⚪️企画作品|だから置いてきたんだ
『風来坊』比々野店で手羽先を食べながらジャスミン茶を飲んで原理主義について語り合った。
というのは嘘で、先週末、久しぶりに実家に帰ったのでその話でもしよう。
愛車は年代物のフォードで故郷に帰るならこいつとでなきゃダメだというまあ相棒みたいなもんだ。最近はあまり乗れていないのだが。
そんな訳でイグニッションが不安だったけれどエンジンは快調でグズりもせず一発で始動した。オーケー、帰るぜ相棒ってね。
おれは思わず脚をさすった。
6歳のときに折ったほうの脚だ。兄貴とその友達とで裏山を走り回ってすっ転んだんだ。あのとき嗅いだ夏草の匂いは今でも鮮明に覚えてるよ。
カーラジオから流れる安住さんの『日曜天国』を聴きなが田舎道を時速90マイルで飛ばした。安住さんマジおもしれーそれよか早く帰りてーと思った。
というのも嘘だ。
実家に帰っても特にすることはないから散歩でもすることにした。当時通っていた小学校と、それから中学校まで歩いた。不審人物だと思われない程度に校舎を眺めたりして帰ってきた。
小学生のときの良い思い出というのはあまりない。クラスで浮いていたし、担任教師にも嫌われていたから少しも楽しくなかった。早く中学生になりたかった。というか大人になりたかった。
当時の苦い思い出はいつか物語にするかもしれないし、しないかもしれない。ただ、現実の出来事は小説なんかよりはるかに不可解で、オチがなく、ドラマとクライマックスを拒否し、意味はどこにも回収されず、説明責任を負わず、閉じない。まるで私の小説じゃんか。クソったれ!
中学時代のほうがまあ多少は良き思い出があるかもしれない。私の小説に登場する「カオリ先輩」は作中では高校の先輩になっているけれど実は中学のテニス部の先輩で、テニスの腕はともかく、本当にふわふわで可愛くて、少しエッチだった。「あたしAカップなんだ」という謎の逆アピールを嬉しそうにしてきたのも中学時代の彼女だ。今どうしてるかなあ。。
散歩が終わって戻ると母が「あの大きなパソコン、持ってってよ、邪魔だから」と言った。子供の頃に使っていたPCがずっと置きっぱなしになっているのだ。
しかし持ち帰ったところでうちにだって置く場所はない。そもそも動作しないんじゃないかな。だから結局、置いてきたんだ。
(おわり)
🔵941文字
*皆さんは何を実家に置きっぱなしにしてますか?
