたちに本物の体験をさせたい。
でも、校長や教育委員会に説明するための「根拠」がほしい。
このシリーズが、その材料になればと
思う。
子ども向けイベント・教育プログラムの
企画会社の方へ。
「子どもの主体性を育む」と企画書に書くけれど、
(かくいう私も書きますがw)
その裏付けとなるフレームワークがほしい。
自治体への提案に、現場感&学術よりな背景を添えたい。
このシリーズが、その土台になればと
思う。
私たちサステナブルマップは、
一緒に広げていっていただける
パートナーを常に探している。
偶然たどり着いた「世界の正解」を、
《意図的》に再現できる仲間を。
お問い合わせは下記から
お気軽にどうぞ。
今井雄也|一般社団法人サステナブルマップ 代表理事/
お問い合わせ:https://sustainablemap.org/
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