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もういいよ#22 発信者は『ひとり電通』であるべき!?三宅香帆さんとTaiTanさんに学ぶIPとコンテンツの話


私が最近聴き始めたポッドキャスト「視点倉庫」。文芸評論家の三宅香帆さんが「いま誰かに向けて語るべき視点」を毎回一つピックアップして、ゲストと共に(時にはおひとりで)語り続ける”喋りによって作り上げる「声の週刊誌」”と定義されたこの番組。今、飛ぶ鳥を落とす勢いであらゆるメディアにひっぱりだこの人気作家・三宅さんが手がけるという期待にしっかり応えるおもしろさで、聞き逃せない回が続く。三宅さんの千里眼で見定めた「いま誰かに向けて語るべき視点」が、鋭い観察力と時に庶民的な感覚を共存させながら的確に言語化されている。

三宅香帆さん



先日の回のタイトル「#6現代は『ひとり電通』が求められている?」は、聴き始める前から絶対におもしろい回だと確信して再生した。この回では、出版業界の発展を考える上で、作家、編集者、出版社それぞれによるどのようなアプローチが必要かということが語られている。


私なりに解釈すると、個人が自由にメディアを持つことができる時代になった今、かつての役割に仕事の範囲を限定する理由がなくなったため、書き手は文章を書き出版社は本を出版するだけではないアプローチで、読者を増やす努力が求められているという内容だった。企画を立ち上げて広告を出して、その企画を成功させ収入を得る、というのが電通の仕事だとすると、かつては企画を遂行するだけだった作家に、自著を売るための広告塔になることも、経済的利益を得ることを見込んだ総合プロデュースすらも求められている、ということだろう。全部やる、でありながらそのひとつひとつに一流の仕事のクオリティーが伴う、というのも『ひとり電通』とする所以かもしれない。


絶対おもしろいことになるとわかっていた三宅香帆さんとTaiTanさんによるトークイベント


先日三宅さんは、ラッパーでクリエイティブディレクターのTaiTanさんと、イベント「流通会議室」を開催した。厳密にいうとこのイベントは、TaiTanさんがパーソナリティを務めるポッドキャスト「流通空論」によるトークイベントで、三宅さんはゲストとして登壇された。

このTaiTanさんという方は、Dos Monosというヒップホップトリオ(というかバンドというかとにかくかっこいい音楽をする三人組)のメンバーでありながら、「流通空論」以前から配信を続けている自身のポッドキャスト「奇奇怪怪」をはじめ、TBSラジオでも「脳盗」というレギュラー番組を持つなど、今やラジオ・ポッドキャスト界に欠かせない人物。カルチャーに精通しビジネスのセンスにも長けている彼は、クリエイティブディレクターとしてユニークな企画を手がけるなど活動の範囲が広く、様々な業種や世代から注目を集めている。そんな彼を知ったのは遅ればせながら今年の始めで、それからはのめりこむようにして彼の話を聴くようになった。


TaiTanさん



三宅さんとTaiTanさんによるイベントが開催されると知った時、その相性の良さとこのタイミングでコラボレーションされることにワクワクした。期待を上回る濃密なやり取りが実際にそこにあったし、あらゆる現象が気持ち良いほどに的確に描写・言語化されていく様は感心と快感の連続だった。


こういうのもオシャレ


イベントのメイントークテーマは「2025年のプロデューサー論」。93・94年生まれのお二人にとって、業界はまだ上の世代の存在感が強く、そのわりにやっていることは過去のコンテンツを再生産するだけだったり、自分たちが台頭しようものなら「○○さんみたい」などと過去の誰かに例えられてあんまりうれしくなかったりと、なかなかやっかいらしい(まさにその”上の世代”の私には耳が痛い話もあり、張本人ではないのに反省してしまう場面も多々…)。既存の何かに頼らない土台からまるっとあたらしい何か、具体的には商圏を打ち出す人こそ、これからのプロデューサー足り得るのでは、というのが彼らのおおまかな見解だった。対談はこのトピックにとどまらず、終始テンポよくスムーズに展開していったのだが、その中で語られたIPとコンテンツの話がすごくおもしろかった。


