僕が、フロア中に響く声で怒鳴った理由
客先に常駐してQAの仕事をしていた時、僕はフロア中に響くくらいの大きな声で、QAチームのリーダーに反論した。
当時の僕は血の気が多く、感情のコントロールという点では未熟だった。
でも今思い返しても、あの時の僕は間違っていなかったと思う。
むしろ、あの出来事で僕は「プロフェッショナルとして戦うということの価値」を学んだんだ。
限界ギリギリの現場
当時の現場は本当に忙しかった。
2週間に1回のリリースサイクルで、しかも予定している機能をすべてリリースしなければならない。
当然、しわ寄せはQAのフェーズに来る。泊まり込みでテストをすることもちょこちょこあった。
でも、どんなに忙しくても、僕はQAとしてのプライドを持って取り組んでいた。
開発者との会話はすべて記録に残し、限られた時間の中でも、その時その時で最善手となるよう思考し、努力した。
QAとしての専門性を発揮することが、チーム全体の成果に繋がると信じていたからだ。
「QA漏れ」という言葉
そんなある日、障害が発生した。
障害が発生した箇所は、僕の担当した機能だった。
すぐさま内容を確認したところ、その箇所は開発者と相談し、僕では検証が出来ない領域だったため、「開発者確認」とした場所だった。
記録もちゃんと残っている。プロセスも正しく踏んでいる。
しかし、当時のPdMからは一言。
「QA漏れだから責任を持って対処してください」
その瞬間、僕の中でプチンと何かが切れた。
大げさかもしれないが、それこそ「クリリンのことかー」状態の悟空。
怒りのスイッチが入ってしまったのだ。
譲れなかった理由
障害は障害だ。もちろん全力で対応するつもりだった。
ただ、「QA漏れ」として仕事を受け取ることだけは出来なかった。
誰が悪いとかそういうことを言いたいわけではない。
でも、今までの自分の価値観や仕事を全否定されたような、なんならこの先の仕事の成果も意味が無くなるような気になったのだ。
確かにQAは最後のフェーズを担当する。
でも、このPdMの考えだと、発生する障害すべてがQAの責任となる。
そこに、違和感と怒りが込み上げた。
本気でサービスを安定して届ける思考が無いように思えたことに、怒りが止まらなかった。
フロア中に響いた声
僕はフロア内で響くくらいの大きな声で、QAチームのリーダーに反論した。
「これはQA漏れじゃなくないすか?」
「プロセス通りに開発者確認してますし、記録も残っています」
「リーダーが意見を伝えてくれないなら、僕が直で言いますけどいいすか?」
声を荒げてしまった。
感情的になってしまった。
でも、譲れなかった。
完璧な対応と、完璧な議論
ひとまず、障害は起きているので、結果的に対応は完璧にやった。
QAとしての責任は果たした。
でも、この話を有耶無耶にすることだけはどうしても出来なかった。
最終的には、PM、PdM、QAリーダーに僕の考えを納得するまで突き詰めた。
感情的になりながらも、筋道立てて論理的に説明した。
記録を示し、プロセスを説明し、責任の所在を明確にした。
結果として、関係者全員が納得する形で議論を終えることができた。
「戦う」ということの意味
あの出来事を通して、僕は「プロフェッショナルとして戦う」ということの本当の意味を学んだ。
戦うとは、感情的になることではない。声を荒げることでもない。
戦うとは、自分の信念を守り抜くことだ。
そして、戦うなら完璧に戦わなければならない。
記録を残し、プロセスを踏み、論理を組み立て、相手を論破するのではなく納得させる。
感情をエネルギーに変えて、建設的な解決を目指す。
あの時の僕は、QAとしての専門性を否定されることに対して、正しく戦ったのだと思う。
組織の中で個人ができること
一人の声が組織を変えることがある。
でも、そのためには条件がある。
記録があること。 曖昧な記憶や感情論では戦えない。事実に基づいた議論ができる準備が必要だ。
論理があること。 感情的になっても、筋道立てた説明ができなければ相手は納得しない。
建設的であること。 相手を攻撃するのではなく、組織全体の改善を目指す姿勢が重要だ。
完璧に対応すること。 自分の責任範囲は確実に果たした上で、議論に臨む。
最後は一番重要なこと。情熱があること。
これらの条件を満たせば、一人の声でも組織を動かすことができる。
あの時の僕がそれを証明してくれた。
QAという仕事の本質
QAの仕事は、単にバグを見つけることではない。
品質を保証すること。 そのためには、適切なプロセスと明確な責任分担が必要だ。
情報を正しく流すこと。 開発者、PM、PdM、それぞれが正しい情報を持って判断できるようにする。
リスクを可視化すること。 何ができて、何ができないのか。どこにリスクがあるのかを明確にする。
チーム全体の成果に貢献すること。 QAだけが頑張っても意味がない。チーム全体で品質を作り上げる。
「QA漏れ」という言葉は、これらの本質を理解していない人が使う言葉だ。品質は、チーム全体で作り上げるものなのだから。
今も変わらない信念
10年経った今でも、あの時の信念は変わらない。
価値あるものは守り抜く。 自分の専門性と信念に対しては、妥協しない。
プロセスを大切にする。 正しい手順と記録が、正しい判断を支える。
感情をエネルギーに変える。 怒りや情熱を、建設的な行動の原動力にする。
一人でも声を上げる。 組織の中で理不尽を感じたら、適切な方法で声を上げる。
これらの考え方は、QAの仕事だけでなく、PMとしての仕事でも活かされている。チームメンバーとの議論でも、顧客との交渉でも、基本的な姿勢は変わらない。
プロフェッショナルとして働くということは、時には戦うことも必要だ。でも、戦うなら正しく戦う。感情的になっても論理は失わない。そして、戦った後は必ず建設的な解決を目指す。
34歳の僕が声を荒げて守ろうとしたもの。それは単なるプライドではなく、プロフェッショナルとしての信念だった。
その信念は、44歳になった今でも、僕の仕事の核心にある。
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