あたたかな陽がふりそそぐ「湘南平」 ♣吟行登山♣(0001)
神奈川県の平塚市と大磯町の境にある高麗山公園。標高は180m程度の丘陵地帯の尾根を結んだ海にも近いお手軽なハイキングコースで最近は”湘南アルプス”と呼ばれることもあります。春には様々な花たちが山を彩ります。

<登山コース>

この日は4月初め。空に雲はすこしありますが、湘南らしく陽光たっぷりの穏やかな一日になりそうです。大磯駅の改札を出て駅前のロータリーを左手にある大磯町観光案内所でスタッフの方にお願いをしてハイキングマップをいただきました。

案内所を出て石垣のある坂を下りていくと国道1号(現東海道)と合流します。多くの自動車が行き交う現東海道を左手にを進むと、三沢橋東側という信号交差点から左に現東海道を分岐する道があります。住宅地のなかを伸びる生活道路のような道が旧東海道です。


旧東海道に入るとすぐに松並木道が始まりました。両側を松に挟まれた道の幅は江戸時代のままなのでしょうか。いまは松の外側には住宅が立ち並んでいますが、並木道の様相が濃いところだけを切り取ってみると、さながら江戸時代の街道の風景が蘇ってくるようにも感じます。


旧東海道がふたたび現東海道に合流すると左手にはこれから登る湘南平の丘陵が見えてきました。やがて高来神社(たかくじんじゃ)の石鳥居が現れ、国道1号の喧騒も聞こえてこない静かな境内には社殿、そしてその背後には高麗山(こまやま)が控えています。


社殿で一礼をしてその奥に続く登山道に入ります。男坂と女坂に分かれていますが、今回は左手の男坂に進みました。やや暗めの雑木林のなかを露岩もあるなかなかの傾斜の道を登っていきます。


石を積み上げた階段の参道が現れて登っていくと高麗山の山頂。いまは小さな祠があるだけです。しかし現在も礎石らしきものが残されおり、かつては山頂に高来神社の上社があったそうです。


この地は朝鮮半島からの渡来人が移住した土地だそうです。半島の古代王国・高句麗が滅んだ際に日本へ逃れてきた王族と高句麗の人々が集住したと伝わっています。高来神社は高麗神社(こまじんじゃ)ともされ、地名も高麗(こま)そして山名も高麗山です。
高麗山を左に巻くように細い道がついていますので、そこを進むと山頂の裏手に出ます。この先からは浅間山を通過して湘南平までの尾根道のハイキングコースとなります。

登山道はなだらかな起伏がゆったりと続いています。ところどころに様々な木の大樹も見かけることもできます。海岸線沿いの標高200mにも満たない丘陵とは思えない豊かな森の雰囲気が楽しめました。

ハイキングコースは後半に入ると一転。高木や密生していた樹木も数が減ります。そのため陽光がたくさん入り、明るい森に様相が変わっていきます。登山道も広い草地が目立つようになってきました。



桜、シャガそしてハナニラなど多くの種類が春の日差しを浴びて、そこかしこに花を咲かせています。のんびりとした散歩にも近いゆったりとした気持ちのよいハイキングです。
浅間山の一等三角点を越えてその先にある最後の登り返しの坂を上がっていくと赤いテレビ塔が視界に入ってきました。いよいよ湘南平に到着です。


湘南平はかつて地元では千畳敷と呼ばれていたそうです。たしかになだらかでとても大きな広場となっています。子供連れのファミリーが多く集い、山頂広場を子供たちが喜んで駆け回っていました。明るい陽射しも相まって気分もとても和やか。



テレビ塔の展望台に上がると360度に大きく視界が開けます。北から西にかけて丹沢の山並みが見えますがこの日はあいにく西側に雲がかかり富士山の姿は目にすることができませんでした。しかし鎌倉方面の海や横浜の方のビル群などはよく見渡せます。湘南を代表する展望地といえるのではないでしょうか。

湘南平で日向ぼっこがてら休憩した後は南へ大磯駅に向けて一気に下っていきます。閑静な住宅地を抜けて東海道本線の線路に行き当たり、左手に進むと大磯駅に戻れます。
今回は折角ですのでちょっと寄り道をしました。明治の元老たちの別荘を訪れてみたいと思います。大磯はその温暖な気候と風土のため、かつては病気を患った人たちの静養地として多くの別荘などがありました。