IPとコンテンツ、とは


ここでいうIPとは知的財産 (Intellectual Property)のことで、人間の知的活動によって生み出されたアイデアや創作物、ブランド、技術など、財産的な価値を持つものをいう。使い慣れない言葉なので、個人的には、お金を生む「概念」と解釈した。


対するコンテンツとは、テキスト、画像、動画、音声など、さまざまな形式で表現される「具体」を指す。


正直、私にとってはこれらのワードの理解からスタートする必要があるほど不勉強な話題で、彼らの話についていくことで精一杯だった。アーカイブを二回観て、やっと全体を把握できたような気がする。でも、なんとなく普段感じていたことが体系化されていく感覚があり、ぼんやり漂っていた思考がクリアになることがうれしかった。この話によって、世の中を観察する重要な視点を確認することができた。


いったん話を戻して、『ひとり電通』。つまりは、以前なら特別な文化人枠としてありがたがれていた作家も、SNSをすることを求められるようになり、ここ数年ではYouTubeやポッドキャストまで発信活動の幅を拡げることが普通になってきたという指摘。三宅さんたちのお話によると、本来なら書く仕事だけでよかった作家も、そこまでできないと発信者として認識されない時代だという。本を書くことに集中するだけでも大変だろうに、いろいろやらなくちゃ発信者とみなされないなんて作家さんはつらいなあと思いつつ、この話は出版業界に限ったことではなく、何か表現を志すものにとって、共通の課題になっているようにも感じた。そしてそれは、このIPとコンテンツの話に通じていると思った。


IPとコンテンツ、面と点、概念と具体


お二人が意図することと私の解釈がずれているかもしれないけれど、説明してみよう。発信者におけるコンテンツを点、とする。発信する何かは点、つまりテキストや画像、動画などで、それだけでは発信は拡がりにくい。その点を多くしておくことや、それぞれの点にはどのようなストーリーや背景があるのかをより緻密に設定して、点に奥行きを持たせておくことが必要。この時、それらコンテンツは面となり、内容が充実するほど多面的な立体となる。


三宅さんやTaiTanさんがいうところの良いプロデューサーは、この多面的な立体=IPを生み出す存在であるべきで、それが創造できれば自ずとコンテンツも充実するし、その枠組みはさらに展開しうる可能性を持つ。


一連のお話によってビジネスの仕組みが捉えやすくなったし、より効果的な発信が携えるものとは何かを掴めたような気がする。IPとコンテンツ、概念と具体、面(立体)と点のお話は、意識的でないとそれらが別物で区分けされるものであるという視点すら持てないし、ついわかりやすい具体にばかり気を取られがちになる。


何か始めようとアクションを起こす時に、発信する土壌がゆたかに整えられていることが大切で、その土壌はより高い視座から眺めていないと視界に入ってこない。ビジネスであってもなくても発信を伴って社会と接点を持っていこうとする時、この視点が重要で、なおかつ概念ばかり押し出しても具体が伝わらないから、どちらにも意識を向ける。それがうまくいけば、必ず両者の間に相乗効果が生まれ、循環するだろう。


「そんなこといっても、なんとなく文章が書きたいからnote始めたんだよー。別にその発信に”ゆたかな土壌”がなくても発信したいならすればいいじゃん!」


と、頭の中の誰かが言っている気がする。まあ確かにそうだし、ひとつのコンテンツを生み出すだけでもエネルギーは必要。ましてやそれに奥行きを持たせる?というかそもそももっと大きな概念から形成しうる発信たるべき、って壮大だな!?忙しい日々に定期的にSNSを更新するだけでなかなかの労力を要するのに。

だけど、私の好きな発信を行うあの人は、考えればものすごいゆたかな土壌からその発信を行っているって感じそのもの。すばらしい企画をして、すてきな広報をして、すてきな何かを販売して、常に発信活動を怠らない。まさに『ひとり電通』。結局体力?健康?ハイヤーセルフと繋がるしか??とにかく、ひとりよがりに収まらない自己表現は持続可能で、パワフルに人に伝わる。そんな、らせんを描いて上昇し続けるようなクリエイティブな仕事にずっと憧れている。


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