2024年02月29日「最大のライバル」中国とトランプ
「トランプ再選」のシナリオが現実味を帯びるなかで、「最大のライバル」中国が最も恐れていること 2024/2/28(水) 19:02配信 クーリエ・ジャポン
2024年の米国大統領選挙は、バイデン対トランプとなることがほぼ確定し、どちらが当選してもおかしくない状態になっている。
正反対な二人のどちらが当選するのかを最も気にしているのは、米国最大のライバルである中国かもしれない。トランプ復帰が実現したら、中国にどのような影響があるのか。英誌「エコノミスト」が分析した。
【画像】「習近平は好きだ」と語っていたトランプ

現実味を帯びる「トランプ復帰」のシナリオ
ドナルド・トランプが米国の大統領選挙に勝利しそうだという見通しに対して、中国人がどう思っているかを知りたければ、中国のソーシャルメディアが参考になる。
中国のソーシャルメディアはこの数週間、怒りと嘲笑で沸騰しはじめている。トランプが当選すれば、中国からの輸入品に60%もの関税がかけられるかもしれないというのだ。「もっと上げてみたらいい。それで普通の米国人がどうやって生活するのか、見てみたいものだ」と、ある中国本土の人はコメントする。
トランプが戦争の可能性を高めると考える人もいる。あるネットユーザーは、トランプが当選すれば世界は「決して平和にならない」と述べる。別のネットユーザーは、「この常軌を逸した老人は悪質すぎる。彼は完敗するべきだ」と述べる。
トランプ勝利の見通しは、ネット上だけでなく、中国のエリートたちの間でも議論になっている。トランプがホワイトハウスに復帰すれば、貿易戦争がさらに激化し、莫大な経済的コストが発生すると懸念されているのだ。
しかし、中国のエリートたちはまた、トランプの同盟国に対する軽蔑(NATOに対する最近の暴言にもそれが表れている)が大きなプロパガンダ効果をもたらし、アジアにおける米国主導の安全保障システムを弱体化させ、台湾などで中国が好き勝手に振る舞えるようになるとも考えている。
中国のナショナリストのなかには、トランプの当選を祈願し、「川(チュアン)建国同志」と呼ぶ人もいる。トランプを漢字で「川普(Chuan Pu)」と表記することに由来するものだ。これは、トランプのなりふり構わない振る舞いが中国をより強くすることを示唆する言い方だ。
二種類の「脅威」
中国の指導者である習近平にとっては、トランプの大統領就任がもたらすであろうメリットとデメリットを天秤にかけるのは特に難しい。
トランプと習近平は、北京での夕食会や、フロリダにあるトランプの別荘マー・ア・ラゴでのステーキディナーなどの際に何度か面会し、そこそこ良好な関係を築いていた。「私は習主席がとても好きだ。私の任期中、彼はとても良い友人だった」とトランプは最近FOXニュースに語った。その一方で、2017年から2021年までのトランプの任期中、米国の政策は大きく転換した。トランプ政権は米国の貿易赤字を減らして雇用を守るために関税を導入した。そして中国を政治的・技術的・軍事的な敵対者と位置づけ、国内の議論の流れを変えた。
他方、ジョー・バイデンのより体系的なアプローチは、トランプの一期目とは異なる種類の脅威を中国にもたらしている。
バイデン政権はトランプの関税を維持したうえで、西側の技術が中国に流入しないようにする包括的なシステムを構築した。また、オーストラリア、インド、フィリピン、韓国といった米国の安全保障上のパートナーシップや同盟関係に投資することで、中国を抑止し封じ込めるためのアジアの安全保障システムを一新した。
バイデンは中国では「睡王」(居眠り王)として知られている。しかし、トランプより控えめではあるものの、ある意味ではトランプよりも手強い相手なのだ。
貿易戦争を激化させるトランプ
トランプは二期目に中国に対して何ができるか──習近平が大いに気にしているのはこの点だろう。一度退任してから4年も経てば、中国と対決しようとしたトランプ派のほとぼりも冷めているだろうと思うかもしれない。ところが、いまの時点でわかる証拠から考えると、トランプ派の中国への反発は強まっている。トランプ政権で有力な通商代表を務め、トランプが返り咲けばふたたび政権の要職に就く可能性のあるロバート・ライトハイザーの見解を例にとろう。2017年から2021年にかけて、彼は中国による知的財産の窃盗に関する調査をおこない、フェアプレーをしない貿易相手を罰することができるという米国の通商法301条を発動した。これにより、中国企業が直面する関税の平均は2018年には3%だったのが、両国が貿易戦争の休戦協定を結んだ2019年末には21%に上昇していた。
そのライトハイザーは、依然として中国を強く敵視しており、中国の全体主義的な本能がこれまで以上に大きな危険をもたらすと主張する。
2023年に出版された『いかなる貿易も自由ではない』(未邦訳)のなかでライトハイザーは、中国が「米国の国家とその西側自由民主政治体制にとって、独立戦争以来の最大の脅威」だと述べている。
この本にはいくつかの厳しい提案も書かれている。たとえば、安全保障上の理由だけでなく、「長期的な経済的損害」に関しても中国からの投資を審査すること、米国企業が互恵的に中国に進出できない限り、中国企業の米国での事業を禁止すること、中国資本のショートビデオアプリTikTokを禁止することなどだ。
そして決定的に重要なのは、ライトハイザーがさらなる関税の大幅引き上げを推奨していることだ。彼が掲げる目標は「均衡ある貿易」、つまり物品に関しては貿易赤字がまったくない状態である。2023年、中国は依然として2800億ドル(約42兆円)近くの対米貿易黒字を享受している。これは2018年の4190億ドル(約63兆円)という記録的な額からは減少しているものの、トランプが大統領に就任する前の3740億ドル(約56兆円)と大きくは変わらない。
これを是正するためにライトハイザーは、米国の歴史上「最悪の過ちの一つ」と彼が呼ぶ、2000年に中国に与えられた「恒久的正常貿易関係(PNTR)」のステータスを取り消すように求めている。
PNTRに指定されたおかげで、中国は米国が大部分の貿易相手国に課しているのと同じ低関税の支払いで済むようになった。PNTRから外れれば、中国は米国の関税表の「コラム2」に記載されることになる。ここにはキューバや北朝鮮、そして現在はロシアやベラルーシなど、ほんの一握りの国だけが当てはまり、より厳しい関税を課せられている。
コンサルタント企業のオックスフォード・エコノミクスによれば、先述の通商法301条の関税が残った状態で中国をPNTRから外すと、中国製品に対する関税は平均61%まで上昇する。中国製の携帯電話の関税は0%から35%に、中国製の玩具の関税は0%から70%に跳ね上がる。
既存のコラム2の関税をかける代わりに、米国は中国のためだけに新たな関税表を作成するかもしれない。その場合、一部の商品(自動車など)にはさらに厳しい関税がかけられる可能性があるが、アップルのiPhoneのような、米国の消費者にとって重要な商品への関税は緩和されるだろう。(続く)
貿易戦争をさらに激化させ、中国の経済には打撃を与えるとみられるトランプ。しかし、経済以外では、トランプ復帰で中国は「うれしい」かもしれない。後編ではその理由を分析する。
The Economist
