#58 オーストラリア留学と学び⑱|中1で入学式ではなく、いきなり3泊4日のサバイバル生活が始まる理由
Year7初日で突然始まる「サバイバルキャンプ」
長男が単身留学しているオーストラリアの私立校では、学年ごとに「Outdoor Education」という、いわばサバイバルキャンプのようなプログラムが組み込まれています。
「仲良くなろうね」というオリエンテーションキャンプではなくて、かなりガチです。Year7はTerm1の初日から、いきなり3泊4日のキャンプに出ます。
Year7サバイバルキャンプは、学校では「通過儀礼」

この4日間で生徒たちは、カヌーをこいで移動し、自分の荷物を背負って歩き、テントを立て、寝る場所を自分でつくり、食べるものを自分たちで準備し、片付けも責任を持ってやります。もちろん夜はキャンプ泊。
学校ではこのキャンプを「通過儀礼」と位置づけています。
4日間を終えて学校に戻ってくると、上級生(Year8〜12)が花道をつくってパイプバンドの演奏で迎える、という儀式が行われます。「これで正真正銘、うちの学校の中等教育課程の一員になりましたね」という“仲間入り”のセレモニーです。洗礼のようなものですね。
サバイバルキャンプの目的とは?
Year7のサバイバルキャンプのキーワードは「Connect(つながる)」です。
ここでいう“つながる”は3方向あります。
自分とつながる(Self)
仲間とつながる(Others)
自然とつながる(The Natural World)
さらに、4日間を通して身につけさせたい力と定義されているものは次の5つ。
自己管理(自分のことを自分でやる)
誠実さ
レジリエンス(折れずに立ち直る力)
ポジティブな人間関係
コミュニティ意識(自分は集団の一部であるという感覚)
これを教科書ではなく、実際の生活・労力・不便さの中で経験させる。そこがこのプログラムの目的なんです。
持ち物リストから分かる“親なしで生きる練習”

このキャンプの持ち物リストはかなり細かく指定されていて、さらに「パッキングはこの順番で詰めてください」という説明まで動画つきで共有されます。
必須アイテムの例を挙げると:
50〜70Lクラスのバックパック
長袖シャツと長ズボン(虫・日差し・草むら対策)
つば広の帽子、日焼け止め、合計2リットル分の飲み水が入るボトル
夏用の寝袋、ヘッドライト(両手が空くタイプ+予備電池必須)、濡れてもいい靴とは別に普段歩く靴、速乾タオル、虫よけなど
自分用の食器(プレート・ボウル・カップ・カトラリー)と布ふきん
最終日に学校へ戻るときのための、制服一式(靴と靴下まで)
これ、学校初日の話ですから、全部日本でそろえて渡航しました。
70リットルのバックパックなんて、キャンプ用品店に行かないと買えないし、なかなか大変な作業。日本の自宅では、自分で荷物を詰める作業を練習しましたが、入りきらなくて大騒ぎになっていました。
こういったアウトドアには慣れていそうなオーストラリアの親御さんにも意外と大仕事だったようで、キャンプ開始数日前の保護者チャットは、持ち物の質問でパンク状態でした。しかも親元を離れて泊まるのが初めて、という子もいて、びっくり。
もちろん、スマホとスマートウォッチは禁止。
いきなり3泊4日、実際にやること全部

4日間は、学年全体(約150人ほど)をハウスごと20人ほどずつの小グループに分け、時間割をずらしながらそれぞれの活動をローテーションしていく形で進みます。
ざっくりいうと、毎日こういうことをします。
テントの片付けと朝ごはんづくり(スープを作ったり、シリアルなどもあった模様)
ハイキング
いかだ作り(ラフトビルド)
ロー・ロープス(低いロープコースを仲間と声をかけ合いながら進む)
ブラインドトレイル(視界を制限されてロープづたいに進む信頼ゲーム)
クライミング(木やポールを登る)
大型スイングの高所チャレンジ
アーチェリー
カヌーでの移動
夜ごはんづくり(自分たちでナチョスとコーンチップを作ったり、チキンと野菜と米麺で炒めものを作ったり)、テントの設営
振り返りの時間(誰に助けられたか、大変だったことを言葉にする)
制服のシャツをアイロンがけする作業、ネクタイをきちんとしめる練習
など、ひとりでは完遂できないアクティビティがズラリと並びます。そして、制服を正しく着るという練習も。「自分を自分で整えることまでが自己管理」と厳しく教えられます。
キャンプ安全面の配慮
かなりガチのサバイバルキャンプなので、親としてはここが一番気になるところかもしれません。
まず、このプログラムには最初から「誰が全体の責任者か」「緊急時の連絡先はどこか」「避難集合場所はどこか」が明文化されています。近隣の医療機関や、搬送先になり得る病院・警察の連絡先も一覧で提示され、万が一のときの動き方が各アクティビティごとに定義されていて、親も確認できるようになっています。
息子が参加したキャンプは、幸い一人のけが人や病人も出ず、みんな無事に帰還したようです。
まとめ:これは“生活力”のブートキャンプ

この4日間はアウトドア教育というより、「親なしでちゃんと生きる練習」だと感じました。
テントを張る、寝床を確保する、料理をする、片付ける、水分と体力を自分で管理する、仲間と助け合う。そして最終日に学校に戻ったら、きちんとした制服姿で“この学校の生徒の顔”として歩く。
この一連の流れそのものが、「あなたはもう子ども扱いではありません」というメッセージになっていると感じました。
最後に、本人の感想をそのまま。
「ものすごく疲れた。けど、テントの中でぎゅうぎゅうづめで寝る体験とか、めっちゃ楽しかった。初日で100人くらい友達できたよ。」
寮生として親なしで暮らしていくにあたって、渡航前に私がどれだけ言葉で諭しても、正直ほとんど長男の耳には入っていませんでした。だからこそ、Term1の最初にこういったキャンプが組まれていたことには、親として本当に感謝しています。
大人が与える「安心」ではなく、同年代との横のつながりと、自分でやりきったという達成感。それを4日間で一気に持って帰ってくる。だから、学校に戻ってきたときに上級生の花道を胸を張って歩けるのも当然だな、と感じました。
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