春の新潟 ~松之山・田中温泉~ Part3
襖から差し込んでくる春の光と共に、目を覚ました。
予定は特に考えていなかった。
ふと、机の上に置かれた冊子に目が留まった。宿の近くには物産館があるようだ。しかも物産館の中には、とんかつ屋もあるらしい。自然と、行き先は決まった。
女将さんに「いい宿でした」と言うと、「またぜひ来てください」と言ってもらった。ぜひまた来たい。
外に出ると、雪原に朝日が差し、光のグラデーションが広がっていた。
雪国の田舎町の風景だ。木造の家屋の軒先から、雪解け水がぽとん、ぽとんと静かに音を立てていた。

道の先に小さな橋が見えてきた。信濃川にかかる橋だ。橋の上から、雪化粧した信濃川が一望できた。川面を照らす柔らかい光が春の訪れを知らせていた。

物産館に到着した。時刻は10時半だ。目当てのとんかつ屋のオープンは11時だ。
暇つぶしに、物産館の中をぶらぶらと歩く。地元の野菜やお米が、木箱に丁寧に並べられている。国道沿いにあるので、ドライブの途中の休憩で、多くの人が立ち寄るようだ。少し迷ったが、「旅の証」と思って苗場サブレを手に取った。
そうこうしているうちに、とんかつ屋さんが営業を開始したようだ。同時に、待機していた列が店の中に入っていく。
おばちゃんに案内され、カウンター席に腰掛けた。ちらりとメニューに目をやると、とんかつ定食の文字に目が留まる。がっつり食べたいし、これに決めた。
「すいません、とんかつ定食一つで」
「あいよ」
妻有ポークというらしい。聞いたことはなかったが、匂いからして美味いに違いない。
「はい、とんかつ定食ね」

こういうのでいいんだよ。こういうので。
素朴だけど、過不足ない。理想の定食だ。
まずはカツからいく。サクサクした衣と漏れ出る肉汁が口の中に流れ込む。ソースの甘辛い味と共に、白米をかき込む。まるやかな肉の旨みと甘みすら感じるお米がマッチしている。
お口直しに、味噌汁を一口飲む。味噌汁をご飯のおかずにしたのは初めてだったかもしれない。美味い米は何にでも合うのだ。
白米が生きるラインナップで、さらりと食べ終えてしまった定食だった。休憩中のドライバーにとっては、理想的なランチだろう。
今回の旅行は春の新潟の秘境温泉を巡りました。次回はみなかみのダムを巡る旅をお届けします。
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