世界一の大富豪ラリー・エリソンの現在
大胆さとカリスマ性
エリソンの発言はときに極端で物議を醸すこともあります。たとえば「クラウドという言葉は胡散臭いマーケティング用語だ」と切り捨て(当時はクラウドブームに水を差す発言と受け取られました)、「マイクロソフトは当社最大のデータベース顧客だ(Windows版Oracleの売上を揶揄したもの)」などライバルを挑発するコメントもしばしば報じられました。
こうした辛辣さゆえに「傲慢」と批判されることもありますが、同時にそのカリスマ性とユーモアで多くの従業員や投資家を惹きつけてきたのも事実です。実際、彼の率直な物言いは社内では高い士気につながり、「CEOが自信満々だから自分たちも大胆な挑戦ができる」という好循環を生んでいたとの評価もあります。
日本文化への傾倒
エリソンの思想・美学を語る上で見逃せないのが、日本文化からの影響です。彼は若い頃から日本企業(富士通や日立など)とビジネスをする中で日本の組織文化や技術力に敬意を抱き、日本美術や建築にも深い興味を示してきました。
カリフォルニア・ウッドサイドの自宅には桂離宮にヒントを得た本格的な日本庭園を造り、京都・南禅寺近くの伝統的豪邸「何有荘」を購入するなど、私生活にも日本の美意識を取り入れています。所有するヨットに「Sayonara(さよなら)号」と名付けたり、ハワイ・ラナイ島で開業したウェルネスリゾートに日本語の「Sensei(先生)」の名を冠したりと、その親日ぶりは各所に表れています。
本人も「日本の美意識や精神性から多くを学び、ビジネスにも活かしてきた」と語っており、異文化に学ぶ柔軟さもエリソンの哲学の一端と言えるでしょう。
以上のように、ラリー・エリソンの発言や思想は情熱・挑戦・競争・反骨・美学といったキーワードで要約できます。彼は「逆境にこそ可能性がある」と信じ抜き、常識に囚われず自分の道を貫くことで成功を収めてきました。その姿勢や数々の名言は、現代のビジネスパーソンにも強い示唆を与え続けています。
現在の活動(投資・政治関与・慈善・ライフスタイル)
企業・投資活動
エリソンはオラクル会長兼CTOとして現在も精力的にビジネスに関与しています。特筆すべきは電気自動車メーカーTeslaへの関与で、2018年末に友人のイーロン・マスク率いるテスラ社の取締役に就任し、自身も同社株を大量取得しました。
テスラへの個人投資額は10億ドル規模とされ、その保有株は分割を経て約1億数千万株に上ったと報じられています(2022年に取締役は退任したものの株式は引き続き保持)。また近年はAI関連企業との提携にも注力しており、2023年にはオラクルが米OpenAI社(ChatGPTの開発元)などと協業してAI向け大規模クラウドインフラ提供を進める計画が報じられました。
その他、息子のデヴィッド・エリソンが率いるハリウッドの制作会社(スカイダンス・メディア)に資金提供するなど、エンターテインメント分野への間接投資も行っています。要するに、エリソンは自身の知見が及ぶテクノロジー領域を中心に少数の有望企業に大規模投資するスタイルで現在も影響力を保持しているのです。
政治への関与
シリコンバレーの名士の中では珍しく、エリソンは近年アメリカ共和党・トランプ前大統領への支持を公にしたことで話題になりました。2020年2月、彼は自身が所有するカリフォルニア州ランチョ・ミラージュの豪邸でドナルド・トランプ大統領(当時)の資金集めパーティー(Fundraiser)を主催しています。
参加費はゴルフ+記念写真が10万ドル、円卓会議付きなら25万ドルという高額なもので、大富豪によるトランプ支援の一例として大きく報じられました。この動きに対し、一部のオラクル社員は「エリソンの個人的政治姿勢は会社の多様性や倫理規範と相容れない」として抗議の署名活動を行うなど社内外から賛否を呼びました。
エリソンはそれ以前にも2016年選挙で共和党候補のマルコ・ルビオ上院議員に献金した経緯がありますが、トランプ氏への露骨な肩入れはIT業界では異例の存在です。彼自身は政治的発言を多くはしないものの、トランプ政権下ではオラクルCEOのサフラ・キャッツを政権移行チームに参加させたり(2016年)、新型コロナ禍ではトランプ大統領に抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンのデータ収集システム提供を申し出たり(2020年)、政権と歩調を合わせた行動も見られました。
この結果、2020年には米政府が中国企業ByteDanceに米国TikTok事業の売却を迫った際、エリソン率いるオラクルがその受け皿パートナーに名乗りを上げるなど、政経連携プレーとも取れる動きも起こっています。最終的にTikTok買収は実現しなかったものの、現在もオラクルはTikTokの米国ユーザーデータを自社クラウドに保存する契約を結び、米中対立の狭間で一定の役割を果たしています。
