知られざる大阪のコロッケそば体験と、進化し続ける食品トレーの世界 (元教授、定年退職425日目)
まずは「コロッケそば」の話題を少しだけ
少し前に「コロッケそばはなぜ関西では一般的でないのか?」というテーマでnote(5/25) に短い記事を綴りました。また、読売テレビ系の番組『秘密のケンミンSHOW 極』の中で、大阪の 104 軒のそば店を調査したところコロッケそばを提供しているのは1軒しかなかった、という情報に驚きました。ただ、よく思い出してみると、新梅田食道街の立ち食いそばの老舗「潮屋」が、以前からコロッケそばを出していた記憶が蘇りました。そこで一昨日、実際に潮屋へ足を運び、コロッケそばを味わってきました。
写真をご覧いただければおわかりの通り、見た目はシンプルながら、関西風にしてはやや濃いめのだしの上に、カレー味のコロッケが乗っていました(下写真)。立ち食いとはいえ、価格は 400 円という驚きの安さ。食べ始めると、コロッケは熱々というわけではありませんでしたが、一口かじるとカレー味で美味しく、箸を進めるうちに、コロッケの衣や中身が徐々に出汁に溶け出します。そして、いつの間にかそば全体がほのかにカレー味へと変貌を遂げていきました。まるで二段構えのように変化していき、最後まで飽きることなく完食。なるほど、これはクセになります。

大阪の老舗潮屋が生んだ「コロッケそば」の真実
ふと気になってネットで調べてみたところ、10 年前の『産経新聞』に「関西人未知の『コロッケそば』 実は大阪がルーツ?」という記事があるのを発見しました(注1)。そこには、なんと「潮屋」が昭和 44 年の創業当初からコロッケそばをメニューに載せていた、という記録があるのです。記事内では、先代社長の発案で「カレーを使ったメニューを作ろうと思いつきました。首都圏のものとは関係なく、独自の発想です」との談話が紹介されていました。これまで「コロッケそば」といえば、昭和 50 年代に東京・箱根そばが提供を始めたのが普及のきっかけとされていたのでビックリです。どちらが元祖?とかを競うつもりはありませんが、実に面白い食文化のクロスオーバーですね。
包装文化の記憶と、食品トレーという日常の技術革新
さて、今回はもう一つの「食」に関する話題として「食品の包装」に触れます。私が幼少期を過ごした水戸の町では、朝・昼・夕と様々な食品を売りに来ました。朝は納豆(水戸名物です)、昼には焼き芋、夕方になるとラッパを吹きながら豆腐屋さんが来る──そんな光景が日常にありました。その度に、家の手伝いと称して子どもたちは買いに走りました。納豆は藁づとに入っており(カラシを外につけてもらいます)、焼き芋は新聞紙にくるまれ、豆腐は鍋を持って買いに行きました。卵は紙袋に、おにぎりは竹の皮に包まれていた時代です。
今では、どのスーパーに行っても、食材は当たり前のように発泡スチロール製のトレーに載せられ、ラップされています。利便性や衛生面の向上はもちろんですが、かつての風情が消えてしまったことに、どこか寂しさも感じます。
トレーはここまで進化した──「探検ファクトリー」の現場から
そんな食品トレーの現在を取り上げていたのが、NHK の番組『探検ファクトリー』。番組では、茨城県八千代町にある国内シェア No.1 の「エフピコ社」の製造現場を訪れ、年間 250 億枚にも及ぶ生産量と、毎年 1,500 種類以上の新製品を開発する技術力が紹介されていました(タイトル写真、下写真もどうぞ:注2)。食品トレーは、当初はスーパーマーケットという新しい流通形態に対応するための、ごくシンプルな「入れ物」としての役割でした。しかし、経済成長、ライフスタイルの多様化、そして美意識の変化に伴い、食品トレーは食品の魅力を引き立て、食卓を豊かに彩る存在へと進化しました。

<追記> 食品トレーはポリスチレン樹脂をベースとし、ガス発泡によって90〜95%が空気という軽量かつ優れた断熱・衝撃吸収性を実現しています(下写真)。使用後のトレーは、消費者によって分別回収され(約1/4)、専用工場で洗浄・粉砕・再ペレット化というプロセスを経る「資源循環システム」も確立されています。

刺身も揚げ物もOK!食品トレーの進化
トレーには、実にさまざまな工夫と進化が凝縮されていました。たとえば、寿司用トレーには「転びどめ」が付けられ、バッグで持ち運んでも寿司がズレないよう設計されていました。漏れにくい機能としては、蓋と本体の接合部分には二重ロック構造を採用し、液漏れを防ぐ精密な成形技術が導入されていました。さらに刺身用トレーには底に段差を設けることで、盛り付けた刺身が立体的に見える視覚効果があり、今では「つま」を添える必要も無くなりました。電子レンジ対応の揚げ物用トレーでは、底面の凹凸が余分な油を吸収し、揚げたてのような食感を再現できる設計がなされていました。こうした工夫は「ただの器」ではなく、食品の品質や食べ心地までも左右する存在へと進化した証です。(下写真もどうぞ)


さらに新しい時代への対応として、デリバリーやテイクアウト時の設計もなされていました。運搬時に弁当が転げ落ちる問題を解決するために、蓋と底が連結する機能です。私はまだ未体験ですが、よく運搬時の問題が多いと聞いていますので、これは助かります。現場では非常階段を使用して、リュック内での運搬試験が繰り返し行われたそうです。

そして未来へ──「スマートトレー」という発想
世界的には、脱プラスチックの流れが加速しており、生分解性プラスチックや植物由来の素材を用いた「バイオプラスチック」への転換も求められています。そして将来的には、食品トレーにセンサーや AI が組み込まれ、消費期限の管理や温度変化の可視化、さらには鮮度表示などを担う「スマートトレー」への進化も視野に入っています。食品トレーにも新しい時代が到来するかもしれません。

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注1:「産経新聞」のHP「関西の議論」記事よりhttps://www.sankei.com/article/20150819-BYX46VHYKNPZFHKO6JJPZZXSNU/
注2:NHK「探検ファクトリー」、食品トレー工場の特集より
