銭形親分、あまりにも早かったよ…
子どもの頃、毎週水曜日の夜8時には銭形平次を見ていました。
剣道の稽古に行って家に帰り、手を洗って食卓に座ったところでちょうど放映が始まる。小学生時代はそんな水曜日を送っていました。
私の母は大川橋蔵さんのファンだったんだと思います。
母は、東京日本橋浜町生まれ。
銭形平次は江戸っ子。
共通したものを感じていたんだと思います。
銭形平次はドラマの中で、疑わしき人のもとを直接訪問して聞き込みをします。相手がウソをついている(あるいはシラを切っている)時には、
「そうですけぇ」と言う(そうですかぁではない)。
手短に聞きたい事を聞いたらスパッと「邪魔したな!」と帰る。
江戸っ子ってこんな感じかなと言うモデルを見ていました。
余談ですが、大人になって仕事で下町暮らしの高齢の方とお話したのですが、3割ほど何を言っているのか分からない(ちなみに私は東京生まれでほぼ東京育ちですが、私の生活した「東京」は、下町ではなく多摩地区です)。「同じ東京なんですけど」と、ちょっとカルチャーショックを受けました。
たぶん大阪でもキツめの方言を使っている地域差はあると思います(ゲイシャガールズはほぼ何を言っているかわからなかったですし)
https://www.youtube.com/watch?v=URhBUEnAdw8
戻ります。
母が「銭形平次」を楽しみにしていたのには「十手」を使っていた事もあると思います。つまり、「斬らない」ということ。
土曜日の「暴れん坊将軍」もよく見ていましたが、あれも「上様」(松平健)は相手を斬りません。
銭形平次の使った「十手」は、刀で言えば「小刀」か「懐刀」くらいの短さ。それを巧みに使って相手を倒す。今思えばすごい技術だったんだと思います。
銭形平次は、ギネスブックにも登録されるほどの長い期間放映されました。
終了直後に、主演の大川橋蔵さんが亡くなられた時はものすごく驚きました。「この間まで出てたじゃん。あんなに動いていたじゃん。どういう事?」と。
空き家になっている実家の片づけをしていたら、大川橋蔵さんの奥さまが書かれた本が出てきました。普段、母が本を読む姿を見た事がほとんどありません。「やっぱり大川橋蔵さんは別格だったんだろうなぁ」と思い、私自身も興味があり、読みました。
こんなに泣ける話はないです。
私は普段、マスク姿で電車に乗り、電車内で本を読むのですが、本の終盤で電車内にも関わらず泣いてしまいました。
ここからは大川橋蔵さんの事は「親分」と書きます。
ふたりひとつ(大川真理子)
著者は京都の舞妓さん時代に親分と出会いました。
親分(当時はまだ銭形平次の親分ではなく映画スターへの道を歩んでいた)の性格に惹かれた著者は大ファンになり、わずかな時間を見つけては映画館へ足を運んで作品を何度も見続けたそうです。
そして2人は互いに惹かれあい、東京に居を構えて親分のお母様の支援を得て幸せな日々を送るのです。そこに至るまでの「問題」もあったのですが割愛します。
にしても、親分は東京育ち、著者は京女。都会育ちの親分はとにかく早口でせっかちですので、「馬が合うのだろうか」と思うのですが、互いに「芸」の世界で生きてきたが故の理解があったのかもしれません。親分はかなりの部分で著者にアドバイスを求めてきたんだそうです。そして2人ともよくしゃべるらしく、周りの人が「そんなに話す事があるのか」とあきれるほどだったと書かれています。
ツラい時期もあったのですがそれを乗り越えて結束したからこそ得られた強い絆を感じます。そして著者の忍耐強さも伺え、親分への全幅の信頼も感じます。それが親分にも伝わったのだと思います。親分も奥さまを信頼し切っていた事が書かれています。
子どもに対する教育にはうならされました。家族で新幹線に乗る時、親分と奥様はグリーン車に乗り、子どもたちは普通車に乗せたそうです。東京駅に着いてからも、二人はタクシーに乗り、子どもたちは電車で移動したとあります。経済観念を考えての判断だったのです。親分の考えに理解を示した奥さまにも、もはや「感動」の域。
私が親分のような事を主張したら、絶対に考えが合わずに揉めます。「一緒にグリーン車に乗ればいいじゃん。ケチ野郎」と罵られます。
親分の代表作ともいえる「銭形平次」の収録中でも、役者としてのこだわりだけでなく誰にでも心を砕く人間性が書かれています。
長寿番組が終了し、「さぁこれから次の舞台へ」という矢先に発病してしまいました。著者の迷いと動揺が手にとるように表現されています。
「しっかり休んで復帰するんだ」という親分の願いは叶いませんでした。
親分、あまりにも早すぎるって…
なんでよ。
そして著者は今、どうされているのだろう。
ご存命ならば80歳代ですが。
「◯子の部屋」とかで取り上げてくれたりしないかな…芸能の方ではないから難しいのかな。なんなら私がお話をお伺いしたいくらいです…
この時代の女性の考え方と芯の強さ、役柄とマッチしていた親分の人柄と愛らしさがよくわかるすばらしい一冊です。
もう版元から発売はされていないようで、メルカリで取り扱われているようですが、蔵書している図書館も多いようです(少なくとも私の住む地域にはありました)。
私の子どもにも読んでほしいけれども、まだ「家族持ち」ではないので今読んでもピンと来ないかもしれません。
なので、いつか子どもが「なんだこれ」と手にとってくれるように、自分の本棚に並べておこうと思います。
母がなにげなく実家にこの本を置いていたように。
(発行人が、今、部下にすべての責任を取らせようとして表に出てこない事で話題の「◯枝久」になっているのだけが…ですが)
時代劇俳優さんについて書いたもうひとつの記事です↓
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至ってごく普通のサラリーマンのつもりですが少し変わった体験もしています。