【かずここ🦊 第2弾⑤】「ちょっと待って」も優しさなんだよ ~いいよんに教えてあげたい、心の境界線~
第2弾 第5回
「ちょっと待って」も優しさなんだよ
~いいよんに教えてあげたい、心の境界線~
※このお話は、HSP(繊細さん)の心の中にいる12人のなかまたちを、オリジナルキャラクターとして表現した物語です。あなたの中にも、似ている子がいるかもしれません。

「いいよ」ばかり言ってしまう日
■本当は少し疲れていた
ある日の午後。
かずごんは、お気に入りのノートを書いていました。
すると、外から声が聞こえてきました。
「かずごん!」
「ちょっとお願いしてもいい?」
かずごんは顔を上げます。
「うん、いいよ。」
数分後。
また別の人がやってきました。
「悪いんだけど、これもお願い。」
「もちろん。」
「いいよ。」
さらに夕方。
「今日だけお願い!」
「うん、大丈夫。」
気づけば、一日中「いいよ」と答えていました。
家へ帰るころには、肩が重く、ため息ばかり。
「なんだか今日は疲れたなぁ……。」
その時、小さな桃色の子が、しょんぼりした顔で立っていました。
いいよんです。
「ごめんね……。」
「またぼくが出てきちゃった。」
かずごんは首を振りました。
「違うよ。」
「いいよんは悪くない。」
でも、心のどこかでは思っていました。
「本当は少し休みたかった。」
「本当は少し考える時間が欲しかった。」
「でも断れなかった。」
いいよんは、小さな紙をぎゅっと抱えながら言いました。
「だって……。」
「困っている人を見たら、助けたいんだ。」
「悲しそうな顔を見ると、放っておけないんだ。」
その声は、とても優しくて、少し震えていました。
「優しい人」でいたかった
■「断る=悪いこと」だと思っていた
その夜。
かずごんは窓から夜空を眺めていました。
「ぼくは、どうして断れないんだろう。」
すると、いいよんが隣へ座りました。
「ねぇ。」
「断ったら、嫌われるかもしれない。」
「そう思わない?」
かずごんは静かにうなずきました。
「思う。」
「冷たい人って思われるかもしれない。」
「期待を裏切るかもしれない。」
「だから『いいよ』って言っちゃう。」
いいよんは少し安心したように笑いました。
「そうなんだ。」
「ぼくだけじゃなかった。」
その時、後ろから優しい声が聞こえました。
「こんばんは。」
振り向くと、もりの先生が立っていました。
「二人とも、何を話していたのかな?」
かずごんは少し照れながら言いました。
「断れない話です。」
「ぼく、『いいよ』ばかり言ってしまうんです。」
もりの先生は静かにうなずきました。
「いいよんは、とても優しい子だからね。」
「でもね。」
「優しさには、もう一つ必要なものがあるんだよ。」

優しさにも境界線がある
■コップのお水は無限じゃない
もりの先生は、小さなコップを取り出しました。
そこへ、水をいっぱい注ぎます。
「このお水が、かずごんの心だとするね。」
「もし毎日、人へお水を分け続けたら、どうなるかな?」
かずごんは答えました。
「空っぽになります。」
「そう。」
「空っぽになったコップからは、お水をあげられないよね。」
いいよんは黙って聞いていました。
「だからね。」
「自分のコップを満たすことも、大切なんだ。」
「それは、自分勝手とは違う。」
「人を大切にするための準備なんだ。」
かずごんは、前回の「70点でも花まる」を思い出しました。
「休むことも。」
「70点でもいいことも。」
「全部つながっているんですね。」
もりの先生は嬉しそうに笑いました。
「その通り。」
「心は、一つひとつ積み重なって育っていくんだ。」
「ちょっと待って」は断る言葉じゃない
■優しさを守る魔法の一言
いいよんが、おそるおそる聞きました。
「でも……。」
「断るのは怖いよ。」
「嫌われちゃう。」
もりの先生は首を横に振りました。
「今日は、断る練習じゃないよ。」
「えっ?」
「今日は、『ちょっと待って』を覚える日なんだ。」
「ちょっと待って?」
「そう。」
「すぐに『いいよ』と言わなくてもいい。」
「まず一度、自分の心へ聞いてあげる。」
『今のぼくは大丈夫?』
『今、引き受けても笑顔でいられる?』
『今日は少し休んだ方がいいかな?』
「その時間を作る言葉が、『ちょっと待って』なんだよ。」
かずごんは、その言葉を何度も心の中で繰り返しました。
「ちょっと待って……。」
「ちょっと待って……。」
すると、不思議なことが起こりました。
今まで「断る」しか選択肢がないと思っていた心に、
もう一つ、新しい扉が開いたような気がしたのです。
いいよんも、小さく笑いました。
「それなら……。」
「ぼくにも言えそうな気がする。」
「『ちょっと待ってね。』って。」
もりの先生は優しくうなずきました。
「その一言が、かずごんにも、相手にも優しい言葉になるんだよ。」