エリソンは基本的にビジネス優先で政治的主張を表に出すタイプではありませんが、自身や自社の利益に直結する場面では政治的働きかけも厭わない現実的な一面がうかがえます。
慈善活動
エリソンはこれまでのビジネス成功で得た巨額の富を、徐々に慈善事業にも向け始めています。2010年にはビル・ゲイツとバフェットが提唱する「ギビング・プレッジ(富の寄付誓約)」に参加し、自身の財産の大半を慈善のために寄付する意向を表明しました。
具体的な寄付実績としては、2005年にインサイダー取引疑惑の和解の一環で1億ドルを自身の慈善基金に寄付した例や、2001年の米同時多発テロ直後に米政府へ全国民IDシステム用ソフトを無償提供すると申し出た例(これは論争を招き実現せず)などがあります。
また医療分野への貢献も大きく、南カリフォルニア大学(USC)に対し2016年に2億ドルの巨額寄付を行い、「ローレンス・J・エリソン幹細胞治療研究所(Ellison Institute for Transformative Medicine)」を設立しました。この研究所はがんを中心とした先端医療研究を行っています。
さらにエリソンは長寿科学やバイオテクノロジーにも関心が高く、かつては老化研究を支援する「エリソン医療財団」を設立して毎年数千万ドル規模の助成を行っていたこともあります。親友であった故スティーブ・ジョブズから「お金より大切なものがある」と諭されたことを契機に、エリソンも慈善活動へ巨額資産を投じるようになったと言われます。
今なおゲイツ財団のような巨大慈善団体を自身で運営しているわけではありませんが、エリソンは社会貢献への意識を高めつつあり、今後遺産の多くを慈善目的に充てる方針と見られています。
趣味・ライフスタイル
ラリー・エリソンの現在の生活スタイルは、その莫大な富と情熱に裏打ちされた豪快かつユニークなものです。趣味のヨットレースでは、自身がメインスポンサーを務めた「Oracle Team USA」を率いて世界最高峰のアメリカズカップを二度制覇しました(2010年の第33回大会で初優勝、2013年の第34回大会では1勝8敗からの歴史的逆転で防衛成功)。
2017年の第35回大会では惜しくも敗れ防衛は逃しましたが、ヨット界への貢献として2019年に高速艇による国別対抗戦「SailGP」を新設し、現在もシリーズを主宰しています。
飛行機も大好きで、自家用ジェットの夜間離着陸を巡って地元空港を相手取り訴訟を起こすほど(深夜離着陸規制に異議を唱え勝訴)情熱を持っています。またスポーツやイベントへの出演にも顔を出し、映画『アイアンマン2』(2010年)では本人役でカメオ出演する遊び心も見せています。
現在エリソンは、コロナ禍を機に移り住んだハワイのラナイ島で多くの時間を過ごしていると言われます。2020年末にはオラクル本社をカリフォルニアからテキサス州に公式移転すると発表し、自身は「今後はずっとハワイにいる」と従業員にメールしたことが報じられました(実際、彼はパンデミック中にラナイ島からリモート勤務を続けました)。
ラナイ島では、彼が開発したウェルネスリゾート「Sensei Lanai」(フォーシーズンズと提携運営)が稼働しており、最新設備のスパやメディカルチェックを備え富裕層向け健康増進サービスを提供しています。エリソン自身も島の住民に多くの職を提供し、島のインフラ整備や持続可能エネルギー施策(太陽光発電設備や有機農場の整備など)を進めているとのことです。
このように、南国の島を丸ごと理想郷に作り変えるという壮大なプロジェクトにも情熱を注いでいるのです。
私生活では、これまで4度の結婚と離婚を経験しています(直近の結婚は作家のメラニー・クラフト氏と2003~2010年まで)。現在は正式な配偶者はいませんが、長年交際中のパートナーがいると報じられています。
子供は3番目の妻バーバラ・ブースとの間に1男1女がおり、息子のデヴィッド・エリソン氏と娘のメーガン・エリソン氏は共にハリウッドで映画プロデューサーとして成功を収めています(デヴィッド氏は前述のスカイダンス社CEO、メーガン氏は映画会社アナプルナ・ピクチャーズ創業者)。エリソンは子供たちの夢も支援しており、例えばデヴィッド氏の映画事業には父から多額の資金援助があったことが伝えられています。
総括
ラリー・エリソンは現在もオラクル帝国の舵取り役・技術戦略家として君臨しつつ、その莫大な資産を用いて多方面に影響を及ぼしています。投資家・経営者・技術者・慈善家・冒険家と様々な顔を持ちながら、いずれの領域においても「情熱」と「挑戦」を原動力に独自の道を切り拓いている点に変わりはありません。
81歳(2025年現在)という高齢になった今もなお衰えぬバイタリティで、新たなビジネスチャンスや社会貢献に意欲を見せるエリソン。その生き様は、「自分らしい夢を追求し、逆境すら味方につける」ことの大切さを示し続けています。
いいなと思ったら応援しよう!
サポートしていただきありがとうございます😊
夢のために使わさせていただきます♪