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タマゴサンドは腹のなか

かりふわパンに挟まれしyellowcream

タリーズコーヒーのタマゴサンドが美味しいとテレビで紹介されていて、ずっと食べてみたかった。数あるサンドイッチの中から寸分迷わず手に取ってレジ台に置いたとき、「私はこれを食べたいんだ!」と言ってしまってなかったか不安になりつつお会計をした。

卵が好きなので自分でもよく作るタマゴサンド。人様が作った(いや、プロが作った)タマゴサンドはどんなにか美味しいだろうとわくわくしながらひとくち噛じる。

「ん……」
正直に言うと、期待していたタイプの味ではなかった。私が好きなタマゴサンドは、主役の卵が映画「国宝」の田中泯さんかってくらい濃厚な忘れられないくらいのインパクトを感じさせてくれるもの。でもこのタマゴサンドはあっさりとしたとろとろな食感で、若手俳優くらいの爽やかさである。

颯爽と現れた若手俳優を映画で目撃したとき、私は秒でウィキペディアを開く。正体を知りたくて知りたくて、スクロールする指が止まらない。それと、同じことがタリーズの片隅で起きた。爽やか過ぎるタマゴサンドの正体を確かめるため、ハグハグと一心不乱に頬張る。しかしひとくちごとに、とろとろとふわふわの輪郭の無い曖昧な世界に引きずり込まれ、正体を捉える前に目の前から消えていた。

なんという不覚。気づいたときはすでに遅し。たいらげてしまったではないか!
相手が若手俳優ならば、ウィキペディアで知ったつもりになれる。なにかを「得た」気分になれるのだ。でも、このタマゴサンドときたらどうだ。手に持って口に運び充分に咀嚼したはずなのに、食べた記憶がない。なにも捉えることができず、ただ呆然ととろとろとした黄色い卵のクリームの残像を追いかける。煙を食べる神様って、こんな気分なのだろうか。

ただたしかなのは、パンをトーストしてもらったおかげでわずかに「カリッ」とした食感があったこと。それと、腹がすこしだけ膨れていた。
実感はないが、たしかにタマゴサンドは私の腹のなかにいる。まるで瞬間移動したかのように。この爽やかなタマゴサンドの正体をひとつも解明できずにいる私に、呑気な昼の日差しが当たる。

呆然としたまま自転車にまたがり帰路につく。なんとなくこのまま終わるのが嫌だったので、途中の和菓子屋でいちご大福を買った。このいちご大福の話はまた今度。自転車を走らせながら、ふと考えた。タマゴサンドが腹の中にある幸福感というものを。

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