揺れの記憶が教えてくれたマイホーム
今の住居に引っ越してきた春から、そろそろ14年が経過する。
結婚後、古い賃貸アパートに住んで5年以上が経過した頃に、新居を構えたくなった主人と二人で、よくマンションの見学会へ行ったものだった。
買うならば、首都圏で戸建てとなると手が出ないのも正直なところ。よく考えてみると、マンション住まいならば、設備のメンテナンスもお任せコースになるから、便利さを優先したいという本音もあったのだろう。
実家が九州ということもあり、ちょうどその頃に、義理の両親の健康面などの心配事もあったため、いつでも売却できて地元に戻りやすいマンションが便利…との考えもあった。
結婚後、しばらく専業主婦をしていた私も、マンションの購入という目標ができて節約が楽しくなっていた。本腰を入れて探し始めてすぐに、近くに新築のマンションができるということだった。慣れた場所で、交通の便も良く、ショッピングビルも近い便利な駅前だったため、すぐに買うことを決めた私達。慣れないこともあって、仮契約までいくところで、手続きに失敗してしまうという苦い経験をしたのだった。
今のように簡単に調べられるAIがある訳でもなく、書店に行っては本を何冊か買っては読み、浅い知識で挑んだ仮契約は、ちょっとした手続きのミスにより、あえなく断念となった。今思えば、この失敗があって良かったのかもしれないと思う懸念材料が、後から出てきたので良い勉強となった。
そんな失敗のおかげで慎重になり、さらに数年後に見つけたのが今の住居だった。ただ、この住まいを見つける頃に、大きな出来事が起こり、不安が倍増して、さらに慎重にならざる負えない買い物となった。
今から15年前、3月11日の震災だった。
あの時間に、PCで物件選びのサイトで調べ物をしていたような記憶があった。異様な揺れに驚き、賃貸アパートから飛び出して、隣の住人たちとあの一瞬を過ごしたことを思い出す。建物は当然のこと、側に走るJRの高架橋が、ヘビのように波打つ様子が今でも目に焼きついている。あの、重たそうな線路が、一瞬で変形してしまう大きな揺れを目の当りにしてしまうと、なんとかギリギリ耐震構造で、揺れに耐えていた賃貸アパートに感謝した。
この出来事で、購入予定のマンションの耐震度や強度に関心を寄せて、調べたりしたものだった。震災後ということもあり、完成予定日は少し延期となり、あまり詳しく見学も出来なかったことで、正直、マンションを購入するのをためらう気持ちも湧いてきた。マンションの説明会では、やはり耐震構造に関する質問もあり、詳細が聞けて一度は納得したものの、こればかりは、実際に地震が起こらなければ分からない部分もあった。今のところ、ほぼ不具合は起きていないので今思えば良い買い物だったのかもしれない。
あの震災の大きな揺れを体験してからは、小さなアパート住まいよりも、比較的安全と思われる大きな建物を、さらに意識し始めた二人だった。住まいの近くに、公園などの避難場所があり、津波を意識した場所であることは、最終的にこの住居に決めた大きな理由となった。
自分たちの住まいを、揺れや避難や津波などの災害の視点で意識し始めたのは、まさに、あの震災の後からだった。だから、この住まいに決めた理由を聞かれると、必ず東日本大震災の記憶が思い浮かぶ。変な話だけど、私的には有難い記憶となってしまっている。なぜなら、住まいのことを考えるきっかけをくれて、新しく購入するマイホームの在り方を教えてくれたのだから。
震災の翌年の春、初めてのマイホームに引っ越してきてから、もう14年目を迎えようとしている。大きな不具合もなく、安心して暮らせることは本当に幸せなことだと、かみしめながら、今日のこの日に書いてみた。
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