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「こえ」と聞けば、もう決まってあの声しかないだろう

「こえ」といったら

喘ぎ声


一択だろう。

耳を澄ませばいたるところからきこえてくる。

あれは演技の声か、

心の底から出ている声か。

その区分けくらい

大人になったらわかる。

大人になるとは、声色の分別がつく

と云ふこと。


はじめて喘ぎ声を聞いたのは、

一人暮らしを始めたアパートの
下の階から。

あの悔しさは忘れられない。

どうして僕は、

あのこえを

間近で聞けていないのだろう。



あぁ、思い出した。


父親と旅館に泊まったとき

隣の部屋から聞こえてきた

喘ぎ声。


どうして僕は、

父親と旅館に泊まっているのだろう。

楽しいはずの家族旅行は、

悔しさに満ち溢れてしまった。



あぁ、また思い出した。

元カノと復縁したとき、

喘ぎ声が激しくなっていたこと。

そうか、君も他の男に
いろいろと調教されたのか。

すこし興奮した自分が許せなかった。

復縁はうまくいかなかった。



そうだ、思い出した。

梅雨に入る前、

隣人の家から聞こえてきた


喘ぎ声。


暑いから窓を開けていたのだろう。

僕は耳を澄まして聞いていた。


うん、あれは演技だ。


僕は、
その声を間近に聞けてもいないのに
評論家になって
優越感を味わっていた。




もうすぐクリスマスだ。

世界中で喘ぎ声が響き渡る日。


その中のひとりに

僕は、なれているだろうか。


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