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知里くんと蘭名さん(一人noteでBL)

1400字くらいの短編BL小説です☔️



 僕には守護霊がついているらしい。
 霊感がある友人曰く、「後ろにおじいさんがいる」とのことだ。いわれてみれば合点がいく。なぜかというと祖父は雨男だったからだ。
 従兄弟の結婚式、還暦のお祝い、祖父自身のお葬式。祖父が出席するイベントごとでは(お葬式はちょっと違うけど)すべて雨が降っていた。

 そして最近の僕は、重大なイベントが発生したとき、ほぼ100パーセント雨が降る。

 恋人の蘭名さんは雨が嫌いだ。理由は髪がうねる、傘をさすのが面倒、肌がべたつく、などなど。

「最近雨が多いなぁ」

 溜息まじりに蘭名さんが前髪をいじる。晴れた日でも多少くるんとしているその髪は、湿気を含んで強めのパーマスタイルのようになっていた。

「季節の変わり目はよく雨が降るらしいですよ」
「へぇ。物知りだね」
「じいちゃんに教えてもらいました」
「じゃあ物知りなのはおじいさんだ」

 つけっぱなしのテレビで週間天気予報のコーナーが始まった。今夜も明日も雨だが、週明け月曜日からは晴れマークがついている。蘭名さんは「うわっ、明日も雨」とわかりやすく肩を落とした。

「ごめんなさい」
「え? なんで?」
「あ」

 僕の守護霊のせいです。なんて思っていたら声に出ていたらしい。さすがにそれは言えない。言ったら笑われるに決まっている。

「雨なのに僕の家に来てもらっているので……」
「それは別にいいけど」

 休日は交代でお互いの家に泊まっている。先週は蘭名さんの家だったから、今週は僕の家の番だ。

 いいけど、と言った蘭名さんはなにか思いついたのか、唇の端を片方だけ上げた。こういう顔をするのは、よからぬことを考えているときだ。

「やっぱりよくない。相応の報酬が必要かも」
「報酬? そんなこと言ったって……あ」

 僕はすぐ傍の冷蔵庫を見た。1Kの狭い部屋の中で、なかなかの存在感である冷蔵庫だ。
 妹が使わないからあげる、とくれた冷蔵庫。一人暮らしで自炊に挑戦したが、才能がなかったと諦めたようだ。だからって冷蔵庫を処分しようとするのはどうかと思い、僕が譲り受けたというわけだ。

「蘭名さんだから特別ですよ」

 冷凍室の引き出しを開けると、たくさんの余白の中でそれは鎮座していた。
 僕は、どうだ! と蘭名さんの目の前に掲げる。

「ルマンド、アイス?」
「そうです。ルマンドがアイスになったんですよ。しかもこれ、大学近くのドラッグストアにしか売ってない。価格は200円以上。相当やばいアイスなんです」
「じゃあ知里君が食べなよ」
「いいんです、蘭名さんが食べてください。報酬ですから」

 蘭名さんは無表情で受け取り、冷凍庫の中へアイスを戻してしまった。

「な、なんで戻すんですか!」
「俺は別にルマンド好きじゃない」
「でも、報酬って言ったらこれくらいじゃないと」

 はぁ、と大きな溜息が聞こえた。

「あのね、俺たちは恋人同士なの。しかもここは知里君の家、二人きり」

 どんどん迫ってくる蘭名さんに、僕は逃げ場をなくしてしまう。背中に当たった壁が冷たい。

「だったらどうすればいいかわかるでしょ?」 

 耳に掠れた声が届き、身体がぞくりと震えた。

「ほら、早く。そうしないと――」

 言葉の続きは、強くなった雨音にかき消された。

 じいちゃん、これは僕に恋人ができて嬉しいのか、はしたないことはするなって説教なのか、どっちなんだ。

 待てよ。どっちにしろ、じいちゃんにこんな姿を見られているとしたら……蘭名さん、ちょっと待って!



近所の薬局で見つけ、思いつきで書きました🍦
今月は小説のお題じゃないですからね。
一人でひっそり開催(?)です。
ちなみにルマンドアイスは買っていないので、どんな味かわかりません〜〜
でもおいしそう。

我々はいつまでルマンドに囚われているのか……

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