いまは陸奥宗光と大隈重信の別荘の屋敷が保存され公園として開放されています。しかも入園無料とお得。大磯駅から歩いても15分ほどの近さ。国道1号に残された旧東海道の松並木を進めば明治記念大磯庭園に到着です。

公開されている屋敷の外観は当時から改装されているものの、数寄屋造風の木造の建物。目を引くような豪華さはありませんが、随所に上品で落ち着いた和の渋さを感じる佇まいです。

中に入ると庭に面して広い縁側をとりガラス戸を多用して光を多く取り入れている開放的な明るさが印象的です。風光明媚な湘南の気候ならではといったところでしょうか。

台所や風呂場などは機能的な西洋を取り入れていますが、日常を過ごすであろう居間などは畳が敷かれた書院造の風情。過度な装飾などは排した質素さが特徴的です。
明治の元老たちも生まれと育ちは江戸時代ですから、やはり和風の部屋の方が寛げたのでしょうか。彼らがそんなことをしたのかは知りませんが、風呂上りにこの広い畳敷きの部屋で大の字に寝転んだら気持ちよさそう。

今回の山行はここまで。明治記念大磯庭園からふたたび歩いて大磯駅まで戻ります。湘南平は穏やかな気候に恵まれた海辺にあって、気軽に自然と親しめて海の眺望も楽しめるファミリー・ハイキングコースという印象です。好天の春の日差しのもとノンビリとした丘歩きを満喫できました。

〆の一句
湘南の 陽ざしうららか 花ざかり
(令和七年 卯月 武蔵野愚人)

<湘南平ハイキングの概要>
[行程表]
※標準的タイムによる目安(休憩含まず)
大磯駅→ 高来神社(35分)→ 高麗山(30分)→ 湘南平(50分)→ 大磯駅(40分)
※大磯駅から明治記念大磯庭園までは徒歩15分程度。
コースタイム/ 2時間30分程度
標高差/ 160m程度 (大磯駅:約20m、高麗山:168m、湘南平:約180m)
[アクセス]
往路・帰路ともにJR東海道本線「大磯駅」から徒歩。
[登山道の補足]
要所に道標が設置されていますので迷うことはあまりないと思います。
高来神社から高麗山を経由して湘南平へ向かう登山道の前半は緑も濃い樹林帯ですが、後半は開けた明るい林のなかの道になります。
平塚駅と湘南平の間に路線バス(神奈川中央交通バス)が運行されていますが本数は少ないです。
今回のハイキングコースはおおむね「関東ふれあいの道」(神奈川県/⑦大磯・高麗山のみち)とも重複します。
●水場やトイレなど
水場はハイキングコース上にはありません。途中の道路には自動販売機があります。大磯駅に隣接してコンビニエンスストアがあります。
トイレは大磯駅、高来神社、湘南平にあります。
湘南平の展望台(レストハウス)には食堂、カフェと売店があります。
[難易度・危険個所]
とくに大きな難所や危険個所はほとんどありません。
[付近の山]
曽我丘陵
鎌倉アルプス
渋沢丘陵
三浦アルプス
大山
関東ふれあいの道
[そのほか]
明治記念大磯庭園 ※公式サイト
大磯町観光案内所 (大磯町)
So・Ra・Niなび(湘南平・吾妻山ガイドマップ) (平塚市)

<参考リンク>
大磯町観光情報サイト (大磯町)
大磯町観光協会 ※公式サイト
高麗山公園(湘南平) (平塚市)
関東ふれあいの道 (神奈川県)

<ご留意点>
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(6) 不定期更新です。 毎月一度を目安に更新を予定しております。
(7) カバー写真と、今回ご紹介した山とは、関係はありません。
(8) 情報は掲載日時点の内容です。
(9) 登山道等の状況については、適宜、現地の観光協会、ビジターセンターや山小屋などの各関係機関にあらかじめご確認くださいますようお願いいたします。
(10) 自治体により登山届や各種装備の義務化などの条件がありますのでご留意ください。詳細は各自治体や警察等にご確認くださいますようお願いいたします。
(11) 今般の新型感染症の影響で各種施設等の利用については制限などが行われている可能性があります。ご利用の際には詳細について事前に各種施設等へご確認などをお願いいたします。
(2025/04/28 上町嵩広)
