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1日を





1日を

 1日をちゃんと終えていないと眠気がこない。身体がどれだけ疲れていても。気づいたら10日間寝ていない日もあった。夜と朝の境目、いつもより大きく聞こえる秒針の音、なんかわからないけどブーンっとなり続ける音、急に始まる耳鳴り、早朝から洗濯機を回す早起きなお隣さん、周り出す世界の音。1分1秒正確に繰り返されているみたいな、何回も同じ日を繰り返しているみたいな、そんなことを思っていると気づいたらまた夜と朝の境目がきて、お隣さんが洗濯機を回して、世界が周り出す、音がする。まるでお隣さんがこの世界を作った人で、夜な夜な世界を作っては手直しして、そんなこんなでまた世界が回り出すみたいな、錯覚に陥る。そんな事考えちゃう時は大体眠れていない日が続いてる時に限る。そんな日が続くと、枕カバーいつ洗ったっけとか、昨晩は化粧落とさずに布団に入ったんだったとか、飲みかけのペットボトル放置してたわとか、もっとあるけど、そんなことに気がついて片付ける頃には記憶が曖昧で、即ち眠りに落ちている。私のちゃんと終えるという基準はとても小さくて、なんて事ないみたいだ。

 そんな私でも毎日きちんと眠れていた時もあった。でもそれも長くなくて、というかとても短かった。一緒にいてドキドキできる彼、大好きな彼と隣り合って眠りにつける幸せはなんとも言い表し難い大切な時間だった。のに、ある日、大好きな彼といても突然眠気がこなくなった。寝息をたてる横で目を瞑ってみても、深呼吸をしてみても、もうダメ。その後どうやって眠りにつけるようになったかっていうと、実のところはっきりとは覚えていないんだけど、いや、覚えている。はっきりと。なんていうか、お別れをしたその日、その直後だった。会って話すでもなく、LINEで。別れよう、とだけ送った直後。まだ陽が高い位置にあったことはハッキリと覚えている。普通こういう話は夜のセンチメンタルな時間に思い詰めて送るものだと勝手に思っていたんだけど、燦々と降り注ぐ真っ直ぐな光を見ていたら、なんだか気持ちがとてもスッキリしちゃって、送信するまでに時間はかからなかった。目が覚めたのは次の日のam7:00。なんてことない朝の始まり。LINEにはスタンプで返信があって、それだけ。どれだけドキドキがあっても、燦々と降り注ぐ真っ直ぐな光には到底敵うことのないものだったみたい。なんてことない。

 そんな事を感じた日、着ていた服は脱いでそのまま、化粧も落とさずに飲みかけのペットボトルはリビングの机にそのままで、布団に入った。気づいたらam7:00。即ち私の中で革命が起きた。1日を終えていないのに眠りにつけたのだ。それからというもの、散々悩まされたあの夜と朝の境目が迫ってくる感じも、世界を作っていたお隣さんの音も全く感じなくなった。たとえ1日を終えてなくても、am7:00は毎日私を、私という始まりを出迎えてくれた。

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