雨の帷に閉ざされて
【シロクマ文芸部:ひとりごと】
※小牧幸助様主催のお題に寄せて
ひとりごとは、
やがて歌に替わった。
夜の豪雨に閉じ込められた、
小さな車の中は異世界。
斜め上方からの光は、
白い街灯のLED。
それが、車内全体の隅々に、
フロントガラスを流れ落ちる
雨水の描く模様を影絵で映す。
まるで自然が生み出した
プロジェクションマッピングのよう
ゆらゆらと、滝になり、
海底になり、伝説の怪物の鱗になる。
駐車場に停車しながら、
雨に閉じ込められ、
動けない私の嘆きはひとりごと。
少し雨の勢いが弱るまで、
待とうと決めて、雨を見つめた。
昔覚えた歌の一節が、
蘇ってくる。
『自分の重みに耐えきれず
落ちてゆく ガラス窓の雫』
※歌詞の引用※
『加速度』
さだまさし
子供の頃は、ただ美しい
叙情的な歌詞だと愛していたが、
年齢を経た今、口ずさんてみたら、
とても切実な哀しみを感じた。
窓に取り付いた雨の一滴。
遠い空から旅をして、
この車に辿り着いた。
初めは小さなその一滴が、
次々と手近な水滴を取り込み、
重みが増すだけスピードを上げて、
やがて流れ落ち、消えてゆく。
それは、人生の姿に似ていた。
生きるほどに抱え込む、
沢山の喜びと哀しみ。
年を取るほど、時の流れを
早く感じるようになった。
幼い頃の一日と、
今の私の一日が、
同じ二十四時間だとは思えない。
一日が、一週間が、一年が、
どんどん加速してゆく寂しさは、
誰にも等しいものなのか?
叩きつける夜の雨は、
世界と私を隔絶する厚い帷
まだ逃れる術はないから、
この方舟に抱かれてひとり、
幻想の世界へと、漕ぎ出そうか。
さて、
この帷から解き放たれた時、
私はどんな世界に
辿り着いているのだろう?
そこは、見知らぬ異世界で・・・
※※※『雨の帷に閉ざされて』了 ※※※
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