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なぜ漫才を英語に翻訳するのは難しいのか

辛い時、心を軽くしてくれる「お笑い」。

この文化を英語圏の人にも共有したい。

そう思い立ち、最近今更ながらお気に入りのパンクブーブーのネタ「怖い話」を英語に翻訳することにした。彼らの漫才の真骨頂は、最後まで聞かなければ全貌が見えない「緻密な意外性」。しかし、作業を進めるうちに、漫才と英語という言語構造の相性の悪さに直面した。


早速やってみよう。


好きなシーン①

「もう何年も前に潰れてしまいそうになった病院があるんだけど・・・」

→「潰れてしまった」やないんかい、という流れ。

でもこれ英語にすると、
There is an old hospital that almost went bankrupt many years ago.

おもろくないんだよなー。
だって先にalmostっていうオチが来ちゃうから。


好きなシーン②

「真夜中の手術室に、少女が入っていくところを幽霊が見てたとか・・・」

→少女は幽霊やないんかい、という流れ。

Late one night, a girl was entering the operating room, and a ghost was watching….

主語が二つあるから、幽霊の方を後から持ってくることで
少女は幽霊やないんかいという意外性は保てるが、
やはりテンポが良くない気がする。


好きなシーン③

「まず俺は裏口からゆっくりと呪われながら入っていったんだ・・・」

First, I entered from the back entrance, being haunted...

うん、これはいいぞ!
分詞構文の付帯状況がいい味を出している!


好きなシーン④

「それで俺もうびっっっくりしそうになって・・・」

→いや、してないんかい、の流れ。
好きなんだよなあ、ここ。

でも英語にするとちょーつまらない。

It nearly scared the hell out of me.

やっぱ「しそうになる」を後から付け足すのって無理だよなあ。

That was close…で「しそうになった」ことを表現しようとしても
「びっくりしなかった」ことを先に言わないといけないし。


好きなシーン⑤

「長ーい髪の方が似合いそうな短ーい髪の女が立ってたんだよ」

幽霊って長い髪の女の人のイメージあるから騙されるよね。

Standing there was a woman with short hair who'd look better with long hair.

やっぱりオチがさきに来ちゃうんだよな。
ただの情報になってしまう。



検証結果――漫才は「語順」の芸術だった

パンクブーブーの「意外性」が光る漫才を英語にしてみたら「言語の壁」を越えられずちょーつまらなくなった。

翻訳作業を通じて分かったのは、「英語は結論から、日本語は最後にオチがくる」という構造の致命的なズレ。

英語は結論を先に言うが日本語は最後まで聞かないとわからない。否定文か肯定文かすらも最後まで聞かないとわからない。だから面白くできる。

そのまま英語に翻訳した結果として得られたのは「情報」であって「笑い」ではなかった。英語で漫才を成立させるには、単なる翻訳ではなく、構造そのものを組み替える「文化翻訳」が必要だった。
情報が正しく伝えられるだけじゃダメだ。
絶対に漫才を外国人に笑って聞いてもらいたい。

また今度やってみよう。

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