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大正ロマン・竹久夢二の世界~京都国立近代美術館にて~

 風薫るころ、京都国立近代美術館で開催されている川西英氏コレクション「モダン都市生活と竹久夢二」展を観にいきました。
 神戸の版画家であり美術家である川西英氏が集めた竹久夢二の個人コレクションです。川西氏ひとりのコレクションでも、幅広く、かなりの枚数でした。
 竹久夢二は1884年生まれの岡山出身で、家出同然で17歳のとき東京へ上京します。美術学校や画塾で学んだ専門画家ではなく、詩情を絵であらわそうとして独学で絵画を学んだ「詩人」画家でした。彼の才能が開花したのは、雑誌の挿絵や書籍の装丁のほか、絵ハガキや風呂敷など身の回りの品でのことでした。日常生活を彩って、人々に親しまれた夢二の絵。


竹久夢二の世界

 今年の上半期直木賞受賞作「カフェーの帰り道」(嶋津輝作、東京創元社)でも、タイ子さんという女給さんのことを竹久夢二が描くような女性と形容され、竹久夢二風の化粧で注目を集める、と書かれていました。
 面長で、憂いがあって、どことなくはかなげで、色気があって・・・。現代では小顔が美人とされていますが、「竹久夢二の描く面長で憂いを含んだ大きな瞳の女性」というのは、大正時代の美人の代名詞のような感じなのかも、と思いました。


レコードの楽譜に描かれた女性「蘭燈」

 大正期には蓄音機やレコードが高級品だったこともあり、音楽を身近に親しむために楽譜が盛んに出版されました。その中でも人気だったのが音楽評論家の妹尾幸陽氏が出版した「セノオ楽譜」です。彼と親交のあった夢二が270点以上の表紙絵をてがけます。「宵待草」「蘭燈」など夢二作詞の楽曲もあり、「セノオ楽譜」は夢二の表紙絵とともに広く愛されました。
 しなだれかかる・・・と形容されそうな、首を傾けた艶のある女性が多いなあ、と楽譜の表紙絵の展示をみました。(館内、写真撮影可でした)


セノオ楽譜「宵待草」の表紙絵

 詩人としての夢二の作品も展示してありました。

    馬
王様の馬は金の馬
子供の馬は兎馬
首に結んだ鈴の音が
ちんからかんと鳴り響く
夏の朝の森の路
ちんからかんと消えていく

ちんからかん、というオノマトペ、素敵ですね。
 書籍の装丁をはじめ、夢二は日常品を美術で彩りました。ハガキや封筒、手ぬぐい、風呂敷などなど。大正3年にはそうした商品を販売する「港屋絵草紙店」を東京の日本橋に開店します。夢二が京都へ移転したため同店は閉店となりますが、大阪「柳屋」京都「つくし屋」などが商品の販売を続けました。


絵ハガキ


手ぬぐいの柄

 川西英氏は、竹久夢二と文通するほど、夢二のファンだったそうです。彼自身の絵や版画も展示されていました。大正から昭和にかけて都市生活化が進み、人々の心に空いた隙間を埋めるのに、夢二の美人画は郷愁にも似てよかったのではないか、とボードの解説に書かれていました。
 夢二は画家というより、今でいうグラフィックデザイナーのような立ち位置で、千代紙や広告紙などの制作にもたずさわりました。
 今の文具女子が好きそうな、可愛い図柄が多く、見ているだけで和みます。川西氏をはじめ、夢二と同時期に活躍した版画家や画家の絵も展示されていました。



 観終わって外に出ると、少し肌寒く、白川沿いはすっかり葉桜でした。
 陽射しはやさしく、白川の川面は光が乱反射してきらきらと眩しかったです。東山三条の祇園饅頭さんで、妹とまめ餅と志んこを買って帰りました。

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