覚悟
今日も救急で患者が運ばれてきた。
34歳女性。独身。
マンションの5階から飛び降り。
血圧90/50。骨盤部骨折。意識はほぼ無い。
あ〜、今日もジャンピング(医療用語で飛び降り自死未遂を示す)だ。
今月何人目なんだ?数えたくもない。
緊急手術を終え、彼女の骨盤部には立派な金属の数々。
金属が骨の代わりとなって、身体を支えている。
もはやサイボーグに近い。
手術後の撮影は毎回自分が担当していた。
このような患者には特に気を遣う必要があるのだ。
なぜなら、治癒するまでの時間を病院で暮らし、
そのリハビリ時間が社会復帰や患者の未来に強く影響するからである。
搬送されて1ヶ月くらいが経ったころ、ようやく病態も安定してきており、彼女の目には涙がなくなっていた。
自分は声をかけるべきか迷う前に話しかけていた。
目は確実に合っているのに、返事がない。
これは、無視ではなく目で訴えかけてきていたのだ。そのメッセージは何かの覚悟の表れだと感じた。
彼女は悲しい目をしていた。過去のことはわからないが、きっと壮絶だったのだろう。
ジャンピングするのだから、相当な覚悟があっただろうに。
自死に失敗してしまった無念さと
体の痛みの両方が混ざった涙が目から溢れ落ちていた。
自分は彼女とは友達ではないから、
深く相談に乗ったりすることはできない。
彼女の過去も知れないのである。
悔しいと感じた。
きっと彼女は、もうこの世にはいない。
あの時、合った目がそう感じさせた。
あ、またサイレンの音が近づいてきた。
救命士からの無線が耳に入る。
27歳男性。オーバードーズ(薬の過剰摂取)。
自死未遂。血圧110/60。
それぞれの"覚悟"。
john
