♯こどものあそび録②/絵の中に入る
1月。
とある幼稚園から、
「年長児と絵画の活動をしてほしい」
と依頼があった。
テーマを決めて、1人1枚、画用紙に絵の具で描く、という条件。
正直、私は、
絵はその子が描きたいときに描いて欲しいと思う。
「さあ、今から〇〇の絵を描こうね!」といった一斉活動は今までしないようにしてきた。
「もっとちゃんとやって!」「ここ空いているよ、描いてみたら?」
と大人がある種クオリティーのようなものを求めてしまう場面を幾度となく見てきたからだ。
それと、自分は幼少期から絵を描くことが大好きだったのだが、
保育園で〈運動会の思い出〉をみんなで描いたとき、難しくて手が止まってしまった恐怖が今でも呪いのように焼きついている。その時の教室の風景や、クレヨンの感触、描き直した跡さえ鮮明に覚えている。
自分のお気に入りの宝箱が、ひっくり返ってぐしゃぐしゃになって、壊れてしまった。そんなような感覚だった。
そんな苦き思い出もあり、
これから出会う子どもたちにはそんな思いをさせまい!と今まで予防線を張っていた。
が、今回はあえてやってみることにした。
これはこれで新しい発見があるかも!?なんてシンプルな興味が湧いたからだ。
これが良いのか悪いのか分からないが、「とりまやってみる」精神で。
まず、テーマは「魚」にした。
瀬戸内海に浮かぶ四国の地で、魚は子どもたちにも馴染みがあると思ったので
生の魚(イトヨリ鯛)を幼稚園に持って行った。

ジェットコースターに乗ったかのような声が部屋に湧き上がる

自由に触っていいよ、とだけ伝えてあとは子どもの姿を観察。
恐る恐る、そぉっと確かめるように触り始めた子どもたちだったが、
次第に好奇心に火がつき、
口の中はどうなってる?
このキラキラしたのはなに?
目がぐにゅぐにゅしてる!
ヒレが開く!
などたくさん発見があったようだ。
子どもたちのまんまるな目を見ると、「実の体験」がどれだけ大事か、思い知らされる。
ここから描画の時間となった。
テーマは今触ったイトヨリ鯛で、描き方は子どもたちに任せてみた。
これはとある男の子が描いた絵。

鉛筆で魚を描いたあと、思い立ったように青の絵の具をとる。
そして、周りに大きな海が現れる。
この時、彼がゆっくりと語るように呟いた言葉が 素敵で忘れられない。
「あぁ、さかなになっておよぎたいなぁ…
えのなかに はいれたらねぇ うれしいねぇ。
こういうなみ(波)が する〜んっとやってきて
きれいなばしょがいいよねぇ〜!
なつになったら うみでおよぎたいきぶん・・・」
「絵の中に入れたら」、どれだけワクワクするだろうか。
そして
すでにこの時、彼は絵の中に入っていたと思う。
それくらい気持ちよく筆を動かし、心ゆくまま泳いでいたように私には見えた。
子どもの表現はステキだ。
どれだけ私が画家のような絵を描けるようになっても、
この瑞々しい感性には勝てないだろうなぁと思う。

絵の中に入れたら、いいよね。
想像する世界でどんなことをしようか、考えただけでワクワクするよね。
そんな、子どもたちのステキな世界を守っていきたい。