「ちょっと待って」が言えた日
■優しさは、急がなくても伝わる
次の日の午後。
かずごんは、森の小道を歩いていました。
すると、小鳥さんが慌てた様子で駆け寄ってきました。
「かずごん!」
「お願いがあるんだけど、今すぐ手伝ってもらえる?」
その瞬間。
いいよんが、いつものように前へ飛び出しました。
「いいよ!」
そう言いかけた時でした。
かずごんは、もりの先生の言葉を思い出しました。
「今日は、『ちょっと待って』を覚える日なんだ。」
かずごんは深呼吸をひとつして、優しく微笑みました。
「ありがとう。」
「ちょっと待ってね。」
その言葉を口にした瞬間。
いいよんは驚いたように目を丸くしました。
「言えた……。」
「ぼく、言えたんだ。」
かずごんは、自分の心に問いかけました。
「今のぼくは、笑顔で手伝えるかな?」
「今日は、少し疲れているかな?」
少し考えてから答えました。
「あと30分したら行けるよ。」
「その時間なら、気持ちよくお手伝いできそう。」
小鳥さんは笑顔になりました。
「ありがとう!」
「待ってるね!」
その姿を見て、いいよんは少し涙ぐみました。
「断ったわけじゃない。」
「でも、自分も大切にできた。」
「こんな優しさもあるんだね。」
境界線は「壁」じゃない
■安心して行き来できる扉
その日の夕方。
もりの先生は、小さな木の柵の前に立っていました。
「かずごん。」
「これは何だと思う?」
「柵です。」
「そうだね。」
「でも、よく見てごらん。」
真ん中には、小さな扉がありました。
「開きます。」
「そう。」
「境界線ってね。」
「壁じゃないんだ。」
「安心して開けたり閉めたりできる扉なんだよ。」
かずごんは、その扉をそっと開けてみました。
開く時もあれば、
閉じる時もある。
でも、どちらも間違いではありません。
「人を入れる日もある。」
「今日は閉めて休む日もある。」
「その両方があっていいんだ。」
いいよんは、扉を見つめながら言いました。
「ぼく、今まで開けっぱなしだったかもしれない。」
もりの先生は優しく笑いました。
「だから疲れちゃったんだね。」
「でも今日からは、自分で開け閉めしていいんだよ。」
今日から始める小さな習慣
「すぐ返事」を卒業してみよう
もりの先生は、小さなカードを取り出しました。
そこには、こんな言葉が書かれていました。
今日の小さな習慣
🍀 頼まれたら、まず一呼吸。
🍀 「ちょっと考えてみてもいい?」と言ってみる。
🍀 「今日は予定を確認してから返事するね。」と伝えてみる。
🍀 「断る」ではなく、「今は難しい」と言ってみる。
🍀 一日に一回、自分へ問いかける。
「今日のぼくは、笑顔で引き受けられるかな?」
かずごんはカードを見ながら言いました。
「全部できなくてもいいですか?」
もりの先生は大きくうなずきました。
「もちろん。」
「一回言えたら、大成功。」
「心は、小さな成功を積み重ねることで安心していくんだ。」

おわりに
優しい人ほど、自分にも優しく
私たちは、
「いい人でいたい。」
「困っている人を助けたい。」
そんな優しさを持っています。
だからこそ、
自分の気持ちを後回しにしてしまうことがあります。
でも、本当の優しさは、
自分をなくしてまで頑張ることではありません。
自分を大切にしながら、
相手も大切にすること。
その間にあるのが、
「ちょっと待って。」
という優しい時間です。
いいよんは、
決して断れない弱い子ではありません。
人を思いやる力が、とても強い子です。
だからこそ、
少しだけ立ち止まることを覚えれば、
もっと長く、
もっと温かく、
その優しさを届けられるようになります。
帰り道。
かずごんは、いいよんと並んで歩いていました。
「ありがとう。」
「今日も、ぼくを守ろうとしてくれて。」
いいよんは照れながら笑いました。
「うん。」
「でも、これからは一人で頑張らない。」
「困ったら、『ちょっと待って』って言うね。」
かずごんも笑いました。
「ぼくも一緒。」
森には夕日が差し込み、
二人の影がゆっくり伸びていきます。
今日も、心の中の12人は、
あなたを守ろうとして働いてくれています。
だから、
もし誰かに頼まれた時は、
少しだけ立ち止まってみてください。
そして、優しくこう言ってみましょう。
「ありがとう。」
「ちょっと待ってね。」
その一言は、
相手を大切にしながら、
自分も大切にする、
とても温かい言葉なのです。

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