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いまこそ「リーグ戦」を!

コメント欄でカリフォルニア在住のライター、角谷剛さんが、アメリカの高校スポーツ事情を紹介してくださった。アメリカでは高校スポーツは「リーグ戦」が前提で、実力別にクラス分けされ、全員が試合出場し、ベンチに入れない生徒は存在しないとのこと。
日本のような「トーナメント制」「エリート主義」は、教育的な観点からも「極めて不適切」だといえる。しかし、日本人はそういう「理不尽」が大好きなのだ。

リーグ戦の始まり

そもそも、リーグ戦は「野球」から始まった。野球は、19世紀半ばアメリカ東海岸のブルーカラーから始まったが、選手たちは各地で試合をする中で、実力が拮抗したチームによる「定期戦」を行うようになり、その勝敗を争うようになった。これがリーグ(League=同盟)へと発展し、1871年のMLBの創設へとつながった。
サッカーのリーグ戦は、1888年、イギリスの「フットボールリーグ」から始まったが、創設者のウィリアム・マグレガーは、アメリカのMLBを見て着想を得たともいわれている。
ちなみに私は「世界初のリーグ戦は大相撲だ」と言っている。大相撲は1757年(宝暦7年)から今日まで「番付」が連綿と続いているが、同じレベルの力士の「総当たり」で優劣を決めている。同部屋、一門などは対戦しないが、まさにリーグ戦ではないかと思う。
世界中で行われている野球、サッカーなどの球技の多くは「リーグ戦」で行われている。参加するチームの「優劣」を決めるうえで、リーグ戦は非常に有効だからだ。また試合数も多くなり、興行的にもメリットが大きかった。

トーナメント

これに対してトーナメント(tournament)は、中世ヨーロッパの「馬上槍試合」に淵源があるという。日本でも中世末期から、大名や領主の前で武芸者たちが技量を競う「御前試合」が行われた。
「馬上槍試合」「御前試合」ともに、一種の「軍事演習」であり、勝ち抜き試合だった。
そもそも馬上槍試合も御前試合も、一戦必勝の勝負だったので敗者は死んだり、戦闘能力を失ったりすることもあった。「再戦」はあり得なかった。
日本では明治時代に「武道」が確立されたが、武士道の流れをくむ武道では「トーナメント」が基本になっていた。
日本に野球が伝わったのは1872年のことだとされる。当初は対戦相手を見つけて対抗戦をするだけだったが、1901年に始まった「早慶戦」がきっかけとなって「大学リーグ」が始まった。これは東京を中心に人気となったが、野球が全国に普及したのは1915年に始まった「全国中等学校優勝野球大会」つまり今の「高校野球」からだった。この大会は一戦必勝の「トーナメント」だった。
リーグ戦ではなくトーナメント戦にしたのは、参加校数が多かったことが大きいと思うが、それと同時に「絶対に負けられない」という悲壮感が、日本人の琴線に触れたことが大きいのではないか。

リーグ戦とトーナメント戦の違い


リーグ戦は、基本的に参加チーム総当たりだ。負けても「次の試合」がある。すべての試合でベストメンバーを組む必要はなく、控えの選手、出場経験の浅い選手を試合に出すことも可能になる。試合数が多いから、選手の消耗を考えて多くの選手を起用する必要性もある。
しかしトーナメント戦は、一戦必勝で負けたら「次はない」から、常にベストメンバーで試合に臨む必要がある。控え選手は、試合には出られない。チームの勝利のためにベンチで声援を送るしかない。
見る側からすれば「絶対に負けられない」試合の方が「面白い」のかもしれない。
日本の野球ファンは勝利のために必死の形相で戦う選手を見るのが大好きだ。その舞台が過酷な炎天下であればさらに「悲壮感」が増す。松谷創一郎さんが言うように、日本の高校野球ファンはエアコンの利いた部屋で「残酷ショー」を見るのが大好きなのかもしれない。

Liga Agresiva

「高校野球のリーグ戦を」という動きは、かなり以前からあった。
阪長友仁さんが主宰する「Liga Agresiva」は、2015年に大阪府で6校が参加して始まった。
単にリーグ戦をするだけでなく
・未来を見据えたルール設定
・スポーツマンシップの学びと実践
・指導者の指導力向上
をコンセプトにして、賛同者を集め、2026年には38都道府県181校に広がっている。


私は約10年前から取材をしているが、2023年には神奈川県のリーグ戦を主導する慶應義塾高校が夏の大会で優勝、今夏も7校のLiga参加校が甲子園に出場した。

Liga Agresiva大阪

それだけがこのリーグ戦の「成果」ではない。試合に出られなかった選手が、試合に出られるようになったし、指導者はスポーツマンシップを学んで進化した。学校の間の交流も深まった。ある意味で「高校野球の進化系」だといえよう。日本高野連は、Ligaをなかなか認めようとしなかった。
・高野連主催ではないから「大会」というな
・順位をつけるな
・賞品、記念品を与えるな
私は日本高野連の取材もしていたから、その軋轢を知っているが、最近はようやく日本高野連もLigaの意義を認めつつある。

Liga Agresiva 福岡2021年

現実的な話にするために

しかしながら高校野球をトーナメント制からリーグ戦に移行するのは、並大抵の話ではない。
そもそもリーグ戦とトーナメント戦では、試合数が全然違う。
同じ8チームでは、トーナメント戦では7試合で決着がつく。しかしリーグ戦の場合28試合と4倍になる。
全国49代表が甲子園に集結する夏の甲子園は、トーナメントなので48試合で決勝まで行くが、一戦総当たりのリーグ戦にすればなんと1176試合と24.5倍にもなる。
「甲子園大会をトーナメント戦からリーグ戦に」というのは「そのまま移行する」という意味なら全く現実的な話ではない。
つまり高校野球の「リーグ戦移行」とは、春夏の甲子園や地方大会の枠組みを見直し、全面的な改変を行うことになるのだ。
まず、3662校・3363チームを、実力別にランキングして8チーム程度の「リーグ」に細分化し、春のシーズンからリーグ戦を行う。その1位チームで「2次リーグ」さらに「3次リーグ」を行うなどして、最後はWBCのような「決勝リーグ」と「決勝戦」みたいな形にするとか。1年かけて全国大会優勝を決めていくようなイメージか?
簡単な話ではないが、膨大な「野球をしない野球部員」と「選手の酷使」を生み出してきた今のトーナメント制をやめるために、高校野球界は、本格的な議論を始めるべきだと思う。






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