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たそがれまで

【シロクマ文芸部: 夕焼けは】
※小牧幸助様主催のお題に寄せて


夕焼けは、黄金色だった。


お馴染みの、海に面した駅を出たら
一面の金色に遭遇した。

帰宅ラッシュの時刻。

私鉄とJRとの連絡通路では、
通勤や買い物帰りの人々が、
一様に足を止め、一瞬吐息を漏らし、
そして、おもむろにスマホを空に翳す。


いつもの駅の、見慣れた景色。
それがこの日は、全ての人を立ち止まらせる
絶景に変化していたのだ。


不機嫌そうな顔はない。


皆、笑顔や感動の表情で、
声も出せずに写真を撮っている。

私も思わず、数枚撮影した。



勿論、自らの想い出、記録として
残したくなる気持ちもあるが、
きっとそこには、


皆の胸の中には


この素晴らしい夕焼け空を、
分かち合いたい誰かが居るのだろう。


私も子供達に、LINEを送る。
黄金色の景色を添えて。


ふと、昔聴いて今も心に残る
さだまさしさんの素敵な一曲。

『黄昏迄(たそがれまで)』

を思い出した。


恋人を海で亡くした青年が、
金色に染まる海を、丘の上から
見つめている。

その傍らには、亡き人が愛した
子犬の成長した姿があり、
一緒に座って海鳴りを聞く。


きっと彼女亡き後、彼は子犬を
引き取ったのだろう。

同じ喪失を共有する者同士。

二人はただ、黙って丘に座り、
『海に還った』人を想う。


そんな、優しく切ない金色の世界が、
歌の中に広がっている。


この黄金の夕焼けは、
あの歌の世界とリンクして、
私の中に残る埋み火のような
今は亡き人々への思慕を掻き立てた。


金の夕焼けは、赤みを帯びぬまま、
宵の紫紺と溶け合い始める。


足を止めていた大勢の人々は、
また見知らぬ他人としてすれ違い、
それぞれの場所へと散ってゆく。


それは、一瞬の偶然。


忙しく時間に追われ、
空を見る暇もない人々。


あの黄金の夕焼けが結んだ、
ほんのひとときの、『想い』の共有。


そんな奇跡が、この世界には
ごく稀に起こるものらしい。


そして、私もまた
ありふれた日常へと帰るために
車中の人となった。


#シロクマ文芸部
#夕焼けは


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