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【連載小説⑤‐1】 春に成る/星屑の珈琲

< 前回までのあらすじ >
父から紹介された涼と向き合う為、マスターの喫茶店『ベル』で会うが、もう一人の自分が涼との関係を進めるのを邪魔しているような感覚になる遥。

春に成る/波音の珈琲

※先に絵と詩をご覧いただく場合はコチラ

星屑の珈琲(1)


二度目に『ベル』の奥のテーブル席に座ったのは、親友の柚奈とだった。柚奈から久しぶりに電話があった時、涼さんに話せなかった分も『ベル』について話した。すると、ちょうど会いたいと思ってたから『ベル』で会おうと言ってくれた。

「本当にレトロで素敵だね。美味しい珈琲が出てくるお店って感じ!」

笑顔で店内を見渡していると、マスターが注文を取りにやって来た。

「あの、アイス珈琲が良いんですけど、遥からいつもマスターの『お任せ』だって聞いてて。私も『お任せ』しても良いですか?」

「もちろんですよ。酸味や苦味等、苦手なものはありますか?」

「苦いのは、あんまり得意じゃないです」

「では、珈琲よりカフェオレはいかがでしょうか?」

私達は笑顔で、カフェオレをお願いした。

「マスター、癒し系だね。通うようになったの、分かる気がする」

マスターがカウンターへ戻った後、小声で話し、少し笑いながら続ける。

「あんまり素敵だって褒めるから、年齢の許容範囲が広がったのかと思ったけど、そういうことじゃないんだって分かったわ」

そっか。異性である以上、親子程の年の差があっても、そういう可能性も考えられるんだ。マスターのことは、勝手に大好きでいるけど、どのカテゴリーかと問われたら、ただの店員と客になってしまうのかな。家族でも恋人でも友達でもない。それはそうだけど、どれでもなくて、どれにも当てはまる、マスターというカテゴリーがある感じだ。

「カフェオレ、お待たせ致しました」

柚奈の前にアイスカフェオレを、私の前にホットのカフェオレを置く。マスターがカウンターへ戻った後、柚奈が口を開く。

「遥がホットしか頼まないって知ってるなんて、結構な頻度で通ってんだね」

そう、真夏に近づくこの季節でも、ホットしか頼まない。そういえば、前にホットかアイスかと聞かれた時に、そう答えたのを覚えていてくれたんだ。さすがマスター!

「こういう、珈琲にこだわってるお店のは、まずは何も入れずに飲むべきだよね」

甘党の柚奈がそう言うので、私もいつもそうしてると笑った。昔から、こういう感覚が似ている。アイスカフェオレを飲んだ柚奈が、じっと動かなくなった。

「柚奈?」

「あ、ごめん。やっぱりカフェオレでも珈琲の味がしっかり残ってて、こだわってる感じがするね」

「もし、苦かったら、無理しないでガムシロ入れなよ?」

「ううん、違うの……、変なこと言うんだけど、前に好きだった人を思い出したの」

「前に好きだった人?」

「うん、同じ会社の上司なんだけどね。優しいんだけど、しっかり信念があってキラキラしてる人。すっごく好きで一度振られてるのに、その後もまた告白しちゃうくらい、ずっと好きだった」

そういえば、基本的に控えめだけど、昔からそういう時は積極的だったな。柚奈がもう一口アイスカフェオレを飲む。どんな人なのか知りたくて飲むと、優しいミルクの中にも珈琲をしっかり感じて、少しだけ分かった気がした。

「最後にきっぱり振られた時は、もう本当に悲しくて悲しくて、ずっと泣いてた。言葉にするのが辛くて、遥にも誰にも言えなくて、自分から誰かに話すのは、これが初めて」

「そんな事があったんだね……」

「うん……それでもね。その人のこと、好きになって良かったって思う」

キラキラしてる。親友が悲しんでいて、私も悲しい気持ちはあるのに、同時に羨ましいと強く思った。

「……やっぱりガムシロ入れるね」

ガムシロを入れて、ストローでカフェオレを混ぜて氷を騒がせた後、一口飲んだ。

「それでね、その事を偶然同期の営業に知られちゃったんだよね。それから、その同期とよく一緒に過ごすようになって、付き合おうって話になって」

「そうなんだ! おめでとう!」

「ふふ、ありがとう」

良かった、私が支えられなかった分、支えてくれたその同期に感謝した。

「それでね、付き合い出して、まだそんなに経ってないんだけど……どんどん話が進んでね……結婚、することになった」

「ええ! おめでとう!」

驚きと同時に出た祝福の言葉。じわじわと喜びが広がる。柚奈が恥ずかしそうに笑う。

※「星屑の珈琲」が途中である為、絵は次回掲載します。

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☆次の話はコチラ

※見出し画像は、nagata_tetsurou(うげ)様の画像です。素敵な画像を使わせていただき、ありがとうございました。


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